ニュートラル「N」はいつ使う?【後編】よくある使い方
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
AT車の「N」ニュートラルはどんなときに使うのか?
前回はこれが、基本的に「走行中には使わないモード」で、緊急時のために使われることをご説明しました。
それでもドライバーによっては走行中に「N」を使っているケースがあります。どんなときが多いのか、考えてみましょう。
信号待ちや渋滞で使うケース
よく信号待ちでNに入れているドライバーがいます。
これはマニュアル車のような感覚で運転されているのかもしれません。
AT車はDレンジに入れている限り駆動が掛かって進もうとします。ですからNに入れて、クルマが停止した状態でブレーキを踏んでいたいのだと思います。
これは人それぞれの考え方だと思いますが、私はあまりお勧めしません。その理由は、発進のとき再びDレンジに入れると、誤操作をする恐れがあるためです。
坂道で使うケース
また燃費を稼ぐために、走行中にNへシフトするケースもあるかもしれません。
平らな道や下り坂でギヤをNにチェンジする。クルマは惰性で走るのでアクセルを踏む必要がなく、燃費がよくなると考えているようです。
確かに、ニュートラルだとエンジンがアイドリング付近(800回転くらいでしょうか)で回っているため、トップギアを選ぶよりもエンジン回転は低くなるでしょう。
しかし、エンジンブレーキ状態でも燃料噴射はカットされているため、Nに入れたからといって期待するほど燃費を良くすることはできません。
それよりも心配なのは、先ほどと同じく再びDに入れようとしたときの誤操作です。
シフトの誤作動で事故や車の故障の原因にも
現代のクルマにはロック機構があり、シフトをNへ切り替える際に、万が一リバース(R)やPに入ってもギアが噛み合わないように安全対策がほどこされています。
しかしこうなると当然加速はできないので、交通の流れを妨げ追突などの可能性が高まります。
また古いクルマの場合は、スピードが乗った状態でNからDに入れると、ショックが発生することもあります。ATを痛めてしまうことにもなるので、Nを使わない方が結果的には経済的です。
また、坂道でN状態だと当然エンジンブレーキも効かなくなります。フットブレーキだけが頼りとなってブレーキにも負担がかかります。エンジンブレーキには車体を安定させる役目もあるので、無理してNに入れる必要はないといえるでしょう。
燃費を良くしたいならトータルで考える
つまりギアをニュートラルに入れて燃費を稼ぐ方法は、安全面でもリスクがあり得策ではありません。
こうした細かい操作で燃費を稼ぐ前に、まずは基本的なアクセルの踏み方で燃費を良くしてみましょう。
次回はこれついて、もっと詳しくお話ししたいと思います。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。