スライドドアのメリット・デメリット【前編】安全面は十分?
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
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乗降時は便利、でも気になるのは安全性
かつてはスライドドアといえども手で開け閉めするのが主流でしたが、今はスイッチひとつで動くのはもちろん、足先をかざすだけで開閉できるタイプも人気。スライドドアは、子育て世代のクルマ選びにとって欠かせないアイテムになっていますね。
狭い場所でも開閉できるため、隣のクルマにドアをぶつける心配がないですし、子供や荷物を抱えていても乗り降りが楽チン……というメリットはみなさん既によくご存じでしょう。ただスライドドアならではの注意すべきポイントは、案外知られていないかもしれません。
乗り降りの安全確保が大切
確かにスライドドアは、隣のクルマを傷つける心配が大きく減ります。でも私が一番気をつけて欲しいのは、乗り降りする時の安全なのです。
例えば路肩に一時停止して、車道側のスライドドアを開けたとしましょう。
後ろから走ってくるクルマにとって、スライドドアは視認性が悪いのです。もちろんドライバーがスライドドアの存在を直感的に判断してくれる場合もありますが、ボーッと走っていたら乗員の乗り降りまで意識しない可能性は十分にあります。そしてこれが夜や雨の日なら、さらに視認性は悪くなるでしょう。
スライドドアが便利な理由の一つは、子供でも開け閉めがラクにできるから。でもそれは逆に、子供が親の監視下にないまま、「勝手に乗り降りをする」ことでもあるのです。
便利な製品でも安全確認を怠ってはならない
そういう意味で言うと、ちょっと面倒でも普通のドア(ヒンジ式)にもメリットがあります。ドアを開けるときには後方確認が必要ですし、お子さんが小さければドアを開けられないから、必然的に親御さんが安全を確保することになります。
「そんなの、スライドドアでもやるべき」という意見は、ごもっとも。
しかし製品が便利になるほどに人は、慣れが生じて安全を怠るようになりがちです。最初は助手席のドアを開けてくれたダンナさん、未だにそうしてくれていますか? これは私も、ちょっと反省です(笑)。
お子さんの飛び出しに注意を!
つまりスライドドアの場合、気をつけて欲しいのはお子さんの飛び出しなのです。ヒンジ式では、ドアが開いても斜め前が塞がれているため飛び出しの抑止力になります。しかしスライドドアは、遮るものがありません。
スライドドアで飛び出しを防ぐには、面倒でもやっぱり大人が外に立ってドアを開けることでしょう。
電動式スライドドアの場合、リアシートのチャイルドロックをONにしていても、運転席からボタンひとつで解除してドアを自動で開けることのできる機能があります。親としては非常に使い勝手が良いのですが、お子さんが飛び出さない約束を守れるかどうか、ここを見極める必要があります。
それ以前に大切なのは、安全な場所で乗り降りすることです。駐車場などで乗り降りできないときは、私たちが子供を守る必要があります。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。