医療保険には、通院をしたときに給付を受けられる「通院特約」や「通院給付金」などをつけられるものがあります。
商品プランにセットされていたり、特約でオプション付加するのが一般的です。
では、通院特約は必要なのでしょうか?
通院にかかる費用や通院特約以外に備える方法と合わせて解説します。
医療保険の通院特約とは
医療保険の通院特約は、おもに入院や手術をした後に外来に通院して治療を受けたときに給付を受けられる保障です。
通院1日あたり3,000円や5,000円のように日額が支払われるタイプと、退院時に一時金で給付されるタイプ(「通院治療支援一時金」「退院療養給付金」など)があります。
保障対象は入院を伴う通院
通院特約で保障されるのは、原則として入院前後の所定の期間内の通院です。
入院の原因になった病気やケガの治療のために、退院後120日や180日以内に外来へ通院した場合に対象になるのが基本です。
ほとんどの通院特約は、病気やケガで入院・手術をしたことが給付の要件になっています。
つまり、入院・手術をしていない外来のみの治療には、一部の例外を除いて給付されません。
通院にはどんな費用がかかる?
では、実際に通院した場合にはどのような費用がかかるのでしょうか。
一般的には、通院時の診察代、検査代、薬代や通院のための交通費が考えられます。家族が付き添う場合には、家族の交通費などもかかります。
病気の種類や重症度、通院期間などによって、費用の負担は個人差があるでしょう。
また、通院治療を受けながら仕事や育児、家事などを両立するために、ベビーシッターや家事代行などの費用がかかったり、仕事を休むことによる収入減少などの経済的な負担も生じるケースもあるかもしれません。
通院特約は必要?
医療保険に通院特約を付加すると通院費用への備えを確保できますが、その分の保険料がかかります。
では、通院特約の必要性はどのように考えればよいでしょうか。検討の参考になるポイントを紹介します。
退院後に通院している人は約8割
近年は入院の短期化が進み、通院治療へ備えの必要性が強調されることがあります。
実際に厚生労働省の「令和5年(2023)患者調査の概況」によると、退院した患者の在院日数は減少傾向にあります。
年齢階級別にみた退院患者の平均在院日数の年次推移
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」
また、同調査で退院後に通院をした人の割合をみると、全年齢平均で約8割です。
特に70代前半までは、退院後に通院治療を続ける割合が多いことがわかります。
年齢別 退院患者の通院割合
(単位:%)
年齢 |
通院割合※ |
0歳 |
81.1 |
1~4歳 |
85.2 |
5~9歳 |
87.7 |
10~14歳 |
90.0 |
15~19歳 |
89.4 |
20~24歳 |
88.5 |
25~29歳 |
89.1 |
30~34歳 |
91.0 |
35~39歳 |
90.8 |
40~44歳 |
90.6 |
45~49歳 |
90.2 |
50~54歳 |
89.0 |
55~59歳 |
88.0 |
60~64歳 |
87.3 |
65~69歳 |
86.1 |
70~74歳 |
83.4 |
75~79歳 |
79.2 |
80~84歳 |
70.8 |
85~89歳 |
57.5 |
90歳以上 |
40.0 |
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」を基に筆者作成
※退院患者のうち、入院した病院または他院・診療所に通院した人の割合
退院後に外来へ通院して治療を続けるかどうかは、病気・ケガの種類や重症度など、個別の状況によって異なります。
しかしこのようなデータをみると、入院後も通院治療に費用がかかることを想定して、お金を備えておく必要を感じるかもしれません。
通院給付を受けられるのは一定期間
ただし、医療保険においては、通院給付を受けられるのは退院後一定期間に限られることは要注意です。
一般的に、退院後180日の通院のみが給付の対象で、給付金を受けられる日数にも30日までなどの限度があります。
医療保険の通院特約だけでは、すべての通院の費用をカバーできるわけではないため、それ以外の備えも検討しておくことが大切です。
細かなルールは保険会社や保険商品によって異なりますので、必ず申込先の保険会社に確認しましょう。
通院特約以外でも通院費用に備えられる?
では、通院治療にかかる費用には、どのような方法で備えられるでしょうか。
おもな方法を挙げてみましょう。
一時金タイプの入院給付金など
たとえば、一時金が支払われるタイプの医療保険では、入院時または退院時など所定のタイミングに、契約時に定めた一律の金額が給付されます。
入院日数にかかわらず一定額を受け取れるため、退院後の通院費用に充てることもできるかもしれません。
がん・心疾患・脳血管疾患など特定の病気を保障する特定疾病保険は、診断時など所定の状態に該当した際に、一時金を受け取れるものが多くなっています。
がん保険の治療給付金や診断一時金
がん保険では、手術、放射線治療、抗がん剤治療などへの給付については、入院の有無を問わないものがあります。
がんの治療では通院による抗がん剤治療が長期にわたるケースもあります。がん治療への備えに限られますが、がん保険で通院への保障を手厚く確保しておくという方法もあるでしょう。
保険料とのバランスを見て保障の検討を
医療保険を検討する際には、入院や手術の際にどのような保障を受けられるかと合わせて、退院後の通院への備えも考えておくことが大切です。
通院に関わる費用として、治療費や検査代だけでなく、交通費や家族の付き添いにかかる負担などを考慮すると通院の備えが必要になる場合もあるでしょう。
一方で通院特約は基本的に入院を伴う通院が対象であること、また保障対象の期間が限られていることも注意が必要です。
保険料とのバランスをみながら、通院特約以外の保障や貯蓄でまかなうことも含めて検討してみましょう。
出典:厚生労働省「令和5年(2023)患者調査の概況」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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