これから入院や手術の予定を控えているとき、保険に入っていないとかかるお金のことが不安に感じるかもしれません。では、入院や手術が決まってから生命保険や医療保険に入ることはできるのでしょうか?
保険に入っていない場合の対処法と合わせて解説します。
入院・手術が決まってからは基本、すぐに保険は入れない
生命保険や医療保険に加入する際には、基本的に健康に関する告知が必要です。
告知の内容から病気やケガのリスクが高いとみなされると保険に入れないか、保険料が高くなるなど所定の条件つきになるのが一般的です。
加入時に入院・手術予定があるかの告知が必要
保険の加入時に、健康状態について保険会社に伝える告知や診査では、現在の健康状態のほかこれから入院や手術の予定があるかどうかも問われるのが一般的です。
入院や手術の予定については下記のような質問(告知項目)があり、該当すると保険の条件上はリスクが高いとみなされて、基本的には生命保険(死亡保険)や医療保険に入れないことが多いようです。
また、近いうちに入院や手術の予定が決まっている場合のほか、今すでに入院中の場合でも、加入は難しいと考えてよいでしょう。
標準型の保険
告知には下記のような項目があり、該当すると通常の条件では加入が難しくなります。
※保険の種類や入院・手術の内容・状況によっては、まれに契約できる場合もあるようです。ただ、加入できる場合でも、特定部位の不担保や保険料の割増など条件付になる可能性があります。
持病がある人向けの緩和型保険
告知には下記のような項目があり、該当すると加入ができないことがあります。
告知不要の無選択型保険なら加入できる?
生命保険や医療保険のなかには、健康に関する告知が不要な無選択型の保険もあります。
告知や診査がなく、過去の入院歴や現在の健康状態にかかわらず契約できます。ですから、無選択型の保険であればこれから入院や手術の予定がある、または現在入院中でも加入できる可能性があります。
加入できても、加入後すぐの入院・手術には使えない
ただし、「無選択型」の医療保険は「待ち期間・待機期間」といって、契約から90日間など所定の期間中は病気での入院や手術は保障の対象外になっています。つまり、契約後3ヶ月頃までは病気で入院や手術をしても保険が支払われません。
また、待ち期間の開始(契約から91日目)より前に発病している病気については、契約日(責任開始日・保障が開始する日)から2年を過ぎていないと入院や手術に関する給付がされないという要件を定めていることもあります。
したがって、保険に加入はできても、加入後すぐの入院や手術には対応できない可能性が高いのです。(加えて、無選択型の保険は同条件の他の保険に比べて保険料が割高という注意点もあります。)
このように、生命保険の種類によって、これから入院するタイミングで保険に入れる可能性は異なります。
また、入れるかどうかだけでなく、保障を受けられるかどうかも重要です。以下はあくまでも一般的な傾向ですが、おおまかに次のようにまとめることができます。
保険の種類別 告知の要否と加入・給付の可能性
|
入院予定の 告知 |
入れる 可能性 |
今回の 入院での 給付の可能性 |
標準的な保険 |
要 |
△ |
× |
病気がある人 向けの保険 (引受基準 緩和型) |
要 |
× |
× |
病気がある人 向けの保険 (無選択型) |
不要 |
〇 |
× |
入院・手術後であれば保険に加入できる?
では、入院や手術をした後には、保険に入れるのでしょうか?入院や手術後の保険加入は、保険の種類や入院・手術からの経過期間によって、可否が変わってきます。
入院・手術直後の場合、無選択型の保険であれば告知がないため基本的に加入が可能です。
しかし標準型や緩和型の保険は入院や手術をした直後であまり時間が経過していないタイミングでは、基本的には直近の入院・手術に関する告知が必要で、加入できない可能性が高いです。
入院・手術後1~2年がたつと選択肢が広がる
緩和型の保険の場合、告知には下記のような項目がありますが、入院後・手術後から1~2年が経過するとここに該当しなくなります。
そのため、他の告知項目に該当しなければ加入できる可能性が出てきます。
入院手術後5年以上経過すると標準的な保険加入の可能性も
さらに、直近の入院や手術から5年以上が経過すると、がんなど特定の疾病を除き、標準的な保険でも告知項目で入院や手術有無を問われなくなります。
そのため、他の告知項目に該当しなければ加入できる可能性が出てきます。
ただし標準型の保険商品のなかでも、がんなど入院や手術から5年以上が経過していても、期間を問わずこれまでに一度でも診断されたことがあれば告知が必要なものもあります。
告知事項に該当すると、加入が難しいことがあります。
保険に入っていなくても、公的保険でも入院・手術費用の負担を軽減できる
これから入院や手術の予定があるときや入院・手術直後は、新規で保険に加入できる可能性が低くなってしまいます。
しかし医療費の負担については、公的な保険制度でも自己負担割合が1~3割に抑えられたり、1ヶ月の自己負担が高額になったときに利用できる高額療養費制度などがあります。
これらを活用すると医療費の負担がどれくらいになるのかを確認してから、民間の保険の加入を検討してもいいかもしれません。
入院・手術後の経過に合わせて見直しも
どうしても民間の保険が必要な場合には、まずは無選択型など加入できる保険に加入し、入院や手術、治療の経過に応じて再度他の選択肢を検討して見直すという方法もあります。
ただし無選択型の保険は同条件で加入する他の保険に比べて保険料が割高で、保障内容も一部制限されるという注意点もあります。
また、一般的に生命保険や医療保険は年齢が高いほど保険料も高くなる傾向があります。入院や手術から時間が経過すると、かりに加入が可能でも、新規契約する際の年齢も高くなっている分、保険料の水準が割高になるおそれもあります。
保険を検討する際には、入れるかどうかだけではなく保険料の負担もふまえて考えることが大切です。
入院・手術前後の保険加入は専門家に相談も
病気やケガの状態や入院・手術の内容など個別の細かな状況によって、保険に入れるかどうか、入れる保険の種類は変わることがあります。
ご自身やご家族の保険を探している場合には、保険会社などに入院や手術の内容を伝えて相談してみると、状況に合った保険が見つかるかもしれません。
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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