子どもの教育費への備えに活用できる生命保険のひとつに、学資保険があります。
では、学資保険にはどのようなメリットがあるのでしょうか?学資保険の必要性や、教育費のためにいくら準備するかと合わせて考えてみましょう。
学資保険を利用するメリット・必要性は?
学資保険は、子どもの入学や進学に合わせて学資金(祝金)や満期金を受け取ることができる貯蓄型の生命保険です。
教育費を準備する方法には、学資保険以外にも、貯蓄性のある生命保険、預貯金、運用などがあります。
この中で学資保険を活用すると、どのようなメリットがあるのでしょうか?
教育資金を計画的に準備できる
学資保険は、満期を迎えると契約時に定めた満期保険金を受け取ることができます。
また、所定の年齢や中学校や高校の進学時などに合わせて、学資金(祝金)を受け取れるものもあります。
このため、子どもの入学や進学時期に向けて計画的に教育資金を積み立てられます。
保険料は、預金口座引き落としやクレジットカード払いなどで払い込むのが一般的です。お金を積み立てる方法には預貯金などもありますが、生命保険を活用することで、定期的・自動的に積立をするしくみを作ることができます。
また、貯蓄型の生命保険には養老保険や終身保険などもありますが、学資保険は子どもを被保険者として契約します。
学資保険を利用することで、子どものためのお金を明確に区別して管理できるのもメリットといえるかもしれません。
親が亡くなったときに保険料の支払いが免除され、資金も残せる
学資保険の保険期間中に、親などの契約者が万が一死亡または高度障害状態になった場合には、その後の保険料払込が免除されます。払込が免除されても、契約時に定めた学資金や満期金は予定通りに受け取れます。
また、育英年金が付いたタイプの学資保険では、親などの契約者が死亡した場合に、学資金や満期金とは別に、満期まで年金を受け取れます。
つまり学資保険は、親の万が一の場合に子どもにお金を遺す、死亡保障機能を兼ね備えています。
預貯金などでお金を積み立てる場合、途中で死亡などに見舞われると予定通りに積立ができなくなってしまう可能性があります。
このようなリスクに備える必要性がある場合に、学資保険を活用できます。
学資保険のデメリットは?
学資保険の必要性を検討する際には、メリットと合わせてデメリットも確認しておきましょう。
途中で解約すると元本割れのリスクがある
満期を迎える前や保険料の払込が満了する前に保険を解約した場合には、受け取る解約返戻金が、払い込んだ保険料の総額を下回ることがあります。
払い込んだ保険料に対する受取額の割合を「返戻率(戻り率)」といいますが、これが100%を下回る状態です。
返戻率の計算式
育英年金や子どもの医療特約などが付いている商品プランは特に保障性が高いため、貯蓄性を重視したプランに比べて解約時に元本割れするリスクがあります。
保険の見積もり時には、設計書やシミュレーションなどで払込保険料、解約返戻金、返戻率の推移をしっかり確認しておくことが大切です。
インフレリスクに弱い傾向がある
返戻率が100%を上回ると、払い込んだ保険料の総額を上回るお金を受け取ることができます。
ただし、返戻率はあくまでも保険料を払い込んだ時点の金額(貨幣価値)を基準としていることには留意が必要です。
保険の契約時と受取時の物価が同じであれば、返戻率が100%を超えるとお金が増えたことになりますが、インフレによって物価が上がると、実質的な受取は想定よりも少なくなる可能性があります。
インフレのときには学校の入学金や授業料などが値上げされるリスクがあります。
しかし、学資保険の返戻率は契約時に約束された予定利率をもとに決まっていますので、原則として途中で受取額が増えることはありません。
これは、学資保険以外の貯蓄性のある生命保険(利率変動型、配当金のあるタイプなどを除く)でも同様です。
子どもの教育費は10年や18年など長期間かけて準備するものですので、将来のインフレリスクを考慮しておくことも重要です。
学資保険はいくら必要?
学資保険に契約する場合には、受取額をいくらに設定する必要があるのでしょうか?
学資保険の受け取りはおもに、小学校~高校までの入学や進学時などに受け取る学資金・祝金と、大学入学や卒業時などに受け取る満期金があります。
子どもの進路やライフプランに応じて、学資金や満期金の金額を設定するとよいでしょう。
中学・高校などの入学・進学費用に備える場合
幼稚園から高校までにかかる子どもの学習費は、すべて公立に通った場合で平均約600万円、すべて私立に通った場合で平均約2,000万円です※1。
しかし、これは15年間でかかる費用の総額ですから、この金額を一度にまとめて準備する必要はありません。また、無償化など公的な補助制度を活用できることもあります。
ですから、自助努力で準備する必要性の高いお金を中心に、学資保険の学資金(祝金)を充てられるようにするとよいのではないでしょうか。
参考として、中学校1年生時の学習費総額(年間)は公立の場合で約55万円、私立で約190万円、高校1年生時(全日制)は公立で約70万円、私立で約120万円です※1。
また、入学のタイミングでは、入学金のほか、入学までに受験料や制服代などがかかることがあります。さらに、スポーツや芸術などの部活動を始めて、道具の準備などに初期費用がかかる場合もあります。
新生活でかかるさまざまな諸費用に、学資保険の学資金を充てることもできるでしょう。
大学などの入学・在学費用に備える場合
大学や専門学校などでは、高校までよりも費用の負担が重くなるのが一般的です。
奨学金などの補助制度を利用できる場合もありますが、進路によっては家計の負担が重くなることも考えられます。
このため学資保険では、満期を子どもの大学入学時期に合わせられるプランが多くなっています。
大学に進学する場合、入学時には入学金、授業料、施設設備費(おもに私立の場合)などの初年度納入金が必要です。
私立・国公立や学部により、入学金には30万円前後、授業料は50~100万円前後がかかります※2。合計すると、初年度には80~130万円程度のお金がかかるのが平均的といえます。満期保険金額の目安にしてもよいでしょう。
また、在学中にも費用がかかります。年間の在学費用は、国公立大学の場合で平均約104万円、私立大学文系で約152万円、私立大学理系で約183万円です※3。
卒業までに毎年かかるこうした在学費用に備えて、18歳から22歳までの間に毎年学資金を受け取れるプランを選べる学資保険もあります。
教育費は学資保険+貯蓄などで計画的に準備を
学資保険のメリットは、子どもの進学時期に合わせて計画的に教育費を準備できることです。
万が一の親の死亡や高度障害への保障を確保することもできます。
ただし、所定の受取時期や満期時以外に自由に引き出すのは難しいなどの注意点もあります。
また、大学などへの進学にはまとまった金額が必要で、必ずしも学資保険だけで全額を充てられるとは言い切れません。
インフレなど経済環境の変化やライフプランの変化によって、十数年後の子どもの進学時には想定以上のお金が必要になる場合もあります。
学資保険に限らず、貯蓄などほかの方法と合わせて準備をしておくと安心です。
※1 出典:文部科学省「子供の学習費調査」(令和5年度)
※2 出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
※3 出典:日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査」(2021年度)
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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