がん検診は、所定の年齢になると、お住いの自治体からクーポンが送られてきます。検診の種類には、多くの女性にとって心配な乳がん検診もあり、40歳以上などの検診対象の女性には、2年に1度など定期的に乳がん検診のクーポンが郵送されてきます。
しかし、検診に意味があるのかわからず、わざわざ時間を取っていく気にならないという人もいるかもしれません。また、検診を受けてみたいけれど、どんなことをするのか、痛みはどれくらいあるのか、恥ずかしいのではないか、お金や時間がどれくらいかかるのかわからない、と不安な人もいるでしょう。
では、乳がん検診にはどんな効果や方法があるのか、どうやって受けられるのか、詳しく見ていきましょう。
「検診」と「健診」の違いとは?
「検診」と「健診(健康診断)」は、似た言葉ですが、それぞれ目的が少し異なります。
検診は特定の病気を早期発見するための検査
「検診」とは、特定の病気にかかっているかどうかを調べるための検査・診察のことです※1。
特定の病気の早期発見と早期治療の実施を目的としており、胃がんや大腸がん、肺がんなどの検査をするがん検診や、子宮内膜症など女性特有の病気を検査する婦人科検診などがあります。婦人科系の病気では、乳がん検診や子宮がん検診のように、特定のがんのみ検査するもののほか、「婦人科検診」のパッケージのなかで女性特有の複数の病気を同時に検査できる医療機関もあります。
検診は基本的に任意で受けることになっています。
健診は全身の健康状態を確認するための検査
これに対して「健診(健康診断)」とは、その人が健康かどうか、また病気のリスクを抱えていないかを総合的に確認するための検査のことをいいます※2。
健診には、年齢や乳児、企業の従業員、妊婦などの属性によって法定で受診が義務付けられているものと、個人が任意で受けるものがあります。おもに、身長・体重・腹囲・視力および聴力の検査、血圧などはいずれの健診でも共通して検査しますが、年齢や属性によって、便及び尿検査、胸部エックス線検査、肝機能検査なども検査項目に含まれます。
会社勤めをしている人の場合、労働安全衛生法で、1年に1回は健診を受けるように定められています。ですので、健康に自信がある人や病気の心配がない人も必ず受診しなくてはいけません。これに対して自営業や専業主婦などの場合は、自治体が実施している健診を自分で申し込むなどしなければ、健診を受ける機会は基本的にありません。
このように、検診と健康診断では調べる項目や内容が異なります。ですから、会社などで定期的に健康診断を受けている場合も、乳がんなど特定の病気を発見するには、別途で検診を受けることが重要です。
女性が乳がんにかかるリスクはどれくらい?
では、女性にとって乳がんの検診はなぜ必要なのでしょうか?
女性が乳がんにかかるリスクがどれくらいなのかをデータで見てみましょう。
女性が罹患するがんの1位は乳がん
国立がん研究センターの「がん登録・統計」のデータ※3で、女性が罹患したがんを部位別に見ると、乳がんは他のがんよりも罹患数が高いことが分かります。
がん部位別罹患数(女性)
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国合計によるがん罹患データ(2014年~2015年)より筆者作成
また年代別で見ると、20代から罹患者が徐々に出始め、30代~40代にかけて、罹患数が急増しています。60代以降では年代が高くなるにつれ罹患者数が少なくなりますが、高齢世代になっても30代よりも罹患数の多い状態が続くようです。
このように、女性にとって乳がんへの注意は、20歳を超えてからはどの年代でも重要であることがわかります。
乳房がん年齢別罹患数(女性)
出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国合計によるがん罹患データ(2014年~2015年)より筆者作成
乳がん検診の受け方と検査方法
では、乳がん検診はどうやって受ければよいのでしょうか。また、検査方法はどのようなものがあるのでしょうか。
乳がん検診の対象
がん検診は、医療機関や検診センターで受けることができます。自分の好きなときに受診できますが、全国の市区町村ではがん検診の受診率を上げるために、地域に住む人向けのがん検診を実施しています。
このうち乳がん検診はおもに40歳以上の偶数年齢の女性を対象としていますが、一部では30代の女性も受診対象としている市区町村もあります。ただし、職場などで乳がん検診が受けられる人は自治体の検診対象とならない場合があるようです。
なお、妊娠中または妊娠の可能性がある人や、授乳中または断乳から半年未満の人、豊胸手術をした人などは、検診を受けられない可能性があります。該当する可能性があるときなど、詳しくは乳がん検診を行っている医療機関に確認してみましょう。
乳がん検診の受け方と費用
自治体のがん検診の対象になる人には、検診制度を運営している市区町村から、2年に1回、受診券が届きます。受診券が到着したら、検診を行う対象医療機関に電話などで自分で予約を取ります。受診券には有効期限がありますので、受診券が到着したら、早めに予約するのがおすすめです。
医療機関によっては、乳がん検診などは女性の医師やスタッフが担当している場合もあります。男性の医師が担当だと恥ずかしいかな、と思う人は、女性医師・スタッフがいる医療機関を探してみましょう。
費用は、任意で受診するときには基本的に全額が自己負担ですが、自治体の受診券を利用すれば検査方法によっておよそ500円~1,000円の自己負担で受診できる場合が多いようです。無料で受診できる市区町村もあります。また、生活保護受給者などは費用が免除される場合もあります。
乳がん検診ではどんな検査をする?
病院に行ったら、乳がん検診では具体的にはどんな検査をするのでしょうか?おもに次の3つの検査方法があり、そのうち1つ、または複数を組み合わせて行います※4。
1.マンモグラフィ検診
マンモグラフィ検診は、乳房専用のX線撮影(レントゲン)を基に診断を行います。透明の板で乳房をはさんで薄く伸ばし、少ない放射線量で撮影を行います。40歳以上を対象とした市区町村の乳がん検診は、この方法で実施される場合が多いようです。
乳房を平たくするためにある程度の力を乳房にかけるため、痛みを感じる人もいます。月経前の、乳房の張りが強い時期を避けることで、痛みをある程度軽減できるといわれています。
2.超音波(エコー)検診
超音波(エコー)検診は、超音波を発する器具を乳房にあて、映した画像を基に診断を行う検査です。20代・30代は乳腺が発達している人が多く、マンモグラフィでは異常のある部分が乳腺の影に隠れてしまい見つけにくいため、超音波(エコー)検診で検査することが多いようです。一部の市区町村の乳がん検診は、この方法で実施される場合もあります。
3.視触診検診
医師が乳房とわきの下を見て、あるいは触って診断を行います。2016年4月以降に行われる市区町村の乳がん検診では、検査項目から外れているところが多いようです。
乳がんのセルフチェックで早期発見を
乳がんは、セルフチェックで異常に気付ける場合もあります。定期的な乳がん検診と自己検診を合わせて行うことで、より早期段階で乳がんを発見できる可能性があります。
では、自宅でできる乳がんのセルフチェック方法を見てみましょう。
月に一度は行いたい!セルフチェックの方法
認定NPO法人J.POSH事務局※5によると、乳がんセルフチェックは、おもに以下の4つの手順で、しこりがないかなどを確認します。
- 見て
- さわって
- つまんで
- 横になって
閉経前の人は月経が終了して1週間後の胸の張りが無い時期、閉経後の人は毎月決まった日に行うとよいようです。
出典:認定NPO法人 J.POSH 事務局「HOW TO マンマチェック」
異常を感じたら乳腺科や乳腺外科で受診を
もしも上記の乳がんセルフチェックの中で、しこりがあった・分泌物があったなどの異常や違和感があった場合には、すぐに乳腺科または乳腺外科の診察を受けることが奨められています。
また、乳がんにはしこりができないタイプもあるといわれています。セルフチェックでしこりが見つからなかった場合にも、定期的に乳がん検診を受診すると、早期発見につながるかもしれません。
乳がんの対策には定期的な検診とセルフチェックを
これまで乳がん検診を受けたことがない場合、受診に抵抗を感じる人もいるかもしれません。ですが、定期的な検診の受診とセルフチェックで、がんの早期発見と早期治療が実現できる可能性が高まります。自治体の乳がん検診を活用すれば、少ない費用で安心につながるかもしれませんね。
※1 出典:厚生労働省「eヘルスネット 検診(けんしん)」
※2 出典:厚生労働省「eヘルスネット 健診(けんしん)」
※3 出典:国立がん研究センターがん情報サービス「がん登録・統計」地域がん登録全国合計によるがん罹患データ(2014年~2015年)
※4 出典:厚生労働省「がん検診」
※5 出典:認定NPO法人 J.POSH 事務局「はじめよう!月に一度のマンマチェック」
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監修者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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