フリーランス・個人事業主として働くことは、自分の裁量で自分が目指す夢に向かって、すべてを自分で決められる素晴らしい働き方選択の一つです。
とはいえフリーランス・個人事業主にとっても、夢ばかりではなく、リスクが付きまとうという事実も。
病気やケガで「働けない」リスクはついて回ります。
「元気だから大丈夫」「ケガなどしない」などと過信をしすぎず、万が一に備え、保険でカバーしておきたいですね。
また、業種や業務によっては、取引先やお客様に対する賠償責任も保険でカバーできるよう検討したいものです。
ここではフリーランス・個人事業主の方々が夢に向かっていけるよう、リスクの回避法と対応する保険の仕組みと特徴を解説していきます。
フリーランス・個人事業主という働き方が身近に
総務省統計局「就業構造基本調査(2022年) 」で、基幹統計として初めてとなるフリーランスの働き方に関する調査が行われました。
調査におけるフリーランスの定義は、「実店舗がなく、雇人もいない自営業主または一人社長で、その仕事で収入を得る者」となっており、農林漁業は含みません。
結果は、フリーランスの数は257.4万人で、うち、本業がフリーランスの数は209.4万人(有業者の3.1%)、副業がフリーランスの方は48.0万人でした。年代別では、「45~49歳」「50~54歳」が多いのがわかります。
年齢階級、フリーランスの本業・副業の別 別有業者数、フリーランスの数及び有業者に占める割合(2022年)
(単位:万人)
※はみ出ている場合、横にスクロールできます。
出典:総務省統計局「就業構造基本調査(2022年)」
産業大分類別に有業者に占める割合をみると、多い順で「学術研究,専門・技術サービス業」が13.5%、次いで「建設業」と「不動産業・物品賃貸業」がそれぞれ10.7%、「情報通信業」5.2%と続きます。
産業大分類別有業者数、本業がフリーランスの数及び有業者に占める割合(2022年)
(単位:万人)
※はみ出ている場合、横にスクロールできます。
出典:総務省統計局「就業構造基本調査(2022年)」
同調査は今回が初めてのため、増減については確認することができませんが、他の調査では「副業がフリーランス」の数が大きく異なるものもあり、定義のし方で変わってくるようです。
かつては副業禁止の職場も多かったのですが、「働き方改革」の中で、国として副業を推進する方向に舵が切られ、環境整備も進められてきました ※1。
「増えた」とされるのは、副業フリーランスの部分が大きいのかもしれません。
いずれにしても、フリーランス・個人事業主が身近になってきたことは確かだと思います。
フリーランス・個人事業主には傷病手当金も労災保険もない!?
本業としてフリーランス・個人事業主で働く場合、2つの点で注意すべきことがあります。
①国民健康保険には傷病手当金がない!
フリーランス・個人事業主が加入する国民健康保険には、会社員が加入する健康保険(社会保険等)とは異なり、傷病手当金の保障制度がありません。
傷病手当金制度とは、病気やケガの治療で休業した場合、連続3日休んだ後、休業4日目から、最長1年6ヶ月にわたり、1日あたり「月給(標準報酬月額)÷30日」の2/3相当額が健康保険から支給される休業時の制度です。
病気やケガで入院・自宅療養などをして、働けなくなった場合、会社員であればこの傷病手当金制度が経済的な支えとなりますが、フリーランス・個人事業主は、備えを用意しておかないと、生活が立ち行かなくなってしまいます。
②フリーランス・個人事業主は、原則、労災保険に入れない!
会社員であれば、会社が全額負担して労災保険に加入していて、業務中や通勤途上のケガや病気は、労災保険で補償されていますが、フリーランス・個人事業主は原則、労災保険に加入することができません。
国民健康保険の場合は、仕事中のケガであっても保険証を使うことができます。
フリーランス・個人事業主でも例外的に労災保険に加入できるのは(特別加入※2)、中小事業主、一人親方、特定作業従事者、海外派遣者等です。
特定作業従事者には、特定農作業従事者や介護作業従事者、ITフリーランスなど細かく指定されています。
労災保険に加入できる場合も、保険料は全額自己負担となります。
また、そもそも特別加入の対象でない場合、病気やケガに対する保障は自分でカバーする必要があります。
つまり、たとえ労災保険に入れたとしても、病気やケガで「働きたくても働けない」状態に備えて、自分で準備をしておく必要があると言えます。
フリーランス・個人事業主に有効な「就業不能保険」の仕組みと特徴
フリーランス・個人事業主が、病気やケガで働けない状態になった時に備えられる民間保険として、就業不能保険が挙げられます。
この保険商品の仕組みと特徴を押さえておきましょう。
就業不能保険は、病気やケガで所定の就業不能状態が一定期間継続したときに、一時金や年金など(保険商品によって異なる)で受け取れる生命保険です。
「所定の就業不能状態」とは、保険商品によって異なりますが、入院の場合もあれば、医師の指示に基づく在宅療養とするもの、「国民年金の障害等級1級または2級」や「公的介護保険の要介護2以上」、あるいはそれらの組合せなど、保険会社や保険商品によって様々です。
入院や在宅療養も、3大疾病や5大疾病などに絞りこんだ商品もあります。
また、精神疾患については、保障対象となる保険商品と、保障対象外の保険商品があります。
支払い対象となるまでの期間も、短期であれば「10日」や「14日」、長期であれば「60日超」や「180日超」など、こちらも保険商品によって異なります。
フリーランス・個人事業主にとって、「働けない」状態になったとたんに、収入がストップしてしまうことはとても大きなリスクです。
40代、50代となって健康に不安を感じ始めた人はもちろん、20代、30代と若くても、「健康だから大丈夫」と過信せず、必要な保障として検討しましょう。
労災保険に加入できる人も、労災保険の対象は労災に限定されます。
労災以外の日常生活での病気・ケガで働けなくなる場合があることを考えれば、できれば、労災+就業不能保険を検討したいもの。
実際に各社の就業不能保険をチェックしながら検討すると、よりわかりやすいでしょう。
業務上の賠償責任補償をカバーするには?
フリーランス・個人事業主として仕事をする際に考えておくリスクは、他にもあります。
その1つが、さまざまな損害賠償責任を負うリスクです。取引先様、外注先、お客様に係るトラブルです。
特に、個人商店などを経営している方で、販売した商品や提供したサービス等に伴う損害賠償や、システム上の情報漏えい、あるいは施設の管理不備でお客様にケガをさせてしまった、などが挙げられます。
また、悪質なクレームやデマが拡散されたら、当然それに対処する必要があります。
「フリーランス・個人事業主専用の賠償責任保険」がある
こうした損害賠償事案が起きたときに頼れるのが、事業を守るための賠償責任保険です。
フリーランス・個人事業主専用の賠償責任保険は、保険商品によっては、示談交渉を代行してくれたり、事業上のお悩みを無料で専⾨家に相談できるサービスが付いているものもあります。
フリーランス・個人事業主にとって、加入しておくべき必要な補償がワンパッケージでセットされている賠償責任保険です。
フリーランス・個人事業主に向く賠償責任保険の例
まとめ
一般企業の経営者は、将来の夢や希望とともに、必ず負うべき必要なリスクについても検討を続け、保険加入でリスクヘッジしています。
フリーランス・個人事業主として働くことは、個人ビジネスと言えども、いち経営者となるわけです。
会社が守ってくれていた会社員時代とは違い、すべてのリスクを自身で負うことを自覚しましょう。
病気やケガで働けなくなった時のリスクは特に、就業不能保険などで必要な保障としてカバーしたいものです。
また、賠償責任補償も、必要に応じて検討するといいでしょう。
今後の社会でフリーランス・個人事業主が増加していくことが予想されます。
ぜひフリーランス・個人事業主として夢や希望を胸に抱き、事業に邁進してください。
出典:総務省統計局「就業構造基本調査(2022年)」
※1 出典:厚生労働省「副業・兼業」
※2 出典:労災保険「特別加入制度のしおり」
-
執筆者プロフィール
豊田 眞弓(とよだ まゆみ)
FPラウンジ代表
大学非常勤講師、AFP認定者、子育て・教育資金アドバイザー、住宅ローンアドバイザー
マネー誌ライターなどを経て、94年より独立系FP。コラム執筆・監修、講演・研修、相談業務などに従事。かつて、日本実業出版社の保険ムックにて保険料の全社比較を企画・調査し、ムックを重版させたことがある。
気になった記事をシェアしよう!