働いていると、病気で働けなくなって収入が減少したり無くなってしまったりするリスクが心配になることがあるでしょう。
身体の病気やケガだけではなく、うつ病など精神疾患や心の不調が理由で仕事を休むケースも少なくありません。そんなときに、就業不能保険は活用できるのでしょうか?給付の条件と合わせて解説します。
精神疾患が原因で働けなくなるリスクはどれくらい?
うつ病や適応障害といった精神疾患で仕事ができなくなるリスクはどれくらいあるのでしょうか。
厚生労働省の「労働安全衛生調査」※1によると、企業全体のうち、メンタルヘルスの不調によって1ヶ月以上休業したり、その結果退職した労働者が過去1年間にいたと回答した企業は、全体の約10%だったそうです。大きな会社では従業員数が多いためか割合が高く、従業員数1000人以上の大企業では94%という結果で、精神疾患により休業することは珍しいことではないようです。
うつ病で働けなくなったとき、給付金は受け取れる?
では、うつ病などの精神疾患、メンタルヘルス不調が原因で仕事ができなくなったときには、就業不能保険は受け取れるのでしょうか?就業不能保険は病気やケガでの入院・在宅療養のために、一定期間以上働けなくなったときに、お給料のように毎月、給付金を受け取れる保険です。
毎月、就業不能給付金を受け取れる
基本的には、保険会社が定める「就業不能状態」になると、契約時に定めた給付金月額を毎月受け取れるしくみになっています。精神疾患による就業不能の場合にも、保険会社所定の要件に該当すれば、月額の給付金を受け取れるものもあります。
保険の就業不能状態は、体調が悪く仕事を休んでいるという状態のみでは該当せず、おもに治療のために入院をしている、退院後に医師の指示で在宅療養をしているような場合が対象になります。
精神疾患による就業不能で一時金が支払われるものも
また一部の就業不能保険では、うつ病などの精神疾患が原因の場合には毎月の給付ではなく、所定額を一時金として受け取れるタイプもあります。
他の病気やケガと給付条件が異なるので注意が必要
ただし、うつ病などの精神疾患の場合には、他の病気やケガに比べて受取りの要件が厳しいことは要注意です。保険給付の対象となる「就業不能状態」の範囲が限られていたり、受け取れる給付金の上限が低いといった違いがあります。
就業不能状態の範囲が限定されている
一部の保険会社や商品では、うつ病などの精神疾患は就業不能保険の保障対象外とされています。
また、精神疾患が対象になる場合でも、給付対象になる「就業不能状態」の範囲が限定されていることもあります。たとえば、精神疾患については就業不能状態とみなされるのが入院中のみである、入院中及び退院後の在宅療養に限られるようなケースです。
他の病気やケガの場合では入院を要件とせずに、在宅療養のみでも給付を受けられる場合もありますが、精神疾患による就業不能状態は要件が厳しい傾向にあります。
※詳細は保険会社などにより異なります。また、オプションなど一部の保障内容により、給付要件が異なる場合もあります。
給付金の支払い回数に制限がある
また、精神疾患により就業不能給付金を受け取る場合には、通算18回など、受取り回数に上限が設けられている就業不能保険がほとんどです。
他の病気やケガによる就業不能の場合には、働けない状態が続く限りは保険期間中にわたり受取り続けられるのが一般的ですが、精神疾患では受取れる期間や回数が少なくなるリスクがあります。
長期間にわたって働けない状態が続いた場合、他の病気に比べて受け取れる給付金の総額が少なくなる可能性もあります。
就業不能保険で受け取れる給付の条件を確認して検討を
働けなくなったときに備える就業不能保険のうち、精神疾患が対象になるものであればうつ病などで仕事を休むリスクに備えられます。ただし、他の病気に比べて給付の要件が厳しいことや、受け取れる給付金に上限があることなど、精神疾患については多くの就業不能保険で取扱いに制限があることに留意しましょう。
精神疾患への給付の詳細は保険会社によって異なることがあります。細かなことは必ず、検討している就業不能保険のパンフレットや保険会社などに確認しましょう。
※なお、本稿では就業不能保険について解説していますが、働けなくなったときに備える保険には「所得補償保険」もあります。所得補償保険では、精神疾患を対象外とするなど、支払要件が異なることがあります。
※1 出典:厚生労働省「令和3年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概況」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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