難病にかかったときや治療中には、病気が治るかどうかとともにお金の不安もあるかもしれません。医療費の負担には公的な補助制度のほかに、民間の生命保険を活用できることがあります。
難病になったときに対応できる生命保険について解説します。
難病・指定難病とは?
難病には、膠原病やギランバレー症候群、パーキンソン病など、比較的一般に知られた病気のほか、患者数が少ない病気もあります。
患者数が一定数に満たない、客観的な診断基準が確立しているといった要件に当てはまるものは「指定難病」といって、治療にかかる医療費が補助される公的な制度(難病医療費助成制度)があります。
出典:厚生労働省「指定難病病名一覧表」より一部抜粋
難病になると受け取れる、生命保険の保険金・給付金
もしも難病にかかったとき、生命保険はどのように受け取れるのでしょうか。
契約している保険の内容にもよりますが、基本的には難病以外の病気と同じです。治療のために入院したときには入院給付金、手術を受けたときには手術給付金の対象になります。
入院給付金
難病を含め、病気やケガで入院したときに給付されます。
入院日数に応じて支払われるタイプや、日数にかかわらず一律の金額が支払われるタイプ、治療にかかった費用の実費が支払われるタイプなどがあります。
手術給付金
治療のために手術を受けた際に給付されます。
手術の内容によって、入院給付金の日額の10倍や20倍など、金額が変わるものもあります。
難病指定による給付金
一部の保険会社では、特定の難病にかかり所定の要件に該当したときに給付金が支払われる特約を提供しています。「特定難病給付金」などの特約で、保険会社が定める特定の難病が対象になります。
女性疾病特約
甲状腺の障害による病気や、全身性エリテマトーデス、関節リウマチといった病気の一部には、生命保険や医療保険では女性特有の病気として、「女性疾病特約」などの特約の対象になるものがあります。
これらの難病で入院や治療をしたときに、通常の入院給付金などとは別に給付金が支払われます。
先進医療給付金
治療や検査のために先進医療を受けた場合は、先進医療特約の対象になることもあります。先進医療は国が指定する病気に対して所定の医療技術をもちいて行うもので、一部の難病でも先進医療による治療を行うことがあります。
加入している生命保険に先進医療特約がついていると、かかった医療費の実費が給付されます。
難病になっても入りやすい生命保険
上記は、生命保険に加入している人が難病になったときに受けられる可能性のある保険金・給付金ですが、では、すでに難病を抱えている人や、難病にかかったことがある人がこれから生命保険に加入することはできるのでしょうか?
原則として保険の加入時には健康に関する告知が必要で、持病がある場合には一般的な生命保険には加入できない可能性があります。
しかし一部には難病を含め、病気にかかったことがある人や治療中の人が加入しやすい保険があります。
難病でも申し込める死亡保険
万一の死亡時に保険金が支払われる死亡保険のなかには、告知事項の少ない「引受基準緩和型」や、告知のない「無選択型」というタイプがあります。
告知があるものは難病にかかった時期や病名などによって加入できないことがありますが、告知のないタイプは健康状態にかかわらず申し込むことができます。
難病でも申し込める医療保険
病気にかかったときや入院したときに給付を受けられる医療保険にも、告知事項が少なく病気になった人が入りやすいものがあります。
いずれも、申込や告知の内容によっては加入ができないことや、特定の病気や部位については保障の対象外とするなど、契約に条件がつくケースもありますが、標準的な生命保険に比べると入りやすくなっています。
加入の審査は各保険会社が行いますので、詳しいことやご自身のケースでの加入可否については、保険会社に問い合わせてみるといいですね。
難病治療への備えを、生命保険で対応
病気への不安、治療が長引く不安、そして病気と付き合いながら生活していくうえでのお金の不安は小さくありません。公的な医療費の補助制度を活用し、経済的な負担をできるだけ抑えたいものです。
しかし難病への医療費の助成制度には所定の手続きが必要で、補助を受けられるまで時間がかかることがあります。
また、難病の種類や症状によっては対象外になることもあるようです。そのような場合に、生命保険を活用できると安心ではないでしょうか。
※1 出典:厚生労働省「指定難病」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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