働いていると、病気で働けなくなって収入が減少したり無くなってしまったりするリスクが心配になることがあるでしょう。
身体の病気やけがだけではなく、うつ病など精神疾患や心の不調が理由で仕事を休むケースも少なくありません。そんなときに、就業不能保険は活用できるのでしょうか?給付の条件と合わせて解説します。
精神疾患が原因で働けなくなるリスクはどれくらい?
うつ病や適応障害といった精神疾患で仕事ができなくなるリスクはどれくらいあるのでしょうか。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」※1によると、企業全体のうち、メンタルヘルスの不調によって1ヶ月以上休業したり、その結果退職した労働者が過去1年間にいたと回答した企業は、全体の約12.8%だったそうです。従業員数1000人以上の大企業では91.6%という結果で、精神疾患により休業することは珍しいことではないようです。
うつ病などの精神疾患で働けなくなったとき、就業不能保険の給付金は受け取れる?
就業不能保険は病気やけがでの入院・在宅療養のために、一定期間以上働けなくなったときに、お給料のように毎月、給付金を受け取れる保険です。では、うつ病などの精神疾患、メンタルヘルス不調が原因で仕事ができなくなったときには、就業不能保険は受け取れるのでしょうか?
精神疾患を保障対象に含む商品なら就業不能給付金を受け取れる
就業不能保険では、保険会社が定める「就業不能状態」に該当し、その状態が一定期間をこえて継続した場合に、契約時に設定した月額の給付金を毎月受け取れるしくみになっています。
病気やけがの場合、入院・在宅療養ともに幅広く保障されるのが一般的です。しかし、精神疾患については取り扱いが異なり、上記に該当したとしても保障の対象外とするケースが多くなっています。というのも、精神疾患は数値で客観的に評価しにくく、罹患や完治の判断が難しいうえ、再発リスクも高い傾向があるためです。
ただし、近年は精神疾患による休職者の増加などを背景に、精神疾患も保障対象に含む就業不能保険が登場しています。精神疾患を対象とする商品であれば、保険会社所定の就業不能状態に該当することで給付金を受け取ることが可能です。。
精神疾患による就業不能で一時金が支払われるものも
就業不能保険の中には、精神疾患が原因で就業不能状態になった場合に、毎月の給付金ではなく所定の金額を一時金としてまとめて受け取れるタイプの商品もあります。
一時金タイプは、支払対象外期間(60日や180日など)をこえて就業不能状態が継続した時点で、まとまった金額が一括で支払われるのが特徴です。毎月の給付金タイプが「お給料の代わり」として継続的に生活費を補填するイメージであるのに対し、一時金タイプは休職にともなう急な出費や治療費への備えとして活用しやすいという側面があります。
一方で、一時金タイプは1回の支払いで完結するものが多いため、精神疾患による療養が長期化した場合には、毎月の給付金タイプのほうがより多くの給付金を受け取れる可能性があります。自分の生活費や貯蓄状況、想定される療養期間などを踏まえて、どちらのタイプが自分に合っているかを比較して選ぶとよいでしょう。
在宅療養でも就業不能保険の給付金は受け取れる?
精神疾患による在宅療養で給付金を受け取れるケースは限定的です。精神疾患を保障対象とする就業不能保険であっても、在宅療養が給付対象になるのは一般的に以下のいずれかに該当する場合に限られます。
- 精神疾患の治療で入院した後、退院後に同一の精神疾患について医師の指示に基づき自宅などで在宅療養をしている場合
- 精神疾患により、国民年金法や精神保健福祉法に定める障害等級2級以上に認定された場合
つまり、入院を経ずに在宅療養のみで治療しているケースや、症状が比較的軽く障害等級の認定を受けるほどではないケースは、原則として給付の対象外です。精神疾患の治療では入院せずに通院と在宅療養で回復を目指す方が多いとされていますが、就業不能保険の給付条件はそうした実態とギャップがある点に注意が必要です。
精神疾患に対応した就業不能保険を選ぶ際の注意点
精神疾患に対応した就業不能保険を選ぶ際は、以下の点に注意しましょう。
精神疾患への備えが目的で就業不能保険に加入する場合は、最初に保障範囲を確認しておきましょう。基本保障ではなくオプション(特約)で付加する形式の商品もあるため、申込時の付け忘れにも注意してください。
精神疾患の治療は退院後の在宅療養が長引くことも多く、在宅療養が保障に含まれるかどうかは給付金の総額に大きく影響します。「入院中のみ」が対象なのか「入院後の在宅療養まで含む」のかを確認しましょう。
支払対象外期間は60日・90日・180日など商品によってさまざまです。短いほど早く給付が始まりますが保険料は高くなるため、貯蓄や傷病手当金でカバーできる期間を踏まえて選びましょう。
給付金の支払回数は、身体の病気やけがでは保険期間を通じて受け取れるのが一般的ですが、精神疾患では通算18回(18ヶ月分)までなど上限が設けられている商品もあります。
給付金の受け取り方は、毎月給付型と一時金型があります。毎月給付型は継続的に生活費を補填でき、一時金型は急な出費にまとまった資金で対応しやすいのが特徴です。
精神疾患の保障内容は商品ごとに差が大きいため、複数の商品を比較して選ぶことが大切です。
就業不能保険で受け取れる給付の条件を確認して検討を
働けなくなったときに備える就業不能保険のうち、精神疾患が対象になるものであればうつ病などで仕事を休むリスクに備えられます。ただし、他の病気に比べて給付の要件が厳しいことや、受け取れる給付金に上限があることなど、精神疾患については多くの就業不能保険で取扱いに制限があることに留意しましょう。
精神疾患への給付の詳細は保険会社によって異なることがあります。細かなことは必ず、検討している就業不能保険のパンフレットや保険会社などに確認しましょう。
※なお、本稿では就業不能保険について解説していますが、働けなくなったときに備える保険には「所得補償保険」もあります。所得補償保険では、精神疾患を対象外とするなど、支払要件が異なることがあります。
就業不能保険における精神疾患・在宅療養についてのよくある質問
うつ病以外の精神疾患(適応障害・統合失調症など)でも就業不能保険の給付金は受け取れますか?
精神疾患を保障対象としている就業不能保険であれば、うつ病に限らず適応障害や双極性障害(躁うつ病)、統合失調症なども給付の対象になる可能性があります。ただし、薬物依存などを原因として支払事由が発生した場合は、支払対象外となるケースが一般的です。
保障範囲は商品によって異なるため、加入前に約款やパンフレットで確認しておきましょう。
精神疾患で入院せず在宅療養のみの場合でも給付金は受け取れますか?
精神疾患による在宅療養で給付金を受け取るには、基本的に入院治療を経ていることが前提となります。入院後に医師の指示に基づき在宅療養をしている場合は給付の対象になりますが、入院を経ずに在宅療養のみで治療しているケースは原則として対象外です。ただし、精神疾患により国民年金法における障害等級2級以上に認定された場合は、入院の有無を問わず給付対象となる可能性があります。
精神疾患で就業不能保険の給付金を受け取る場合、回数や金額に制限はありますか?
多くの商品では精神疾患を原因とする給付金の支払回数に上限が設けられています。また、精神疾患の場合は毎月の給付ではなく一時金として支払われる商品もあり、受け取り方や金額の設定は商品によって異なります。
※1 出典:厚生労働省「令和6年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」
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執筆者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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