万が一の際の葬儀費用に備える方法の一つに、「葬儀保険」と呼ばれる生命保険があります。
葬儀保険はどのような保険なのでしょうか。一般的な生命保険・死亡保険などとの違いと合わせて解説します。
葬儀保険とは?
万が一の死亡時に備えられる生命保険には、「死亡保険」があります。
「葬儀保険」は、おもに葬儀費用に備えて加入する死亡保険のひとつです。
保障のしくみは死亡保険と同じですが、特に葬儀費用に絞って備えたいニーズに向けた商品として、「葬儀保険」という名称で販売されているものがあります。
※保険会社や保険の販売代理店によって、「葬儀保険」の定義が異なることがあります。
葬儀保険の特徴
葬儀保険は、被保険者の死亡時に死亡保険金が支払われます。
こうした基本的な仕組みは一般的な生命保険(死亡保険)と同じですが、葬儀費用に特化した備えとして活用しやすいように、おもに次のような特徴があります。
保険金額を少額から設定できる
葬儀保険には、保険金額を30万円、50万円など少額から設定できるものが多くなっています。
家族葬など小規模で費用を抑えたお葬式を想定している場合や、すでに生命保険に契約しているが、お葬式の費用だけに絞って別途でお金を準備したいニーズなどに対応しやすくなっています。
高齢でも入りやすい
生命保険には原則として加入できる年齢の上限がありますが、葬儀保険と呼ばれる保険の場合、加入できる上限年齢は85歳や89歳など、高齢でも入りやすい傾向があります。
加入した後には99歳まで更新可能で、最長100歳まで保障を続けられるものが多いようです(商品や加入年齢によって異なります)。
また、生命保険の契約時には基本的に健康に関する告知・診査が必要です。高齢期には持病があり生命保険の加入が難しいことがありますが、葬儀保険の一部には告知項目が少なく持病があっても入りやすい商品もあります。
告知項目が少ない「引受基準緩和型」や、告知のない「無告知型」というタイプです。
標準的な生命保険に比べて保険料が割高な傾向がありますが、持病があっても加入できる保険を探している人にとって、選択肢のひとつになるでしょう。
葬儀を行う際にスムーズに保険金を受け取りやすい
被保険者が亡くなった際、死亡保険金は通常、あらかじめ指定した受取人に支払われます。
葬儀保険の一部には、受取人ではなく、提携先の葬儀事業者へ保険金を直接支払うサービスがあり、保険金を速やかに葬儀費用に充てられます。
また、請求手続き後最短翌営業日など、短期間で保険金を受け取れるサービスがある葬儀保険もあります。
葬儀保険と生命保険(死亡保険)の違いは?
葬儀保険の基本的な仕組みは一般的な生命保険(死亡保険)と同じですので、お葬式にかかる費用は、必ずしも葬儀保険でなくても、他の生命保険で備えることもできます。
では、葬儀保険と生命保険(死亡保険)の違いは何でしょうか?
葬儀費用に活用しやすいサービスがある
葬儀保険には、特に葬儀費用として保険金を活用しやすいサービスが付いているものがあります。
保険金直接支払サービスは、保険会社から葬儀事業者へ保険金が直接支払われるため、葬儀費用として保険金を確実に充てやすくなっています。
ほかに、提携先の葬儀事業者の葬儀費用の割引、終活や相続の相談などに対応している葬儀保険もあります。
葬儀の前後に必要な準備や家族へのサポートにも活用できそうです。
掛け捨て型が多い
葬儀保険と呼ばれる保険の多くは、保険期間が1年などの定期型で、掛け捨ての死亡保険です。そのため、保障を継続する場合には1年ごとなど短期間での更新が必要です。
しかし更新時には更新時の年齢で保険料が再計算されるため、同じ保険金額で継続すると年齢が高くなるにつれ保険料が高額になる傾向があります。
申込時には、加入時の保険料だけではなく更新時の保険料も確認し、継続したときのイメージをつけておくと安心です。
一般的な生命保険には保険期間が終身のものや、保険料の一部が積み立てられる貯蓄型のタイプもあります。
更新や保険料の見直しなどのしくみが「葬儀保険」と異なるものもありますので、ご自身に合ったタイプを検討してみましょう。
葬儀に備える保険の特徴を知って、もしもへの備えを
葬儀保険は、万が一に備える生命保険(死亡保険)のなかでも、葬儀費用に活用しやすいしくみに工夫されているのが特徴です。
葬儀を執り行う際には、亡くなってから短期間で費用を用意する必要があります。
葬儀保険の特徴を知っておくと、いざというときにスムーズに対応できるかもしれません。
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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