急に体調が悪くなった、すぐに入院が必要な病気が判明したなど、突然に入院が決まったとき、保険に入っていなかったら、病気と同時にお金のことも不安かもしれません。
では、入院が決まってから生命保険や医療保険には入れるのでしょうか? 保険以外で入院費用の負担を減らす方法と合わせて解説します。
入院が決まってからは基本、すぐに保険は入れない
生命保険や医療保険に加入するときには、健康状態に関する「告知」が必要です。持病がある、最近入院したなど、告知の内容から病気やケガのリスクが高いとみなされると保険に入れないか、保険料が高くなるなど所定の条件つきになるのが一般的です。
入院・手術の予定があるかは加入時に聞かれる
これから入院する予定があるときは、何らかの治療を要することがほとんどですから、保険の条件上はリスクが高いとみなされる傾向があります。基本的には、保険に入りにくいでしょう。
しかし、たとえば良性の腫瘍を取り除くなどでは、体調が悪いわけではなくても入院や手術をすることがあります。このようなケースで保険に加入するときも、原則は保険会社にその旨を告知しなければなりません。一般的な生命保険・医療保険の告知書には、「現在入院中、あるいは入院・手術・検査を勧められていますか」という質問が含まれているためです。この場合、まだ入院はしていなくても、入院を勧められていれば告知書に「はい」と記入しなければなりません。
一般的な生命保険では告知で「はい」と回答しても、必ず保険に加入できないとは限りませんが、これから入院する予定があれば加入は難しいようです。
例外的に、予定しているのが日帰り入院、ちょっとした異常やケガで急を要さない計画入院など軽微なケースなら、保険の種類や状況によってはまれに契約できる場合もあるようです。
ただその場合も条件付きの契約になる可能性があります。たとえば、眼の手術で入院する予定があって保険に契約し、契約後に眼に関わる病気やケガで入院すると保険の入院給付金はおりないものの、胃や心臓など直接に関係ない臓器の病気なら保険がおりるようなケースです。
病気がある人向けの保険でも、すぐの加入はむずかしい
保険の中には、最近に病気やケガをしたことがある人でも入りやすい「引受基準緩和型」という保険があります。標準的な保険に比べて告知事項が少なく、契約時点で病気やケガの治療中だったり、持病があったりしても入りやすいものです。
しかし、これから入院しようとするときには、「引受基準緩和型」の保険でも加入は難しいようです。
引受基準緩和型の保険は、告知で聞かれる質問への答えがすべて「いいえ」にならないと、原則として契約できませんが、告知事項に「今後3か月以内に、入院または手術の予定がありますか」のような内容が含まれるためです。これから入院する予定があると加入できないのです。
また、「最近3カ月以内に、医師から入院・手術・検査のいずれかを勧められたことがありますか」という質問が含まれるものもあるため、入院するように勧められただけでも、引受基準緩和型の保険には入れないおそれがあります。
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入院が決まった後に加入できても、すぐに保険は使えない
もうひとつ、病気をしたことがある、持病がある人が加入しやすい保険に「無選択型」という保険もあります。告知や審査がない保険で、過去の入院歴や現在の健康状態にかかわらず契約できます。ですから、これから入院する予定があっても入れます。
ただし、「無選択型」の医療保険は「待ち期間・待機期間」といって、契約から90日間は病気での入院や手術は保障の対象外になっています。つまり、契約後3カ月頃までは病気で入院をしても保険がおりないわけです。
また、待ち期間の開始(契約から91日目)より前に発病している病気については、契約日(責任開始日・保障が開始する日)から2年を過ぎていないと入院や手術に関する給付がおりないという要件を定めていることもあります。つまり、すでに病気にかかっていれば、年以上先の入院でないと保険はおりないのです。
ですから、近いうちに入院が決まっているとき、「無選択型」の保険であれば加入はできますが、直近の入院での保険の受け取りはあまり期待できないでしょう。
このように、生命保険の種類によって、これから入院するタイミングで保険に入れる可能性は異なります。あくまでも一般的な傾向ですが、おおまかには以下のようにまとめることができます。
|
入院予定の 告知 |
入れる 可能性 |
今回の 入院での 給付の可能性 |
標準的な保険 |
要 |
△ |
× |
病気がある人 向けの保険 (引受基準 緩和型) |
要 |
× |
× |
病気がある人 向けの保険 (無選択型) |
不要 |
〇 |
× |
諦めないで!保険に入っていなくても入院費用は抑えられる
すでに入院が決まっている段階からは、保険に入れないか、入れてもすぐに使えるわけではありません。しかし公的制度で、医療費の負担は一部抑えられます。
医療費は原則として自己負担3割で、かつ高額になってしまったら「高額療養費」という制度から、所定の金額が戻ってくるためです。70歳未満で年収約370万円から770万円の場合には、1カ月に8万円~9万円程度が自己負担の上限額になります。基本的には病院の窓口ではいったん請求額を払いますが、上限額を超えた分は所定の手続きをすると後から戻ってきます。
まずはこれらの公的な制度で自己負担を抑えることを中心に考え、退院後に落ち着いたら、その後の病気やケガへの備えについても改めて考えておくと安心ではないでしょうか。
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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