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自動車コラム「知識はなくてもクルマは走る」 自動車コラム「知識はなくてもクルマは走る」

マニュアル車の面白さや魅力を知りたい!

執筆者

山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る

マニュアル車の面白さや魅力を知りたい!

免許をマニュアル(MT)かオートマ(AT)にするか迷っています。マニュアルシフトはクラッチの操作が難しいと聞きますが、せっかくなのでマニュアルもいいかと考えています。プロからみたマニュアルシフトの面白さは、どんなところでしょうか?

(20代大学生・男性)

マニュアル車は「クルマとの対話」が面白い!

以前マニュアル車の免許は、イマドキいらない?にも質問があった「マニュアルシフト」。
今度は若い方からのご相談ですね。クルマのプロである前に、プロのクルマ好きである私としても、とても嬉しいです。

そして思います。こういう質問が増えているのは、みなさんやっぱりクルマを楽しく乗りたい!と思っているからなんじゃないでしょうか?

プロから見たマニュアルシフトの面白さ。それは前回のコラムでも少し書きましたが、ずばり「クルマとの対話」ができることです。

維持費の安さは一昔前までの話、コスト面で大きな差異はない

一昔前であればここに、維持費の安さを上げることができました。AT車に比べて構造がシンプルなMT車は、まず単純に価格が安かった。しかしATの普及によってコストが抑えられたこともあり、市場では需要の多いATが完全な主流に。そしてここ数年は、MT車そのものがラインナップされない車種も多くなってしまいました。

またかつてMT車はドライバーの運転次第でATよりも燃費を良く走らせたり、部品の寿命を長持ちさせることができました。

しかし現代のオートマチックトランスミッションはギア数を増やしたり、制御を緻密化するなどして燃費性能が良くなっています。また寿命に関しても普通に扱えば10万km以上、15万kmは持つといわれていますし、新車やメーカー認定中古車であれば、万が一の場合もメーカー保証が効きます。

対してMT車はそれよりも短いスパンでクラッチ交換をする必要があため、どちらがコスト安かは、簡単には言えなくなっています。

現在は「走り」の面でもオートマ車が主流

そして燃費だけでなく、速さ(シフトスピードやシフトレスポンス)においても、現代のATはMTよりも優れたものが多くなりました。

たとえばスポーツカーに多く使われるデュアル・クラッチ・トランスミッション(DCT)は、現在走っているギアに対して必要な次のギアをスタンバイしており、シフトアップもしくはダウンの信号が送られると、エンジン回転を考慮しながら瞬時にもうひとつのクラッチをつなぎます。

また従来型のトルコンATも、エンジンからの出力をダイレクトに伝えられる「ロックアップ機構」を用いることで、素早い変速を可能にしています。

フォーミュラ1

フォーミュラ1がそのトランスミッションをオートマチック化し、これを実践投入したのは、なんと1989年。スクーデリア・フェラーリの「Ferrari640」というマシンからです。当時はまだ操作に人が介在する部分もあったため「セミオートマ」と呼ばれていましたが、現在では完全にオートマチック化しています。そしていまやコストがかけられる最新のレーシングカーは、全てがATだと言っても過言ではないでしょう。

つまり燃費面でも維持費でも、そして速さにおいても、いまやAT車の方がトータルパフォーマンスが高いのです。

クルマの操作感ならマニュアル車!

しかしご相談者さんのように、最近マニュアルトランスミッションに興味を示す方が増えているのを、私も肌で感じています。

それはMTの方が圧倒的に、「自分でクルマを操っている」という実感が高いからでしょう。パドルシフトやマニュアルモードを備えた現代のAT車であれば、任意にギアを選択することも可能です。でもここにクラッチを断続する操作と、手動でシフトを入れる操作が加わるだけで、クルマを操る実感はとても高くなります。

ご相談者さんが「難しいのでは?」と思っているのはまさにこのことですが、クラッチ&シフトワークがうまくできるようになると、運転が楽しくなります。

マニュアル車ならではのレーシングテクニック「ヒール&トゥ」

少し本格的な話になりますが、「ヒール&トゥ」と呼ばれる運転技術があります。

これはMTが全盛だった時代のレーシングテクニックで、0.1秒でも速くクルマを走らせるために必要な操作。減速しながら同時にシフトダウンをすることで、ブレーキ終了後素早く加速体制が得られます。また減速時にエンジンブレーキも活用できます。

具体的には右足のつま先(トゥ)でブレーキを踏み、減速しながら左足ではクラッチを切る。そして右足のかかと(ヒール)でアクセルをあおり、エンジン回転を合わせてギアを下げる。そしてコーナーをクリアしたら、アクセルを踏んで加速して行く。

だから「ヒール&トゥ」。本当は「トー&ヒール」だと思いますが、この方が言いやすかったのでしょう。

私がクルマに乗り始めた頃は、これができるとひとまず一人前という感覚でした。アクセルを煽る量が足りないとシフトロックしたり、ブレーキングが不安定だとクルマの動きがギクシャクしたり。それがすべてうまく決まると、クルマは素早く減速し、きれいに加速して行く。趣味でサーキットを走ったり、その後はレースにも出るようになったので、ヒール&トゥの技術を磨くことは必須条件でした。

クルマの機構を体で理解できる

別に速く走らなくても、MTの操作はドライバーを楽しませてくれます。
そのとき自分が一番走らせたいトルクバンドを、自分の手と足と頭を使って自由に選ぶ。ヒール&トゥと同じで、シフトダウンのとき少しエンジン回転を上げてやるだけで、ギアがスッ!と気持ち良く入る。

マニュアルトランスミッションを運転していると、クルマの機構もなんとなく体で理解できるようになってきます。そして実際の機構を調べると、感覚と一致して「なるほど!」となるわけです。

ちょっとした面倒くささが最大の魅力!

むしろ最新式ATは全ての操作が素早く洗練されすぎていて、人間の感性が追いつかなくなるのかもしれません。デュアル・クラッチ・トランスミッションが登場したとき私は、その機構に驚きました。そして、今まで自分がやってきた技術を瞬時でこなしてしまう様子に驚いてワクワクしたものですが、「ただのできのよいATみたいでつまらない」という声も沢山聴きました。速さと効率を突き詰めすぎて、適度な刺激や愉しさがなくなってしまったんでしょう、人間って難しいですよね(笑)。

つまり時刻合わせが必要だったり、必要ならばネジも巻かなくてはいけない機械式時計をマニアが愛するように、マニュアルトランスミッションもちょっとした面倒くささや難しさが楽しい。アナログの良さが、その魅力なのだと思います。

そういう意味でいうと、昔のスポーツカーは圧倒的にマニュアルが主体でした。

マニュアルトランスミッションを運転できると、そうした旧いクルマたちを楽しむこともできますよ!

  • 執筆者プロフィール

    モータージャーナリスト 山田 弘樹

    山田 弘樹(やまだ こうき)

    モータージャーナリスト
    日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員
    自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。
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