子どもが自転車で事故を起こしてしまったら、親はどのように対応すればいいのでしょうか?また、どんな保険を活用できるのでしょうか?
子どもが自転車で加害事故を起こしてしまったときの対応と保険について解説します。
子どもが自転車事故を起こしたら?
一般的に、自転車事故を起こして加害者になってしまったときには、法を犯したことによる「刑事上の責任」と、被害者に対して賠償責任を負う「民事上の責任」を問われますが、未成年の子どもの場合には刑事上の処罰を受けることはほとんどないようです。
相手のケガや車の修理など賠償義務を負うことも
しかし、相手にけがをさせた、ものを壊したといった損害を生じさせた場合には、子どもでも民事上の損害賠償責任を負うのが原則です。人にぶつかった場合には被害者のケガの治療費、車にぶつかった場合には車の修理費用などについて、過失割合に応じて負担する可能性があります。
事故の被害者が死亡してしまったり重い後遺障害が残ってしまったりすると、子どもの自転車事故でも数千万円や1億円近い賠償責任を負うケースもあります。そんなときには、子どもに代わって親が高額な賠償金を支払っていくおそれがあります。
自転車事故の賠償費用に対応できる保険
子どもが自転車事故を起こしたら上記のような責任を負うおそれがありますが、民事上の賠償責任にかかる費用は民間の保険で対応できることがあります。
おもに次のような保険や制度で、子どもの自転車事故での賠償費用が保険金として支払われる補償を受けられるかもしれません。
自転車保険
自転車保険に加入していれば、賠償責任の補償がついていることが多いです。相手のケガの治療費や慰謝料、相手のモノを壊した場合にはその修理費用などが対象になり、賠償金額が保険金として支払われます。
子ども本人が加入している自転車保険がなくても、親が自転車保険に加入していれば、子どもの賠償責任も保険金の支払対象になる可能性があります。
学校の団体保険(総合補償制度)
子どもの学校やPTAを通して、団体保険や総合保障制度に加入していれば、そこに賠償責任補償がついていることがあります。
学校内外、登下校中のほか、休みの日など日常生活で自転車事故を起こしてしまった場合も、賠償責任補償の対象になるものがほとんどです。
学校などを通して加入するものですが、事故が起きたときの窓口は担当の保険会社などが対応しています。加入時に案内されるフリーダイヤルなどの事故受付窓口に、確認や相談をしてみましょう。
自動車保険
クルマに乗るご家庭なら、親が加入している自動車保険を確認してみましょう。契約に個人賠償責任保険・日常賠償責任補償といった特約が付いていれば、その補償で子どもの自転車事故での賠償に対応できることがあります。
火災保険
自宅の火災保険にも、特約で個人賠償責任保険・日常賠償責任補償がついている場合があります。マイホームに限らず賃貸用の火災保険にも、特約としてついていることがあります。
その他の保険
傷害保険や勤務先の団体保険などに、個人賠償責任補償がセットされていることもあります。申込時のパンフレットや保険証券などで確認してみましょう。
クレジットカード
一部のクレジットカードでは、会員向けの付帯サービスとして個人賠償責任保険が付いていることがあります。また、カード会社を通して契約する個人賠償責任保険もあります。そういった保険で、子どもの自転車事故の賠償が補償されることがあります。
TSマーク
子どもが運転していた自転車に「TSマーク」というステッカーが貼ってあれば、そこに付帯している賠償責任補償の対象になるかもしれません。自転車の購入時や点検時に車体に貼ってもらうステッカーです。有効期限がありますので、日付を確認してみましょう。期限内であれば、専用の事故受付センターに電話をして手続きができます。
示談交渉サービスで事故解決のサポートを受けられることも
これらの保険には、補償とは別に示談交渉サービスがついていることもあります。保険会社に連絡すると、事故の相手方との示談交渉を代行してもらえます。
示談交渉サービスが付いていない保険では、基本的には自身で相手との交渉を進めることになりますが、契約している保険会社などに連絡をすると、示談交渉の進め方や必要書類などについて相談に乗ってもらえたり、アドバイスを受けられたりする場合もありますので、事故対応の際には一度連絡してみてもいいでしょう。
被害者への賠償には加入中の保険で対応できることも
子どもが自転車事故を起こしたら、親が相手の人や車など被害者への対応に追われるケースが多いです。突然のことに動揺してしまうかもしれません。お金の面での負担は、既に加入している保険で対応できることがあります。
また、一部の自転車保険や学校の補償制度などでは、賠償責任保険とは別に、事故の加害者になったときの示談交渉サービスがついている場合もあります。
落ち着いて、まずは契約中の保険の内容を確認したり、保険会社に相談してみたりするといいのではないでしょうか。
-
執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
気になった記事をシェアしよう!