もしも亡くなった時に保険金が支払われる死亡保険は、生命保険の代表です。一般には死亡保険のことを「生命保険」と呼ぶこともあります。しかし、死亡保険の中にも複数の種類があります。
それぞれのしくみや、貯蓄との違いについて解説します。
死亡保険(生命保険)の種類はおもに4つ
生命保険の中でも、亡くなった時に保険金がおりるものを「死亡保険」といいます。また、死亡だけでなく高度障害への保障がついているものが多く、両眼の失明や、手足を失うなどの高度障害状態になったときに、死亡保険金と同額の保険金を受け取ることができます。
死亡保険には、保険期間の長さや保険金の支払われ方、満期保険金の有無などによってさらに大きく4つに分けられます。
終身保険
保険期間が一生涯(終身)にわたって続く保険です。契約後ずっと保障が続くため、被保険者がいつ亡くなっても死亡保険金が支払われます。したがって、契約すればいずれは必ず保険金を受け取ることになります。
このしくみ上、払い込んだ保険料の一部は将来の保険金受け取りに備えて、保険会社で積み立てられています。ですから、亡くなる前に保険を解約すると「解約返戻金・解約払戻金」が戻ってくることがあります。
戻ってくるお金があるため「貯蓄性のある保険」といわれ、その分、掛け捨ての保険に比べると払い込む保険料は高めになります。
定期保険
一定の期間に限り保障される保険です。「10年間」や「60歳まで」のように契約時に定めた保険期間は保障が続き、期間が満了すると保障はなくなります。
保険期間中にもしも死亡すれば保険金が支払われますが、支払事由に該当することがなければ、保険料は戻ってきません。このため「掛け捨ての保険」といわれます。
保険金額、性別や年齢などの条件が同じ終身保険に比べると、保険料は低めになります。
収入保障保険
万が一の死亡時に、家族への定期的な収入を保障する保険です。
死亡保険金は年金形式で分割して支払われるのが基本です。定期保険と同じように保険期間は契約時に定め、期間が満了すると保障はなくなります。ですから、掛け捨ての保険にあたります。
定期保険は保険期間中は保険金額が一定なのに対して、収入保障保険は万が一のときに受け取る年金額は一定であるものの、死亡時から保険期間の満了時(または最低保証期間)までに受け取る保険金の総額は、契約から年月が経つにつれて減っていくしくみになっています。
そのため、保険金額やその他の条件が同じ定期保険に比べて保険料が低めになります。
養老保険
死亡時には死亡保険金が支払われ、また保険期間の満了時に生存していたときには満期保険金が支払われる保険です。
保険期間は契約時に定めます。保険期間中に亡くなった場合でも、生存していた場合でも、保険金を受け取ることになりますので、貯蓄性のある保険にあたります。
保険金には払い込んだ保険料の一部が充てられますので、同じ条件の他の保険に比べて保険料は高めになります。
4つの保険種類を図にまとめると、下記のようになります。貯蓄性の高いものほど保険料は高く、貯蓄性の低いものや保障の期間に限りがあるものほど保険料が低くなります。
死亡保険(生命保険)の種類比較
死亡保険(生命保険)を活用するメリットとは?
このように、死亡保険には種類によって死亡時に保障されるしくみや、貯蓄性に違いがあります。では、万が一の死亡時に備える方法には自分でお金を貯める貯蓄もありますが、保険とどのような違いがあるのでしょうか?
契約するとすぐに保障が確保できる
特に大きな違いは、いざというときのお金を、いつからどれくらい確保できるかという点です。
預金や現金で貯蓄する場合には、お金を積み立てていくとまとまった金額になるまでには所定の期間がかかります。途中で死亡すると、確保できるのはその時点までに貯まった金額に限られます。
かりに毎月1万円の積み立てを始めて、1年後に亡くなってしまったら、12万円しか確保できません。
これに対して保険は、契約時に定めた保険金額が保障開始とともに確保されます。かりに毎月の保険料が1万円で保険金額が500万円という保険なら、契約から1年後に亡くなった場合に、払い込んだ保険料の総額が12万円であっても、500万円の保険金を受け取ることができます。
つまり契約してからすぐに、いざというときのためのまとまった金額を確保できるのが、保険の特徴です。これにより、たとえば家族や子どもを養っている人が、まだ十分に貯蓄が貯まっていなくても、万が一の死亡時に家族が生活していくためのお金を残してあげることができます。
貯蓄と保険の比較
保険種類の中から、ライフプランで備えたい保障を選べる
ライフプラン上どのようなお金を備えるかによって、保険の種類を使い分けることもできます。
たとえば亡くなった時のお葬式の費用は、若いときでも高齢になってからでもかかると考えられます。金額にも、それほど大きな違いはないでしょう。そのようなお金に備えるには、一例として、保障が生涯にわたって続く終身保険が向いています。
一方で、子どもの生活費や教育費は、子どもが独立するまでの期間にのみかかるのが一般的です。また必要な金額は、幼い子どもがいれば成長するまでの期間が長い分、期間全体での総額が高くなりますし、成長するにつれて独立までの残りの期間が短くなっていけば、総額は低くなります。
このようにライフプランの変化とともに必要性が変わるお金に備えるには、一定の保険期間のみ保障される定期保険や収入保障保険が向いています。
万が一の備えに、貯蓄と合わせて死亡保険(生命保険)の活用を
生命保険は「もしも死亡したら保険金がおりる」ということは広く知られていますが、いつ、どのように保障されるかは保険の種類によって異なります。
しくみの違いを知っておくと、ご自身やご家族のライフプランとニーズに合った保険を検討しやすくなります。貯蓄と合わせて、上手に使い分けたいですね。
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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