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更新:(公開:2022年12月22日)

【FPが解説】就業不能保険は会社員に必要ない?家族構成別の必要性を解説

執筆者

荒木 和音
ファイナンシャルプランナー、ファイナンシャル・プランニング技能士2級 >プロフィールを見る

【FPが解説】就業不能保険は必要?病気・ケガで働けない時の公的制度と合わせて解説
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病気やけがで働けなくなったときに給付される保険のひとつに、「就業不能保険」があります。しかし、「会社員なら公的な保障があるから必要ない」という意見を目にして、加入すべきか迷っている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、就業不能保険の基本的なしくみや、働けなくなったときに利用できる公的制度を整理したうえで、会社員にとっての必要性を解説します。

就業不能保険とは?加入前に知っておきたい基本のしくみ

就業不能保険とは、病気やけがによって長期間働けない状態(就業不能状態)が続いたときに、毎月一定額の給付金を受け取れる民間の保険です。入院や手術の費用を保障する医療保険とは異なり、「働けない間の収入の減少」に備えることを目的としています。

給付金を受け取れる「就業不能状態」の条件

就業不能保険の給付金は、保険会社が定める「就業不能状態」に該当した場合に支払われます。体調が悪くて仕事を休んでいるというだけでは該当せず、おもに以下のような状態が対象です。

就業不能保険の対象になるおもな「就業不能状態」
  • 病気やけがで、医師が必要と認める治療のために、病院や診療所などに入院している
  • 病気やけがの治療のために、医師の指示に基づいて、自宅などで在宅療養をしている
  • 国が定める障害等級1級または2級に認定されている
  • 所定の障害状態に該当している など

※詳細は保険会社などにより異なります。また、オプションなど一部の保障内容により、給付要件が異なる場合もあります。

なお、一部の就業不能保険では、うつ病など精神疾患を原因として就業不能状態になった場合には、給付の対象外としているものがあります。

給付を受け取れるまでの「支払対象外期間」とは?

就業不能状態に該当した場合でも、すぐに給付金が支払われるわけではありません。就業不能保険のほとんどは、「支払対象外期間」と呼ばれる待機期間を設けています。

就業不能状態になってから60日間や180日間などの支払対象外期間を経過し、それでも就業不能状態が続いている場合に、初めて給付が開始されるしくみになっています。そのため短期間の休業では給付を受けられない可能性があります。

会社員が病気やけがで働けなくなった時に活用できる公的制度

会社員が病気やけがで働けなくなった場合に活用できるおもな公的制度として、「傷病手当金」と「障害年金」があります。

傷病手当金

傷病手当金とは、会社員や公務員など勤務先の健康保険(協会けんぽ・健康保険組合・共済組合など)に加入している人が、業務外の病気やけがで働けなくなった場合に受け取れる手当金です。

4日以上連続して仕事を休み、その間の給料が減額されたり支給されなかったりしたときに、休業4日目からおおよその給与(標準報酬月額)の3分の2相当の金額が支給されます。支給期間は通算して1年6ヶ月(※)です。
※途中で復職して傷病手当金を受け取らなかった期間はカウントされません。

ただし、自営業やフリーランスなどで国民健康保険に加入している人、主婦(夫)のように社会保険の扶養に入っている人には傷病手当金の制度がありません。

障害年金

病気やけがによって、国が定める障害等級に該当する状態になった場合には、障害年金を受け取れる可能性があります。傷病手当金が最長通算1年6ヶ月で終了するのに対し、障害年金は障害等級に該当し続ける限り支給が継続されます。

障害年金には、国民年金から支給される「障害基礎年金」(1級・2級)と、厚生年金から支給される「障害厚生年金」(1級・2級・3級)があり、会社員の場合は両方を受け取ることが可能です。

なお、2026年度(令和8年度)の障害基礎年金の額は以下のとおりです。

等級 年金額
1級 14
1,059,125円+子の加算 847,300円+子の加算

※上記は昭和31年4月2日以後生まれの方に適用される金額

※子の加算:2人目まで1人につき243,800円/年、3人目以降1人につき81,300円/年

出典:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額

会社員はこれに加えて障害厚生年金(報酬比例の年金額)が上乗せされます。

【家族構成別】会社員に就業不能保険は必要?不要?

傷病手当金は給与(標準報酬月額)の約3分の2の支給にとどまり、障害年金も等級や加入状況によって受給額が異なるため、いずれも元の給与(標準報酬月額)を満額カバーできるものではありません。

会社員の公的制度による給付金イメージ
会社員の公的制度による給付金イメージ

この不足分が家計にどの程度の影響を及ぼすかは、家族構成や貯蓄の状況しだいで大きく変わってきます。

独身・単身の会社員の場合

独身の会社員は、養う家族がいない分、毎月の必要な生活費は比較的少なく済みます。傷病手当金として給与(標準報酬月額)の約3分の2を受け取れれば、一人分の生活費はある程度まかなえるという方もいるでしょう。また、生活費の6ヶ月〜1年分程度の貯蓄があれば、就業不能保険に加入する必要性は基本的に低いといえます。

一方で、注意したいのは住宅ローンや家賃の負担が大きい場合です。収入が3分の2に減少しても固定費は変わらないため、毎月の収支が赤字に転じ、貯蓄を取り崩すペースが想定以上に速まるおそれがあります。貯蓄が十分でない方や、毎月の固定費の比率が高い方は、就業不能保険で不足分をカバーしておくと安心です。

共働き(子どもなし)の場合

配偶者にも安定した収入がある共働き世帯で、子どもがいない場合は、ご自身が働けなくなっても世帯全体の収入がゼロになるわけではありません。傷病手当金と配偶者の収入を合わせれば、就業不能保険に加入しなくても、当面の生活を維持できる可能性は比較的高いでしょう。

ただし、ご自身の収入をベースに住宅ローンを組んでいる場合や、働けない期間が長くなり、傷病手当金の支給期間を超えるケースを想定すると、まったく不要とも言い切れません。家計にどれだけ余裕があるかを確認したうえで判断しましょう。

共働き(子どもあり)の場合

子どもがいる場合は教育費や保育料など子ども関連の支出が加わります。配偶者の収入と傷病手当金を合算しても、教育費や住宅ローンを含めた家計全体をカバーするには不足が生じるケースも考えられます。

特に、子どもが進学するタイミングで働けなくなった場合、まとまった支出の発生と収入減少が同時に発生するため、家計へのダメージは大きくなります。配偶者の収入だけでどこまで生活費と教育費を賄えるか、具体的に月々のシミュレーションを行ったうえで、大きな不足が見込まれるようであれば就業不能保険での備えを検討しましょう。

片働き・配偶者が専業主婦(主夫)の場合

ご自身が家計を支える唯一の稼ぎ手である場合、就業不能保険の必要性は特に高いといえます。

傷病手当金を受け取れたとしても、支給額は給与(標準報酬月額)の約3分の2です。住宅ローンや食費、教育費といった支出は変わらないため、毎月の収支が大きく悪化する可能性があります。さらに、傷病手当金の支給期間(通算1年6ヶ月)を超えても就業不能が続き、障害年金の受給要件にも該当しなかった場合は、世帯の収入がほぼ途絶えてしまうことも考えられるでしょう。

配偶者に収入がない以上、ご自身が働けなくなることは家計全体の問題に直結します。子どもがいる世帯はもちろん、子どもがいない場合であっても、就業不能保険による備えを検討しておくと良いでしょう。

公務員に就業不能保険は必要?

公務員は、病気やけがで働けなくなった場合の保障が会社員よりも手厚い傾向にあります。

  • 病気休暇(原則90日間): 給与の全額が支給される
  • 病気休職(最長1年間): 共済組合から給与の約80%が支給される
  • 傷病手当金(通算1年6ヶ月): 標準報酬月額の3分の2相当が支給される
  • 傷病手当金附加金(6ヶ月程度): 傷病手当金の終了後にさらに給付が受けられる場合がある

このように、公務員は就業不能になってから長期間にわたり段階的に収入が保障されるため、就業不能保険の優先度は低いケースが多いでしょう。まずはご自身が加入する共済組合の制度や家計・貯蓄の状況を確認し、それでも不足が見込まれる場合に、就業不能保険を検討することをおすすめします。

個人事業主・フリーランスに就業不能保険は必要?

個人事業主やフリーランスの方にとって、就業不能保険の必要性は高いといえます。

個人事業主・フリーランスの公的制度による給付金イメージ
個人事業主・フリーランスの公的制度による給付金イメージ

個人事業主やフリーランスの方が加入する国民健康保険には、会社員の傷病手当金にあたる制度がありません。病気やけがで働けなくなった場合、収入が直ちに途絶えるリスクがあります。

また、障害年金は要件を満たせば受給できますが、認定までに時間がかかることもあり、その間の生活費は貯蓄や保険で自ら備えておかなければなりません。

就業不能保険に加入する際は、免責期間(就業不能状態になってから給付が開始されるまでの待機期間)がなるべく短い商品を選ぶと、収入の空白期間を最小限に抑えられます。

就業不能保険は家計の状況や公的制度と合わせて検討を

病気やけがへの備えというと、治療にかかる医療費や入院費を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし、長期間働けなくなった場合の収入減少も、家計にとっては大きなリスクです。就業不能保険は、そうしたリスクに備える手段のひとつとして活用できます。

就業不能保険が必要かどうか、またどの程度の保障額を設定すべきかは、働き方や利用できる公的制度、家族構成や貯蓄の状況によって一人ひとり異なります。まずはご自身が受けられる公的制度の内容を確認したうえで、不足が見込まれる部分に対して就業不能保険での備えを検討してみましょう。

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就業不能保険に関するよくある質問

  • 会社員に就業不能保険は本当に必要ないのでしょうか?
    一概に「必要ない」とはいえません。傷病手当金や障害年金といった公的制度はあるものの、いずれも元の給与の満額を補えるわけではありません。住宅ローンや教育費などの固定支出が大きい場合は、公的制度だけではカバーしきれない可能性があるため、家族構成や貯蓄の状況をふまえて判断しましょう。
  • 就業不能保険はうつ病などの精神疾患でも給付を受けられますか?
    保険会社や商品によって異なります。精神疾患を保障対象とする商品は増えつつありますが、対象外としているものも少なくありません。保障対象であっても、給付期間に上限があったり一時金での支払いとなったりするケースがあるため、加入前に条件を必ず確認しましょう。
  • 就業不能保険の「ハーフタイプ」とは何ですか?会社員にメリットはありますか?
    ハーフタイプとは、就業不能状態になってから一定期間(540日間など)は給付金月額の半額が支給され、その後満額に切り替わるプランです。半額支給の期間は傷病手当金の支給期間とおおむね重なるよう設計されており、保険料を抑えながら長期の収入減少に備えられる点で会社員にもメリットはあります。

    ただし、傷病手当金の支給額だけでは住宅ローンや教育費などの固定支出をまかないきれず、家計に余裕がないケースもあります。そのような場合は、就業不能の初期から満額が支給される通常タイプ(満額タイプ)を選んだほうが安心です。
  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 荒木 和音

    荒木 和音(あらき かずね)

    金融分野専門ライター
    ファイナンシャル・プランニング技能士2級
    保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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