持病がある人が生命保険に加入するときには、特別な条件がつくケースがあるのをご存じですか?
保険の申込時に記入した告知書の内容や診査の結果によっては、希望する保険の内容そのままでの契約ができず、保障内容が制限されたり、保険料が割増しされたりすることがあります。
持病が生命保険の契約に与える影響と、条件が付いたときの対処法について解説します。
生命保険の特別条件とは?
持病のある人や、最近に入院や手術、通院をした人が生命保険に加入するときには、契約にあたって特別な条件が付くことがあります。
これは、健康や職業に関する告知の内容から、他の加入者と比べて将来に保険金や給付金を受け取る可能性が過剰に高いと判断されるためです。
生命保険は、加入者が公平に保険金や給付金のコストを負担するしくみになっています。基本的には加入者の年齢や性別に応じて、病気や死亡、ケガのリスクを統計的に見積もって保険料が設定されています。
しかし同じ年齢・性別の集団の中で、持病を抱えていたり、入院や手術をしたばかりの人が含まれると、そのような特定の人に給付の確率が偏る恐れがあります。
こうした不公平が生じないように、病気などのリスクが高いと判断された人には保険料を上乗せで負担してもらったり、特定の病気に限っては保障の対象外にするといった条件を付けて契約してもらうことがあります。これが、生命保険の特別条件です。
特別条件には、おもに以下の種類があります。
特別条件の種類
特定疾病 ・特定部位不担保 |
特定の病気や身体部位を 保障しない |
特別保険料 ・割増保険料 |
保険料が上乗せされる |
保険金削減 |
保険金額が低くなる |
特定疾病・特定部位不担保
保険会社に指定された種類の病気(特定疾病)や身体部位の一部(特定部位)に限って、保障対象から外すという条件です。おもに医療保険や生命保険の医療特約で付くことがあります。
たとえば胃かいようにかかったことがある人が契約するときに、胃や十二指腸は不担保とするような例が挙げられます。
契約後に胃がんや十二指腸潰瘍になった場合には保険の対象になりませんが、別の部位の病気やケガであれば、通常通り保障されます。
また、保険期間中に身体に障害が残ったときに、高度障害保険金や保険料の払込み免除を受けられる保険の場合には、契約時に視覚障害や聴覚障害などがあるとその保障をしない、特定障害不担保という条件が付くこともあります。
特別保険料・割増保険料
保障内容は通常の契約と変わらないものの、月々の保険料が上乗せされるという条件です。死亡保険や医療保険など、生命保険全般で用いられます。
上乗せされる保険料部分を、特別保険料や割増保険料といいます。保険料が割増しされるのは、契約から一定期間のみの場合と、契約中ずっとの場合があります。
また、あまり事例は多くないようですが、30歳の人が40歳向けに設定された保険料を払うなど、契約年齢よりも高い年齢に相当した保険料を負担する方法もあります。
保険金削減
契約中に病気や死亡があり保険金や給付金を受け取るとき、保険会社が定める期間中は金額が削減される条件です。死亡保険や医療保険、介護保険など、生命保険全般で用いられます。
保険金額以外の保障内容や月々の保険料は通常と変わりません。
削減されるのは契約から最長5年間で、告知内容から判断されるリスクに応じて、保険会社が決定します。削減される割合は契約後に期間が経過するにつれて低くなり、削減期間が過ぎてから死亡などで保険金を受け取るときには100%の保険金額が支払われます。
条件が付くのはどんなとき?
生命保険で特別条件が付く可能性があるのは、持病で通院をしている、薬を飲んでいるようなときです。
また妊娠中や出産から間もない時期の契約も、条件が付くことがあります。あるいは、病院を受診していなくても、健康診断で「要治療」など異常を指摘する結果が出ていれば、日常生活には支障がなくても保険の契約上はリスクが高いと判断されることがあります。
ほかに、健康状態には問題がなくても、職業上で病気やケガのリスクが高い仕事に就いていると、条件が付くことがあります。
特別条件が付く可能性のある病気やケガ
特別条件がつくかどうかは、保険に申し込むときの告知内容から保険会社が判断します。告知をした内容について追加の告知や診査を行い、詳細を尋ねられる場合もあります。
病気やケガの重症度、治療の状況、治っていればその後契約までの期間などをもとに、個別に査定を行いますので一概にはいえませんが、一例として、条件が付くことのある病気や障害、職業を挙げてみましょう。
条件が付く可能性のある病気・障害・職業など(一例)
病気 |
高血圧、糖尿病、心疾患などの生活習慣病、虫垂炎ほか |
その他 |
けが、妊娠中のトラブル、帝王切開 ほか |
障害 |
視力障害、聴力障害 ほか |
職業 |
トラックやタクシーなどの運転、木材や土砂の採取や運搬、スポーツ競技ほか に従事する仕事 |
これらに該当したことがあるからといって、必ず特別条件が付くとは限りません。条件のない標準的な契約をできることもあります。
逆に、保険上でのリスクが過剰に高いと判断されると、謝絶といって、契約ができないこともあります。
特別条件が付いたらどうすればいい?
このように、持病や傷病歴などがあると、通常と同じようには保険に契約できずに特別条件が付くことがあります。
もし、申し込んだ保険に条件が付くといわれたときには、どうすればいいのでしょうか?おもな考え方を解説します。
特別条件に合意して契約する
まず考えられるのが、保険会社から提示された特別条件に合意して、保険に契約することです。通常の契約と比べると保険料が高かったり、保障が制限されてしまうことになりますが、希望の保険プランには契約できます。
特別条件付で契約するときには、保険会社が発行する特別条件への承諾書に署名などをして、同意のうえで契約手続きを進めます。
他の保険会社を探す
特別条件では保険料が高すぎる、希望の保障を確保できないようなときには、他の保険会社で類似の保険を探してみる方法もあります。
告知に対する契約可否や条件の有無の判断は、保険会社によって異なることがありますから、A社では条件付と言われたが、B社では通常通りの契約が可能かもしれません。
持病がある人向けの保険を検討する
生命保険や医療保険のなかには、持病がある人や傷病歴がある人に向けた専用の保険もあります。引受基準緩和型や無選択型というもので、告知事項が少ないか、告知無しで契約できます。
引受基準緩和型や無選択型の保険は、持病がある人にも入りやすい反面、保険料が割高であったり、保障内容がシンプルで特約があまり充実していない傾向がある点はデメリットです。
特別条件が付いた場合と比べて、どちらがご自身の希望に近い保険になるかを検討して選ぶとよいでしょう。
特別条件について知り、自分のニーズに合った保険を選んで
持病や傷病歴があると、生命保険に条件が付くことがあります。
申し込んだ後に条件が付くことを告げられると、戸惑ってしまったり、もう一度検討し直すのが面倒に感じてしまうかもしれません。特別条件のことをあらかじめ知っておくと、そうした事態を想定して保険選びをできそうです。
保険を探すときに、保険会社や取扱店に相談しておくのもいいかもしれませんね。
今みんなが選んでいる保険は?
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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