
ペットの犬が、万が一他の人を噛んでけがをさせてしまったら、飼い主さんにはどのような対応が必要なのでしょうか?
噛んでしまったときの対応や賠償について解説します。
記事の目次
意外と多い飼い犬が他人に噛みつく事件
環境省のまとめ※1によると、犬が起こした咬傷(噛んだ)事件のほとんどは飼い犬によるものだそうです。
事件の被害者のうち約9割は、飼い主やその家族以外の人となっています。
愛犬がほかの人を傷つけてしまう事例が少なくないことがわかります。
犬が噛んだ事件の被害者

出典:環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)」より筆者作成
飼い犬が人を噛んでしまったらどうすればいい?
万が一、飼い犬が他の人を噛んだら、どのように対応すればいいのでしょうか?
対応方法については、都道府県の条例など各地域でルールが定められています。
一般的には、噛まれてしまった人の手当てをしたり、被害が拡大するのを防止したりするとともに、次のような措置が求められているようです。
犬に噛まれた人は場合によっては命の危険に関わることがありますから、速やかな対応が重要です。
保健所へ届け出
飼い犬がほかの人を噛んでしまったことを、住んでいる地域の保健所に届け出ます。
事故後速やかに届け出ることが大切です。事故後24時間以内、48時間以内など、時限が定められている地域もあります。
届け出先や、様式などは自治体によって定められているため、お住まいの地域のホームページなどを確認してみましょう。
動物病院で狂犬病の有無を確認
噛んだ犬に、狂犬病の疑いがないかどうかを確認する義務もあります。
事故後速やかに犬を動物病院に受診させ、狂犬病の検査をします。
検診は48時間以内に受ける、2回受検するなど、細かなルールが定められている地域もあります。
飼い犬が人にけがをさせた時の飼い主の責任は?
噛まれてしまった人がけがをした際には、飼い主さんが責任を負う場合もあります。
刑法上の傷害罪に問われる
刑法上※2では、飼い犬がほかの人を噛んでけがをさせてしまったときには過失傷害の罪などに問われることがあります。
たとえば飼い主さんの過失により、犬がほかの人にけがをさせてしまったときは、過失傷害として30万円以下の罰金または科料になります。
被害者を死亡させてしまったときは、過失致死として50万円以下の罰金が科せられます。
飼い主が注意を怠ったことによる死傷事件などを起こした場合には、業務上過失致死傷等として5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金を科せられる場合もあります。
民法上の賠償責任も負うことに
民法※3では、ペットの飼い主はしっかりと注意を払ってペットを飼う(管理する)ことが求められ、管理を怠ってペットがほかの人に危害を加えてしまったときは賠償する責任を負うと決められています。
このため、刑法とは別に、飼い主が被害者に対して治療費や休業補償、慰謝料などの民法上の賠償金を支払う義務も生じます。
被害者のけがの程度によっては、賠償金が高額になることもあるようです。
個人賠償責任保険でけがなどの賠償に対応できる
民法上の賠償責任を負った場合には、加入中の保険で対応できる場合があります。
「個人賠償責任保険(日常生活賠償責任保険)」というもので、日常生活上の事故により第三者に対する損害賠償責任を負った際に、賠償すべき金額が保険金として支払われます。
飼い犬のペットが起こした事故による賠償責任も、基本的に対象になります。
個人賠償責任保険のなかには、賠償事故が起こったときに飼い主さん本人に代わって、被害者と交渉してくれる示談交渉サービスがついているものもあります。
加入中の保険に補償がセットされている場合も
個人賠償責任保険は、現在単体で加入できるものは少なく、ペット保険、火災保険、自動車保険、傷害保険、自転車保険などに特約でついている場合がほとんどです。
これらの保険に加入していれば、特約として個人賠償責任保険が付帯しているかもしれません。
日頃のしつけや予防接種と合わせて保険の確認を
飼い犬による事故を防ぐには、自宅ではゲートなどを設置して外に飛び出さないようにする、、散歩中にはリードを短めに持つなど、日ごろからの対策を心がけておくと安心です。
また、狂犬病の予防接種は年1回義務付けられていますから、忘れずに受けておきましょう。
万が一の事故の際には、速やかに解決に向けて対応できるよう、地域のルールや契約中の保険を確認しておきたいですね。
※1 出典:環境省「動物愛護管理行政事務提要(令和5年度版)」
※2 出典:e-Gov「刑法」過失傷害の罪
※3 出典:e-Gov「民法」動物の占有者等の責任
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執筆者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。