先進医療特約は、医療保険やがん保険にセットできる特約です。手ごろな保険料で付けられるケースが多いものの本当に必要なのか、迷っている人もいるでしょう。具体的にどのような場面で活用できるのか、イメージしにくい人もいるかもしれません。
この記事では、先進医療の基礎知識や先進医療特約で備えられるリスク、先進医療特約の必要性を解説します。
そもそも先進医療とは?
「先進医療」とは、高度の医療技術を用いた治療法や医療技術のうち、公的医療保険の対象にはなっていないものの、有効性や安全性について一定の基準を満たしたものをいいます。
厚生労働大臣によって定められ、2026年5月1日時点で、がんや糖尿病、うつ病やアルツハイマー病などにかかわる治療や検査など72種類が「先進医療」として認められています。※1。
先進医療を受けた場合、その技術にかかる費用は全額自己負担です。ただし、診察や検査、投薬、入院といった通常の保険診療と共通する部分については公的な健康保険が適用され、自己負担は原則3割(年齢などにより1〜2割)になります。
先進医療と保険診療あわせて100万円の治療費がかかった場合
出典:厚生労働省「先進医療の概要について」
例えば、医療費が全部で100万円、このうち先進医療の技術料が20万円だった場合、先進医療に対する自己負担は20万円です。残りの医療費(80万円)に対しては公的医療保険が適用されます。保険適用分の3割にあたる24万円と先進医療分の20万円をあわせた44万円が実際の自己負担額です(保険適用部分に対しては高額療養費制度も利用できるため、さらに負担が軽くなる場合もあります)。
なお、先進医療は医療技術ごとに実施できる医療機関が定められています。同じ治療であっても、届出が受理された医療機関で受けなければ先進医療としては扱われません。治療を検討する際は、厚生労働省のウェブサイトで対象の医療機関を確認しておきましょう。
先進医療と自由診療の違い
保険診療と併用できるかどうかが、先進医療と自由診療の違いです。
一般的な自由診療は、原則として保険診療との併用(いわゆる混合診療)が認められていません。自由診療を受けると、同じ治療の中で行われた診察や検査など、本来は保険が適用される部分もすべて自己負担になります。
これに対して先進医療は、保険診療との併用が認められているため、先進医療の技術料は全額自己負担になりますが、それ以外の診察・検査・投薬・入院などの費用は保険が適用されます。
先進医療と患者申出療養の違い
先進医療と患者申出療養は、どちらも保険診療との併用が認められている治療ですが、制度の成り立ちや利用方法が異なります。
先進医療は、医療機関側が厚生労働省に届け出て承認を受けた技術を、決められた施設基準のもとで実施するものです。患者の希望に基づいて、医師が必要性や合理性を認めた場合に実施されます。
一方、患者申出療養は、患者自身の希望が起点となって実施される治療です。国内未承認薬の利用や保険適用外の治療などを希望する患者が医療機関を通じて国に申し出ることで、一定の審査を経て保険診療との併用が認められる場合があります。2016年4月1日からスタートした比較的新しい制度で、2025年6月30日時点で承認されているのは5種類のみです。
先進医療特約とは?
先進医療特約とは、民間の医療保険やがん保険に付加できるオプションの保障で、先進医療を受けた際にかかる技術料をカバーできます。
先進医療特約ではどんな病気・けがをカバーできる?
先進医療特約の保障対象は、治療を受けた時点で厚生労働大臣が先進医療として認めている技術です。特定の病名が決まっているわけではなく、がん、不妊症、心疾患、眼科疾患など、先進医療として認定されているあらゆる技術が基本的に対象になります。
ここで押さえておきたいのは、「加入した時点」ではなく「治療を受けた時点」で先進医療に該当しているかどうかがポイントだということです。先進医療の対象は厚生労働省の見直しにより随時変更されます。加入時には先進医療だった技術が治療時には保険適用に変わっていたり、逆に新しい技術が先進医療に追加されたりすることがあります。
例えば、がんの陽子線治療・重粒子線治療はかつて先進医療の代表格でしたが、2024年に一部の疾患について保険適用に移行しました。
先進医療特約で受け取れる給付金
先進医療特約で受け取れる給付金には、主に「先進医療給付金」と「先進医療一時金」の2種類があります。
先進医療給付金は、先進医療にかかった技術料と同額が支払われるものです。実際にかかった費用の実費が保障されるしくみで、通算の上限額は保険会社によって異なりますが、1,000万円〜2,000万円としているところが一般的です。通算の受取額が上限に達した時点で特約は消滅します。
先進医療一時金は、先進医療を受けた際に一定額がまとまって支払われるもので、交通費や宿泊費などの費用に充てられます。先進医療給付金の10%〜20%程度、あるいは5万円〜10万円の定額が支払われるケースが一般的です。ただし、先進医療一時金が支払われない商品もあります。
医療保険とがん保険の先進医療特約は何が違う?
先進医療特約は医療保険にもがん保険にも付けられますが、保障範囲が異なります。
医療保険の先進医療特約は、基本的に厚生労働大臣が認めるすべての先進医療が対象です。一方、がん保険の先進医療特約は、がんに対する先進医療のみが保障対象です。がん保険にだけ先進医療特約を付けているという方は、保障範囲が限定されている可能性があるため、ご自身の契約内容を見直してみることをおすすめします。
先進医療特約は必要?3つのポイント
先進医療特約の必要性を考える上で重要な3つのポイントを解説します。
少ない保険料負担で高額な治療費に備えられる
十分な貯蓄がない方や、住宅ローン・教育費などで家計に余裕がない方は、先進医療特約を検討するとよいでしょう。
先進医療特約は月々数百円の保険料で、通算1,000万〜2,000万円の保障を受けられます。先進医療の中には1回で数百万円の技術料がかかるものもあり、これほど少ない負担で高額な医療費リスクに備えられる保障はそれほど多くありません。
なお、先進医療特約には「10年更新型」と「終身型」の2つがあります。10年更新型は先進医療の利用実績などに応じて10年ごとに保険料が改定されるため、負担が重くなる可能性があります。一方、終身型の場合、加入時の保険料は一生涯変わりません。
不妊治療も保障対象になる
これから妊活を考えている方や、既に不妊治療中で費用面に不安を感じている方は、医療保険の先進医療特約を検討すると良いでしょう。
2022年4月に体外受精や顕微授精が保険適用となったことをきっかけに、それまで保険適用外だった技術が先進医療として認められるケースが増えました。これにより、不妊治療における先進医療の利用者も大幅に増加しています。
以下は、不妊治療で利用できる主な先進医療と費用の目安です。
不妊治療における主な先進医療と費用目安
| 技術名 |
先進医療にかかる費用 |
| ヒアルロン酸を用いた生理学的精子選択術 |
24,000円 |
| タイムラプス撮像法による受精卵・胚培養 |
23,000円 |
| 子宮内細菌叢検査 |
56,000円 |
| 子宮内膜刺激法 |
40,000円 |
| 子宮内膜受容能検査(ERA) |
138,000円 |
| 子宮内膜擦過術(子宮内膜スクラッチ) |
10,000円 |
| 強拡大顕微鏡による形態良好精子の選別法 |
10,000円 |
| 子宮内フローラ検査 |
44,000円 |
| 子宮内膜受容能検査(ERPeak) |
138,000円 |
| 二段階胚移植法 |
47,000円 |
出典:こども家庭庁「不妊治療における先進医療の状況(令和4年8月1日現在)」
複数の技術を組み合わせるのが一般的で、1回の治療サイクルで合計10万〜20万円ほどになることも珍しくありません。治療が複数サイクルに及べば負担はさらに膨らみます。先進医療特約があれば、保険適用の基本治療に先進医療を組み合わせて妊娠率の向上を目指しつつ、経済的な負担も抑えやすくなります。
がん治療の選択肢を広げられる
万が一がんと診断されたときに標準治療だけでなく最新の治療法も選択肢に入れておきたい方は、先進医療特約を付けておくと安心です。
以下は、がん治療で利用できる主な先進医療と費用の目安です。
がん治療における主な先進医療と費用目安
出典:厚生労働省「先進医療の実績報告について」
がんの治療方針は種類や進行度合いによって大きく変わるため、どのような治療を受けるのか、事前に見通しを立てるのは難しい側面があります。経済的な理由で治療を諦めずに済むよう、先進医療特約で備えておく意義は大きいといえます。
先進医療でかかる医療費と考え方に応じて、先進医療特約の検討を
先進医療は全額が自己負担で、種類によっては高額な費用がかかることもあります。ただし、その範囲は医療の進歩とともに随時見直されています。
ご自身がどのような病気にリスクを感じるか?そのときに取れる治療の選択肢をどれくらい広くしておきたいか?といった考えに応じて、先進医療特約を付ける必要があるかどうかを検討してはいかがでしょうか?
※1 出典:厚生労働省「先進医療の概要について」
※ 出典:厚生労働省「患者申出療養の実績報告について」
※ 出典:厚生労働省 「中央社会保険医療協議会 総会(第641回) 議事次第」
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執筆者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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