更新:公開:2019年4月19日

【年金形式の場合】保険の受取りでかかる税金とは?収入保障保険の税金を専門家が解説

執筆者:
蟹山 淳子|ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者

監修者:
加藤 梨里|ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、健康経営エキスパートアドバイザー

収入保障保険の税金を専門家が解説

収入保障保険の保険金を受け取ったときには、税金がかかります。ただしそのかかり方や税金の金額は、受け取り方によって異なります。ここでは事例を通して、保険金の受け取り方それぞれでかかる税額を計算してみましょう。

このページでは、年金形式で受け取った場合の税額を紹介します。

収入保障保険を年金形で受け取ると、死亡時と受取時それぞれ税金がかかる

収入保障保険は、万が一の際におりる死亡保険金を一括で受け取ることもできますが、年金形式(実際には「年金月額」といって、月々支払われます)で受け取るケースが多いです。

この場合、死亡時には相続税、年金を受け取るときには所得税がかかります。

詳細な税額は家族構成や保険金以外の相続財産、保険金以外の収入の状況などによって異なります。ここでは、3人家族の夫が亡くなり、妻がパート、子どもが大学生または社会人だった場合の税額を計算してみましょう。

事例

Aさん一家は、夫Aさん、妻Bさん(パート)、子Cさんの3人家族です。Aさんは35歳の時、次のような収入保障保険に加入しました。

保険料負担者被保険者 (亡くなった人)受取人月払保険料保険金額保険期間
夫A夫A妻B4,425円15万円/月60歳

Aさんは、契約から10年後の45歳の時に亡くなりました。(保険料払込期間:120か月)

受け取ることができる保険金額

年金で受け取る場合:月15万円×15年(総受取見込み額2,700万円)
年金受給権評価額:2,160万円

※年金受給権評価額とは、年金受給権(年金を受け取る権利)を相続や贈与によって取得した場合の評価額のこと。次のいずれか多い額が年金受給権の評価額(年金の権利評価額)となります。

  • 解約返戻金の額
  • 年金に代えて一時金の給付を受けられる場合は一時金の金額
  • 予定利率等をもとに算出した金額

※予定利率とは、生命保険の保険料の計算等に用いられる基礎率の1つです

つまり、将来受け取る予定の年金総額ではなく、現在価値を評価額として課税の対象にするイメージです。

参考

一時金で受け取る場合:2,160万円
収入保障保険は、一時金で保険金を受け取ると、年金形式で受け取った場合の総額に比べて保険金の受取額は少なくなります。

事例に基づいて税額を計算

収入保障保険の保険金を年金で受け取る場合には、次の2段階で税金がかかります。

  1. 死亡時の相続税:年金受給権評価額に対して相続税
  2. 年金を受け取るとき:1で相続税の対象にならなかった受取額に対して、所得税(雑所得)

では、それぞれについてかかる税額を計算してみましょう。

死亡時の相続税

保険料を支払っていた夫Aさんが亡くなり、妻Bさんが受け取った場合、年金受給権評価額に対して相続税がかかります。夫Aさんの例では、年金受給権評価額は2,160万円です。ここに、一時金で受け取った場合と同じように相続税がかかります。

年金を受取る時の所得税

2年目以降には所得税がかかります。所得税は、次のステップで計算します。

  • 手順1.年金受け取り額のうち課税対象になる金額を求める
  • 手順2.支払った保険料相当分を課税対象から差し引き、「雑所得」の額を求める
  • 手順3.ほかの所得と合わせて所得税の税額を計算する

各ステップ順に、所得税の税額を計算してみましょう。

手順1.年金受け取り額のうち課税対象になる金額を求める

所得税の対象になるのは、受け取る年金のうち、年金受給権の相続税評価割合(一時金として受け取る場合の保険金額÷年金受け取り総額)に応じて決められる金額です。

今回のケースでは、相続税評価割合は、2,160万円÷2,700万円=80%になります。
相続税評価割合が75%超80%以下の場合、課税されるのは年金受け取り総額の20%です。ですので、

2,700万円(年金受け取り総額)×20%=540万円

に対して、2年目から最後に年金を受け取る15年目までに分けて、所得税(雑所得)が毎年かかります。
課税対象額:540万円

ただし、毎年同じ金額に税金がかかるのではありません。下の図のように、初年度は所得税がかかりません。2年目以降から少しずつ、受け取る保険金の一部が課税対象になり、その割合が増えていきます。

保険金への所得税課税イメージ
課税部分と非課税部分の図
課税部分と非課税部分の図

手順2.支払った保険料相当分を課税対象から差し引き「雑所得」の額を求める

手順1.で求めた課税対象額のうち、支払った保険料部分は、必要経費として差し引くことができます。課税対象となるのは、受け取る年金のうち上図のピンクの部分(年金受け取り総額の20%)なので、必要経費も払い込んだ保険料の20%になります。
これまでに払い込んだ保険料の総額は、

4,425円×12か月×10年= 53万1,000円です。このうち20%(53万1,000円×20%)の10万6,200円
が、年金受け取り額のうち所得税の対象となる部分の必要経費にあたります。

したがって、(1).で計算した540万円のうち、
540万円-10万6,200円= 529万3,800円が、実際に所得税を課税される対象額「雑所得」になります。
雑所得額:529万3,800円

これをもとに、実際に2年目から15年目までに受け取った年金のうち、所得税の対象となる金額は、以下の通りです。

受け取る保険金と所得税の対象額
 受け取る保険金 (年金)所得税の対象額
2年目180万円5万417円
3年目180万円10万834円
4年目180万円15万1,251円
5年目180万円20万1,669円
6年目180万円25万2,086円
7年目180万円30万2,503円
8年目180万円35万2,920円
9年目180万円40万3,337円
10年目180万円45万3,754円
11年目180万円50万4,171円
12年目180万円55万4,589円
13年目180万円60万5,006円
14年目180万円65万5,423円
15年目180万円70万5,840円

手順3.ほかの所得と合わせて所得税の税額を計算する

実際にどのくらいの税金を支払うかは、その年の保険金以外の収入額によって違ってきます。所得税の税額は他の所得と合わせて税率を決定して計算します。妻Bさんに、保険金以外の収入があれば、それも合わせて所得税を計算するのです。 ここからはさらに2つのケースに分けて見てみましょう。

  • 保険金の受け取り10年目、子Cさんが大学生の場合
  • 保険金の受け取り15年目、子Cさんが社会人の場合

保険金受け取り10年目の例

ここでは、収入保障保険の年金受取り10年目の時点での所得税の金額を計算してみましょう。このとき、妻Bさんにパート収入100万円と遺族年金100万円があり、子Cさんは大学生と仮定します。
他の収入に対する税金は、次のように取り扱われます。

前提条件
  • 遺族年金100万円:非課税(遺族年金には税金がかかりません)
  • パート収入100万円:収入額がそのまま課税対象になるのではなく、給与所得控除65万円を引いた後の100万円―65万円=35万円を、税の計算上で使う「給与所得」とします。

1.所得税の対象になる「所得の合計」を計算する

収入保障保険の年金180万円のうち、10年目の課税対象金額は45万3,754円です(手順2.の表参照)。 所得税の対象となるのは (収入保障保険の雑所得)+(給与所得) 45万3,754円 +(100-65)万円=80万3,754円………所得の合計になります。

2.所得から差し引く「控除」を計算する

これらの所得から、税額を計算する前には、妻Bさんの状況に応じた控除を差し引きます。もし、この年に妻Bさんにパート収入があり、また以下の控除を使えるとしたら、控除額の合計は150万円になります。

  • 基礎控除:38万円
  • 扶養控除:63万円(子Cさんが大学生(19歳~23歳未満の特定扶養親族)の場合)
  • 寡婦控除:27万円
  • 社会保険料控除: 22万円(国民年金、健康保険、介護保険の保険料支払い合計額)

38万円+63万円+27万円+22万円=150万円………控除額の合計 先ほど求めた所得の合計と、控除額の合計を比べると、 80万3,754円 < 150万円です。

3.この年にかかる所得税額を計算する

所得の合計(80万3,754円)よりも控除額(150万円)のほうが大きいので、税率をかける課税所得はゼロよりも小さくなります。したがって、この年の妻Bさんの所得税は、ゼロになります。

このケースで妻Bさんが納めるべき所得税=0円

保険金受け取り15年目の例

ここでは、収入保障保険の年金受取り15年目の時点での所得税の金額を計算してみましょう。このとき、妻Bさんにパート収入100万円と遺族年金100万円があり、子Cさんは社会人と仮定します。
他の収入に対する税金は、次のように取り扱われます。

前提条件
  • 遺族年金100万円:非課税(遺族年金には税金がかかりません)
  • パート収入100万円:収入額がそのまま課税対象になるのではなく、給与所得控除65万円を引いた後の100万円―65万円=35万円を、税の計算上で使う「給与所得」とします。

1.所得税の対象になる「所得の合計」を計算する

収入保障保険の年金180万円のうち、15年目の課税対象額は70万5,840円です(手順2.の表参照)。 所得税の対象となるのは (収入保障保険の雑所得)+(給与所得) 70万5,840円 +(100-65)万円=105万5,840円………所得の合計になります。

2.所得から差し引く「控除」を計算する

この所得の合計から、税額を計算する前には、妻Bさんの状況に応じた控除を差し引きます。かりにこの年に使える控除が以下の通りなら、控除額の合計は60万円になります。

  • 基礎控除:38万円
  • 社会保険料控除: 22万円(国民年金、健康保険、介護保険の保険料支払い合計額)

38万円+22万円=60万円……………控除額の合計

3.この年にかかる所得税額を計算する

手順3B-1で求めた課税所得と、手順3B-2の控除額の合計を比べると、 105万5,840円 < 60万円 です。控除額よりも所得の合計が大きいので、超えた部分に所得税がかかります。
105万5,840円-60万円=45万5,840円………課税される所得額になります。

45万5,840円の場合の税率は5%です。すると45万7,196円×5%=2万2,859円……納める所得税額になります。

この年に妻Bさんが納めるべき所得税額:2万2,859円

年金形式の場合、収入や控除により税額が決まる

このように、収入保障保険を年金形式で受け取るときには、受け取った年のほかの収入や、使える控除の状況によって、所得税額が決まります。 Aのケースでは、所得税の対象になる「所得の合計」よりも、差し引く「控除」のほうが大きいため、所得税の負担はゼロになります。また、Bのケースでは、受け取り年金部分だけで見れば、所得税の対象額が毎年高くなり、負担する所得税額も高くなります。つまり年金を受け取る最後の年(この例なら15年目)の所得税額が、最も高くなります。

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※この記事は2018月8日時点の法令等に基づいて執筆しています。

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 蟹山 淳子

    蟹山 淳子(かにやま じゅんこ)

    蟹山FPオフィス代表
    CFP(R)認定者、住宅ローンアドバイザー、宅地建物取引士
    子育て、住宅取得、介護、看取り、相続などの経験を活かし、「お金」にまつわる疑問や悩みを解決するための相談、セミナー講師、コラム執筆などを行う。2016年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。

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