電気自動車はどれくらい持つのか【後編】バッテリーの劣化原因と長持ちさせる方法
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
バッテリーの大敵は熱!運転と充電時の日々の工夫で長持ちさせる
電気自動車はどれくらい持つのか【前編】バッテリーの寿命はどれくらい?では、バッテリーの寿命についてお話しました。
これはどの製品にも言えることですが、性能がどれだけ優れていたとしても、その寿命は使い方によって大きく左右されます。
EVもまた然り。どれだけバッテリーの性能が高くても、適切ではない使い方をしていれば、70%を切る日はどんどん早まってきます。
というわけでここでは、ほとんどのEVで採用されているリチウムイオンバッテリーを前提として、バッテリーの劣化を防ぐポイントを考えてみましょう。
熱を避ける!暑い日の運転方法
まず、バッテリーの大敵は熱です。
紫外線から肌を守ることと、熱からバッテリーを守ることはよく似ていて、両者とも残念ながら加齢による劣化は防げません(笑)。
しかし少しだけ気を遣って行動すれば、その劣化スピードを緩めることはできます。
たとえば夏は、駐車場などもできるだけ直射日光を避け、涼しいところに駐車する。暑すぎる日は、運転を控えるというのは難しいかもしれませんが、少なくとも充電は控えてみる。夜間充電は料金も安いですし、バッテリーにも負担は少なくなると思います。
また急な坂道を上った後の急加速といった、バッテリーに負荷が大きく掛かる運転を控えてみる。これはEVに限らず、ガソリン車でも駆動系への負担を少なくする効果があります。
バッテリーの負荷を下げる充電方法
次に充電方法です。急速充電器は負荷がかかるため、オススメは普通充電です。
とはいっても短時間で終わる急速充電は便利だし、外出先では助かりますよね。ちなみに急速充電すると100%ではなく、約80%で充電が完了するのもこのためです。
よって家では、ゆっくりと普通充電してあげましょう。
また満充電に近い状態で繰り返し充電することを避けると、バッテリーが長持ちするとも言われています。
ただ電池切れは不安のもとですから、こまめに充電したくなるのは人情ですよね。だからこそ一日の航続距離を把握しておくと、便利なのです。
そして充電は、バッテリーが冷えるのを待ってから行うのがベターです。
さらに満充電状態で長期間放置するのも、蓄電能力低下につながるということを覚えておけば完璧!?
クルマへの気遣いで愛車と長く付き合あう
と、ここまで並べてみましたが、正直面倒くさい……。そして難しい(笑)。
その思いをボクも否定はしません。
つまりEVはまだクルマとしての歴史が浅いため、乗り手側が少し気を遣ってあげることが重要。クルマとしてはまだ赤ちゃんなのです。
そしてこうした初期段階の不便さは、技術の進歩と共に解決されて行くでしょう。そういう意味ではいまEVに乗っていると、進化するごとにそのありがたみを味わうことができるかもしれませんね。
まとめるとバッテリーが一番苦手とするのは「熱」なので、ここに少しだけ気を遣ってあげれば良いでしょう。何度も言いますがクルマの扱いはお肌のお手入れと似ていて、この「少しだけ」という考え方を学ぶ一番の先生は、奥様かもしれません(笑)。
毎年少しずつ蓄電能力が低下するのはバッテリーの特性なので、正直防ぎようがありません。
でも、使い方次第でその減りを緩やかにし、長く乗ることができると捉えれば、今までの愛車と同じように付き合えるのではないでしょうか。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。