高齢の両親におすすめのクルマは?【後編】クルマ選びのポイント2つ
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
2つのポイントで高齢の両親にぴったりのクルマを選ぼう
前回は、高齢者のクルマ選びには「サポカー対象車」がマストであることをご説明しました。
とはいっても、補助金の条件のひとつである「衝突被害軽減ブレーキ」の新車搭載率は、既に約78%にも上ります(国内乗用車メーカー・2017年時点)。
そして現在はもっと増えていることでしょう。トヨタだけを見ても、2020年2月現在でサポカー対象車種は40車種以上が該当します。
となると、逆にどうやってクルマを絞ればいいの? という話題が次に上がってくると思います。
1.安全装備をどのレベルまで求めるか
そこでひとつ目のポイントとなるのが、“さらに踏み込んだ安全機能をつけるか?”ということ。もちろん機能が充実すれば一般的に値段も上がりますから、そこはバランスと相談です。
例えば、高速道路や自動車専用道路を走る機会が多い高齢ドライバーであれば、前走車と常に一定の車間距離をとってくれるACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)は有効です。
車線をはみ出しそうになった時にアラームで知らせてくれたり、さらに上級装備ではハンドルを修正してくれたりします。
ただACCは運転中にこれを機動させる必要があり、高齢者でなくとも慣れるまでは操作に戸惑うことも。高齢者の高級車オーナーが「それ(ACCのこと)付いてるけれど、結局一回も使ってないよ」という話はよく聞きます。
逆に近所しか走らない場合は、そこまでいらないと思われるかもしれません。
他にも、事故予防機能ではありませんが、エアバッグが開くような緊急時に救急車を呼んでくれたり、ドライバーの状況をあらかじめ設定した家族にメールで送ってくれるサービスなどを行うメーカーもあります。
離れて暮らすご両親が心配なら、こうした車を候補に入れてもいいですね。
2.ストレスを感じないか、快適かどうか
安全性の高さばかりに目が行きがちですが、クルマ選びではご両親が運転していてストレスを感じないか、乗っていて快適かどうかも重要です。
まず、高齢者の場合運転席への乗り降りがラクなことはとても大切な条件となります。
SUVのように運転席へ登るようにアクセスするクルマや、スポーツカーのように腰をかがめないと乗れないクルマは選ばれないでしょうが、運転席のドアに立ったときに腰の下あたりにシートが来るものを選ぶことが、乗り降りの負担を少なくする目安だと言えるでしょう。
その際はシート高の調整幅があるのか? までチェックするとよいですよ。
次に、小回りが利くこと。
周辺の人や物に接触するリスクを減らすのはもちろん、交差点など街中での操作もしやすくなります。また普段はお母様とふたりで使うにしても、4枚ドア(もしくは5ドア)を選ぶのは賢い選択です。ドアの面積が小さくなることで、駐車場などで2ドアよりも気にせずドアの開閉ができると思います。
クルマ選びは一緒に、家族のサポートも大切
いくつかポイントを述べてみましたが、いくら子供があれこれ心配したところで、「いつものディーラーに頼んでいるから大丈夫」と言って試乗しないままクルマを決めてしまう場合もあると思います。
そんなときはできる限り一緒にクルマを見に行って、ディーラーの担当者に先回りして安全装備搭載車を勧めてもらうとよいのではないでしょうか。
また試乗したときに相談者さん自身も運転してみて、その有効性を「これいいね!」と共感してあげるのがよいと思います。お父様より若い息子さんが便利といっているなら、「そうかな?」と思ってくれるかもしれません。
百聞は一見に如かず。一度でもACCの操作を体験してみたり、乗り降りのしやすいクルマの便利さを体験できれば、お父様のクルマ選びもひと味変わってくると思います。つまり何より必要なのは、相談者様のサポートなのかな? と私は思います。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。