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Vol.16 【最終回】最後の最後は神頼み

ギランバレー症候群体験記

ギランバレー症候群体験記

ギランバレー症候群は、自己免疫疾患の一つで、ウイルスや細菌がきっかけとも言われている。
両足の筋力低下、しびれ、運動麻痺、呼吸麻痺にもなりえる病気にかかり、治療を経て、リハビリ、回復に至るまでをコラムで振り返る。

1ヶ月ぶりの職場

退院後、自宅での療養とリハビリを終えて、いよいよ現場復帰することとなった。

復帰初日、緊張と不安の中、一歩一歩かみしめるように歩きながらなんとか会社にたどりつくと、
皆、私が無事であることに驚嘆しつつ、温かく迎え入れてくれた。

目の引きつりなどは、まだ残っていたが、特に支障なく仕事をする事が出来た。
忙しい日々のスタートにはなったが、当たり前のように、仕事をすることがとても嬉しく思えた。

さらに嬉しかったことがある。
会社の同僚が、休職中の私の代わりになるべく業務に必要な資格を取得してくれたのである。
試験日の直前に私が復帰したので、「中止してもよかったが、勉強もしていたので、勢いで取った」と言うのが実情のようである。
私は、何よりこの心意気に心打たれた。

別に会社から命じられたわけでもなく、自主的に業務をカバーし合おうという姿勢である。
当時、そうでなくても激しい残業の中で、迷惑をかけてしまった申し訳なさと、感謝の想いでいっぱいである。

入院生活を振り返って

最後にもう一度、入院時の状況を振返りたいと思う。

仕事で忙しい時は、何にもせずズーッと寝ていたいと思うものだが、いざ病院のベッドに横になると寝続けるのが苦痛になる。

そんな中、救急病棟の夜は気持ちを不安定にさせる。
完全消灯後、扉やカーテン等も完全開放の中で響く、うめき声、ピッ、ピッという機械音、看護師が小走りする足音。

点滴で栄養補給し、管で排泄する、身動きの取れない寝たきりの自分に対し、
「この状況が一体、いつまで続くのだろう。」
「自分は、何のために生きているのだろう。」
「ただ入院費用を浪費し、皆に迷惑をかけるだけなら、生きている意味はないのではないか」

身体の神経は侵されてはいるが、頭は意外とハッキリしている。
時間もたっぷりあるので、何度も何度も、自問自答を繰り返していた。

天使の訪れ

ある日の朝、不思議な夢を見た

(BGMイメージ:天使の歌声・リベラの「サンクトゥス 」が流れている感じ。もちろん実際には流れていない。)

光がまぶしく差込み、とても身体が軽く温かな感じだった。
しばらくすると天使がやって来て、1メートル弱くらいの鳥の羽根かわた毛のようなもので、足元から頭にかけて、ゆっくりと撫でていった。

するとピリピリッ、ピリッと毛穴に電気が走っていくように感じた。痛みのない心地よい感覚だった。
変な気分だったが、「手足の感覚がある!」と、実感した瞬間でもあった。

最後の最後は神頼み

不思議なことに、この夢をきっかけに気持ちは前向きに、身体は回復に向かっていった。
神様が天使をつかって、背中を押してくれたのだろうか。

なぜかこの時の様子は、鮮明に記憶している。
ヤバイ奴って思われるかもしれないが、実話である。

呼吸だけして、ただ、ただ1日が終わる日々。そこから脱する事ができる!と妙な自信も芽生えてきていた。

「神様は何か役立たせてくれるなら、私を生かしてくれるだろう、復活させてくれるだろう」

根拠のない自信だった。
今思えばただ、そう願うしか、願い続けるしかなかったのかもしれない。

そんな時、妻に「このドン底の状態(管が数本つながれている状態)を写真撮ってくれ!必ず復活してやる!」と言ったことがあったが「絶対に嫌だ、残したくない!」と断られ続けた。

そんな中で残っている唯一の写真である。

診察直前と入院直後の顔

左:診察直前の自分で撮ったもの/右:入院直後に妻が撮ったもの

おかげさまで、願いが通じたのか、こうして復帰する事が出来た。

以上が私の奇跡の体験記である。
振り返ると、絶望感や生きるつらさといった苦しみの体験であったと同時に、人の温もりを感じたひと時であったとも言える。

当時の体験を言葉にすることで、改めて感謝の気持ちがあふれてきた。

妻へ

子育てされている方は言うまでもなく、生後1年未満の子は一瞬たりとも目が離せないものである。
心が不安になるこの時に妻の心の支えになることが出来なかった申し訳なさと共に、先行き不透明な私の支えに親身になってくれた妻に心から感謝である。もう一生、頭が上がらない。ありがとう。

家族へ

妻の両親には、妻の病院への送迎、孫の世話、私の退院後のケアなど、語りつくせぬほど、たいへんお世話になってしまいました。
心配をおかけして申し訳ありませんでした。私に対しても、わが子のように接して頂き、本当にありがとうございました。
同じような心配をかけぬよう健康に留意してまいります。

勤務先同僚の皆さんへ

私が逆の立場だったら、「こんな忙しいときに。」と、不平不満を言っていたかもしれない。
「利他の心」で予期なきこの事件とも言える状況に、一丸となって自主的に対応してくれた。復帰後も体調を気にかけてくれ、感謝の極みである。
仕事を通じて、わずかながらでも、御恩返ししていきたい。ありがとうございました!

ご担当頂いた医師・看護師ら病院に従事する皆様へ

振り返ってみれば、2週間程度の短期の入院であったが、ある意味、戦場にいるかのような命がけの日々でした。
本当に素晴らしい医療スタッフの皆さまに恵まれたおかげで様で、復帰することができました。
巡り合わせに感謝いたします。ありがとうございました。

編集長へ

そして何より、今回このコラムを世に出すべく、「より良い内容に!」と真剣に向き合ってくれた編集長には、本当に感謝である。
約3年前にこのコラムの基本記事は出来上がっていたが、その頃の心情や背景を問答しながら、記憶をたどりながら、ここまでのボリュームにまでになった。
編集長!この文章に命を吹き込んでくれてありがとう!!感謝。

今回で最終回となります。今まで読み続けていただいた皆様に感謝申し上げます。

プロフィール
岩本 晃一

岩本 晃一(いわもと こういち)

株式会社ライフィ 理念経営推進室
2級ファイナンシャル・プランニング技能士、AFP

1968年、神奈川県生まれ。大学卒業後、住宅メーカー、生命保険の営業職を経験。
45歳で娘が生まれ、その8か月後にギランバレー症候群を発症。本コラムでは、治療から回復までの体験を振り返る。

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