医療保険の入院限度日数とは、1回の入院で入院給付金が支払われる日数の限度のことです。
医療保険に契約する際には、商品プランの選択時に入院限度日数を設定します。
では、入院限度日数は何日に設定するのがおすすめなのでしょうか?
実際の入院時の入院日数のデータと合わせて解説します。
医療保険の入院限度日数とは
入院日数に応じて給付金が支払われるタイプの医療保険では、通常、入院給付金を受け取れる入院日数に限度を設けています。
通常、1度の入院(1入院)ごとに「支払限度日数」が設けられており、契約時に定めた支払限度日数の範囲内で、入院した日数に対して医療保険から入院給付金日額が支払われます。
※医療保険では通常、1入院の支払限度日数とは別に、保険期間を通じて給付金が支払われる限度である「通算限度日数」も設けられているのが一般的です。
標準的なプランは60日型が中心
多くの医療保険では、1入院の支払限度日数を60日とするプラン(60日型)が標準的です。
ほかに、30日型、40日型、120日型、180日型などを選べる商品を扱う保険会社もあります。
年齢や性別、入院日額など、他の条件が同じであれば、支払限度日数が長いほど、保険料は高めになる傾向があります。
実際の入院日数はどれくらい?
では、実際に病院に入院した場合には、一般的に入院日数は何日くらいなのでしょうか?
厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況」によると、退院した患者の平均在院日数は28.4日でした。
医療技術の進歩や通院治療の充実などにより、近年、入院日数は短期化の傾向が続いています。
年齢別の入院日数
年齢による入院日数の違いもあるようです。
生命保険文化センター「2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行)」のデータをみると、20代から50代では直近の入院日数は「5~7日」が最も多くなっていますが、年代が上がるにつれて8日以上の入院の割合が高くなっています。
年齢が高くなるにつれて、長期の入院をする割合が高くなることがわかります。
一方で、「5日未満」の入院の割合も60歳代以下では2~3割前後となっています。
日帰り入院や短期間の入院も、一定割合いることがわかります。
年齢別の入院日数
出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行)を基に筆者作成
病気別の入院日数
病気の種類によっても、入院日数には違いがあるようです。
厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況」で、傷病別の平均在院日数をみると、入院日数が最も長いのは「統合失調症、統合失調症型障害及び妄想性障害」(569.5日)です。
「血管性及び詳細不明の認知症」(285.2日)、「アルツハイマー病」(279.6日)、「気分[感情]障害(躁うつ病を含む)」(118.2日)など、精神疾患では入院日数が長期化する傾向がうかがえます。
そのほか、おもな病気をみると、がん(悪性新生物)では14~15日前後、心疾患では約18日、糖尿病は約32日、脳血管疾患は約70日となっています。
病気別の入院日数
(単位:日)
傷病分類 |
日数 |
統合失調症,統合失調症型障害及び妄想性障害 |
569.5 |
血管性及び詳細不明の認知症 |
285.2 |
アルツハイマー病 |
279.6 |
気分[感情]障害(躁うつ病を含む) |
118.2 |
脳血管疾患 |
68.9 |
慢性腎臓病 |
57.3 |
慢性閉塞性肺疾患 |
49.8 |
結核 |
44.3 |
高血圧性疾患 |
41.6 |
骨折 |
35.4 |
循環器系の疾患 |
34.6 |
糖尿病 |
31.8 |
筋骨格系及び結合組織の疾患 |
29.6 |
総数 |
28.4 |
症状,徴候及び異常臨床所見・異常検査所見で他に分類されないもの |
28.2 |
皮膚及び皮下組織の疾患 |
26.9 |
肺炎 |
26 |
内分泌,栄養及び代謝疾患 |
24.7 |
肝疾患 |
22.3 |
脂質異常症 |
21.3 |
先天奇形,変形及び染色体異常 |
21.1 |
特殊目的用コード |
18.5 |
心疾患(高血圧性のものを除く) |
18.3 |
血液及び造血器の疾患並びに免疫機構の障害 |
18.1 |
結腸及び直腸の悪性新生物<腫瘍> |
15.3 |
胃の悪性新生物<腫瘍> |
14.7 |
悪性新生物<腫瘍> |
14.4 |
気管,気管支及び肺の悪性新生物<腫瘍> |
14.1 |
肝及び肝内胆管の悪性新生物<腫瘍> |
13.6 |
ウイルス性肝炎 |
13.4 |
周産期に発生した病態 |
11.1 |
消化器系の疾患 |
10.3 |
乳房の悪性新生物<腫瘍> |
9.4 |
健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用 |
9.1 |
喘息 |
8.2 |
妊娠,分娩及び産じょく |
7.4 |
耳及び乳様突起の疾患 |
5.4 |
眼及び付属器の疾患 |
3.2 |
歯肉炎及び歯周疾患 |
1.8 |
う蝕 |
1.1 |
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」を基に筆者作成
※上記表の「平均在院日数」とは、調査期間中の退院患者について病気別・年齢別条件によりそのときの入院期間を単純に平均化したものであり、病気別の完治までの平均入院日数ではありません。
入院限度日数は何日あればいい?
医療保険に契約する際には、入院限度日数は何日必要なのでしょうか?
健康状態や備えたいリスクに応じて考え方には個人差がありますが、次のようなポイントを参考にして検討するとよいかもしれません。
60日型なら平均的な入院に対応できる
上述の通り、入院日数の平均は約30日ですので、1入院の限度日数が30日型や60日型などの医療保険であれば、平均的な入院には対応できると考えられます。
長期間の入院に備えるなら、120日型や180日型など、支払限度日数が長いタイプを選ぶ方法もあります。
ただし、支払限度日数が長いと保険料の負担も割高になります。
短期間の入院には医療保険の保障、長期間の入院には公的保障や貯蓄を充てるなど、リスクに応じた備えがあると効率的でしょう。
3大疾病など特定の病気の入院日数が手厚いタイプもある
また、特定の病気に絞って長期入院に備える方法もあります。
医療保険の中には、がん、心疾患、脳血管疾患など、特定の病気については入院限度日数が長く設定されているものがあります。
そのほか、がんまたは3大疾病(がん、心疾患、脳血管疾患)による入院は無制限というタイプや、7大生活習慣病による入院は支払限度日数を拡大するといったタイプを選べるものもあります。
詳細は各商品やプランによって異なります。
疾病の範囲の例
※保険商品によって対象となる疾病の範囲や定義が上記とは異なる場合があります。商品詳細については「パンフレット」、「重要事項説明書(契約概要・注意喚起情報・その他重要なお知らせ)」、「ご契約のしおり・約款」等を必ずご覧ください。
「1入院」のルールに注意
医療保険を選ぶ際には、給付金が支払われる対象になる入院のカウント方法にも留意が必要です。
給付金が支払われる「1入院」とは、厳密には「1回の入院」とは限らないためです。
一般的に、医療保険では180日以内など一定期間内に同じ原因または関連する病気・ケガで2回以上入院した場合には、継続した1回の入院とみなされます。
1回目と2回目以降の入院日数が通算され、給付金を受け取れるのは合計の入院日数が「1入院の支払限度日数」に達するまでです。
支払限度日数を超えると、実際の入院日数がこれを超えていても、医療保険の給付金は受け取れません。
再入院をした際には2回目以降の入院も1入院としてまとめて扱われる可能性がありますので、契約内容をよく確認しておくことが大切です。
再発や再入院のリスクに備えたい場合には、支払限度日数が長いプランを選ぶという考え方もあるでしょう。
細かなルールは保険会社や保険商品によって異なりますので、必ず申込先の保険会社に確認しましょう。
もしもの入院を想定して医療保険の検討を
入院に備える医療保険に申し込む際には、入院給付金の支払限度日数を選択します。
実際の入院日数の傾向や、長期入院への備えの考え方に応じて選ぶとよいでしょう。
また、入院日数に関わらず一定額が給付される、一時金タイプの医療保険を選ぶ方法もあります。
もしもの入院の際、どのように保障を受けたいかを考えて選びたいですね。
出典:生命保険文化センター「2022(令和4)年度「生活保障に関する調査」(2023年3月発行)
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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