地震による倒壊や火災、津波などの損害に備える地震保険。建物と家財それぞれに契約することができますが、家財へも地震保険をつけておく必要があるのでしょうか?
家財を対象にした地震保険の内容と必要性について解説します。
家財の地震保険でどれくらい補償される?
地震保険では、地震、噴火、またはこれらが原因で発生した火災や津波で損害を受けたときに補償されます。建物と家財それぞれに対して加入しますが、家財についてはおもに次のようなときに補償されます。
※ただし、通貨、有価証券、自動車、1個または1組の価額が30万円を超える貴金属、宝石や美術品などは、地震保険の対象になりません。また、店舗や事務所専用として用いられている建物に収容されている家財も、地震保険の対象になりません。
地震保険の補償額
地震保険は必ず火災保険とセットで契約することになっており、設定できる金額には上限があります。
火災保険の保険金額の30~50%の範囲内となっており、家財を対象に加入する場合には家財の火災保険の保険金額が基準になります。たとえば火災保険で家財の保険金を1,000万円として契約している場合、家財に対して加入できる地震保険金額は300万円~500万円ということになります。
また、家財の地震保険には保険金額1,000万円までという限度額もあります。
支払われる保険金
地震により被災したときには、地震保険から損害の程度に応じて保険金が支払われます。
家財の損害の程度は建物の損害状況とは別に、「全損」「大半損」「小半損」「一部損」の4段階の区分で認定されます。損害の規模に応じて保険金額の100%~5%が、地震保険から支払われます。
支払保険金
損害の程度 |
支払保険金 |
全損 |
保険金額の100% (時価の100%が限度) |
大半損 |
保険金額の60% (時価の60%が限度) |
小半損 |
保険金額の30% (時価の30%が限度) |
一部損 |
保険金額の5% (時価の5%が限度) |
家財にも地震保険は必要?
地震保険は家財の火災保険とセットで契約します。基本的には家財の火災保険には地震保険がセットされていますが、希望により加入時に地震保険を外すこともできます。
また、地震保険は建物と家財それぞれで契約するものですが、建物だけに地震保険を付帯することもできます。建物と家財の両方に地震保険を付けると年間の保険料も高くなるので、家財には地震保険をかけなくてもいいのではと思うことがあるかもしれません。
家財への地震保険の必要性を考えてみましょう。
生活再建費用に広く活用できる
地震保険は、大規模な震災が発生したときに生活再建できることを目的に、民間の保険会社と政府の共同で運営されています。支払われる保険金は特定の使い道を限定せずに、広く生活再建のために利用することができます。
大きな地震が発生した際、自宅の中にある洗濯機や冷蔵庫、テレビやパソコンなどの家電類、ベッド、食卓テーブル、椅子、食器棚などの家財道具が壊れたり無くなったりしてしまったら、日常生活を取り戻すにはこれらを再購入したり修繕したりする費用がかかります。すべてをそろえるには多額の費用が掛かるおそれがあります。
家財の地震保険に契約していれば、保険金を家具や家電などの購入費用にあてることができます。そのほか、自宅が損壊して住めなくなってしまった場合の仮住まいの費用や引っ越し費用、生活費としても幅広く活用することができます。
地震での被災時に生活を再建する支えとして、家財に地震保険を契約しておくと安心です。
建物とは別に地震への備えを確保できる
住宅の中にある家財の損害に備えるには、建物とは別に家財を対象に地震保険に契約する必要があります。また地震保険の保険金は、建物と家財でそれぞれに損害の程度が認定されて支払われます。
かりに建物の損害はそれほど大きくないが家財の損害額が大きい場合、建物だけの地震保険では支払われる保険金額が十分ではない恐れがありますが、家財を対象に地震保険に契約していれば、家財の損害状態に応じて保険金が支払われます。
地震保険の保険料はいくら?
家財の地震保険の保険料は、家財が収容されている建物の所在地や建物の構造ごとに決まっています。条件が同じなら、建物と家財の保険料は同じです。
同じ地域・保険金額であれば、耐火性能の高い鉄骨・コンクリート造の建物のほうが、木造の建物よりも保険料は低くなっています。
政府が運営に関わる公共性の高い保険のため、地域・建物構造が同じであれば保険料は一律で、どこの保険会社で契約しても同額です。持家か賃貸かによる保険料の違いもありません。
保険金額500万円あたり、保険期間1年あたりの地震保険料(割引適用なし)
都道 府県 |
イ構造
(主として鉄骨・ コンクリート 造建物等) |
ロ構造
(主として木造 建物等※) |
北海道 |
3,650円 |
5,600円 |
青森県 |
3,650円 |
5,600円 |
岩手県 |
3,650円 |
5,600円 |
宮城県 |
5,800円 |
9,750円 |
秋田県 |
3,650円 |
5,600円 |
山形県 |
3,650円 |
5,600円 |
福島県 |
5,800円 |
9,750円 |
茨城県 |
11,500円 |
20,550円 |
栃木県 |
3,650円 |
5,600円 |
群馬県 |
3,650円 |
5,600円 |
埼玉県 |
13,250円 |
20,550円 |
千葉県 |
13,750円 |
20,550円 |
東京都 |
13,750円 |
20,550円 |
神奈川県 |
13,750円 |
20,550円 |
新潟県 |
3,650円 |
5,600円 |
富山県 |
3,650円 |
5,600円 |
石川県 |
3,650円 |
5,600円 |
福井県 |
3,650円 |
5,600円 |
山梨県 |
5,800円 |
9,750円 |
長野県 |
3,650円 |
5,600円 |
岐阜県 |
3,650円 |
5,600円 |
静岡県 |
13,750円 |
20,550円 |
愛知県 |
5,800円 |
9,750円 |
三重県 |
5,800円 |
9,750円 |
滋賀県 |
3,650円 |
5,600円 |
京都府 |
3,650円 |
5,600円 |
大阪府 |
5,800円 |
9,750円 |
兵庫県 |
3,650円 |
5,600円 |
奈良県 |
3,650円 |
5,600円 |
和歌山県 |
5,800円 |
9,750円 |
鳥取県 |
3,650円 |
5,600円 |
島根県 |
3,650円 |
5,600円 |
岡山県 |
3,650円 |
5,600円 |
広島県 |
3,650円 |
5,600円 |
山口県 |
3,650円 |
5,600円 |
徳島県 |
11,500円 |
20,550円 |
香川県 |
5,800円 |
9,750円 |
愛媛県 |
5,800円 |
9,750円 |
高知県 |
11,500円 |
20,550円 |
福岡県 |
3,650円 |
5,600円 |
佐賀県 |
3,650円 |
5,600円 |
長崎県 |
3,650円 |
5,600円 |
熊本県 |
3,650円 |
5,600円 |
大分県 |
3,650円 |
5,600円 |
宮崎県 |
5,800円 |
9,750円 |
鹿児島県 |
3,650円 |
5,600円 |
沖縄県 |
5,800円 |
9,750円 |
※「耐火建築物」、「準耐火建築物」および「省令準耐火建物」等に該当する場合は「イ構造」となります。
出典:財務省「地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)」
地震保険料の割引制度
家財を収容している建物の免震性能や耐震性能が所定の基準を満たしていると、所定の割引制度があります。以下の4種類の割引があり、住宅の性能に応じていずれかを適用することができます。
出典:損害保険料率算出機構「地震保険基準料率のあらまし」
地震保険料の所得控除制度
地震保険に契約して保険料を支払った年には、申告をすることでその年の所得税や住民税で所得控除を受けることができます。
「地震保険料控除」という所得控除の制度で、家財を対象に契約する地震保険も対象になります。年末調整または確定申告で申告することで、課税される所得の一部が軽減されます。
軽減される所得は、所得税では支払った地震保険料の全額・最高50,000円まで、住民税では地震保険料の2分の1・最高25,000円までです。
地震保険料控除(所得税の場合)
年間の地震保険料の合計 |
控除額 |
50,000円以下 |
支払金額の全額 |
50,000円超 |
一律50,000円 |
※2006年以前に契約した一部の損害保険がある場合には、控除額が異なる場合があります。
地震保険料控除を適用するには、契約先の保険会社から発行される控除証明書が必要です。年末調整の場合には勤務先に、確定申告の場合には確定申告書に添付して税務署に提出します。
被災時に準備できる資金と合わせて地震保険の検討を
万が一大地震に見舞われると、住宅の建物だけではなく家具や家電など日常生活に必要な持ち物が被害に遭う恐れがあります。
ひとつひとつは高額でなくても、すべてを修理したり再購入したりすれば大きな金額になる恐れがあります。地震保険を検討する際には、生活再建に備えて家財にも補償を付けておくと安心です。
自宅の中にある自分や家族の持ち物を確認して、検討してみましょう。
今みんなが選んでいる保険は?
もっと詳しく商品一覧で比較
※1 出典:財務省「地震保険の基本料率(令和4年10月1日以降保険始期の地震保険契約)」
※2 出典:損害保険料率算出機構「地震保険基準料率のあらまし」
※3 出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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