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更新:(公開:2019年8月26日)

海外の医療費が高いのはなぜ?海外の医療事情と海外旅行保険の活用術

監修者

加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー  >プロフィールを見る

海外の医療費が高いのはなぜ?海外の医療事情と海外旅行保険の活用術
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海外で病院を受診すると医療費が高い、だから海外に行くときには海外旅行保険に入っておいた方がよいとよくいわれます。しかし、実際に海外旅行中に病気やけがをしたときにはいくらくらいかかるのでしょうか?

そこで、海外の医療事情や医療費について知っておきましょう。

海外の医療費は高い?海外の医療事情

海外でケガや病気に見舞われてしまった場合、いったいいくら払うことになるのでしょうか。

外国の医療事情は日本とは異なります。同じケガや病気でも、外国の医療機関では日本国内の病院でかかるよりも医療費が高額になることがあります。
たとえば、転んで手首を骨折して治療を受けた場合に、日本なら医療費が数万円程度ですむところ、国によっては数十万円規模になることは珍しくないようです。

病気の治療でも差が出ることがあるようです。
たとえば、虫垂炎(いわゆる盲腸)で手術をした場合、日本では数十万円程度のところ、数百万円規模になる国もあるようです。

同じ治療でも病院ごと医療費が異なることも

日本では、治療や診療には「診療報酬」といって国に定められた医療の対価が決められているため、全国どこの医療機関を受診しても医療費にそれほど大きな差はありません。
しかし外国では国による医療費の水準が決まっておらず、医療機関が独自に医療費を設定していることがあり、金額にばらつきが出ることがあります。

たとえば北京(中国)には、外国人専用の外来がある中国系総合病院や、英語や日本語で先進国と同様の医療が受けられる外資系のクリニックがあります。

特に後者ではレントゲンや採血、超音波などの検査により医師の収入が増加するシステムになっており、医療費が高額になりがちのようです。外務省※1によると、病院によってはかぜや胃腸炎などでも1,000元(およそ17,000円)以上かかることがあるようです。

医療費に加えて、検査代や入院費も

医療費は診察や治療にかかる費用だけで済むとは限りません。検査や入院をすれば、その費用もかかります。これらの費用も国によって水準が異なります。

たとえば入院費は、個室か大部屋かによる違いはあるものの、日本では1日あたり数千円から数万円のところが一般的です。これに対して、外国では1泊あたり数十万円することもあります。

救急車が有料になることも

また、旅先で急に体調が悪くなって救急車を呼んだら、それだけで思わぬ出費になることがあります。
日本の救急車は原則として無料ですが、海外では有料の場合が少なくありません。たとえばホノルル(アメリカ)では8万2千円以上、北京(中国)でも約3千円~3万円かかることがあるようです※2

診察前に支払いが必要なことも

さらに海外で病院を受診するときには、まず医療費を支払えるかどうかを問われることがあります。

たとえばアメリカでは、一部の人を除き公的な医療保険制度に加入せず、民間の医療保険に任意で加入して病院での医療費の支払いに備えるのが一般的です。このため現地の民間医療保険に加入していないと、医療費の支払い能力を証明するために、病院の窓口で現金でのデポジットやクレジットカードの提示を求められる場合があります※3
観光客であっても支払い能力がないと判断されると、診察や治療を受けられないおそれもありそうです。

海外での治療も、日本の公的医療保険は使える?

このように、海外での医療費のかかり方は日本と大きく異なります。また外国では、日本で使える健康保険証が使えません。
国内では公的な保険がきく治療なら、医療費の自己負担が1~3割に抑えられますが、海外旅行中には渡航先の国で請求された医療費を全額払わなければなりません。

ただし、日本の公的医療保険に加入している人は、海外でかかった医療費を帰国後に精算できる制度があります。「海外療養費」という制度です。

医療費の一部が戻る「海外療養費」

「海外療養費」は日本の公的医療保険(健康保険や国民健康保険)の制度で、海外でかかった医療費を国内の医療費に換算して、その3割分(現役世代の人の場合)だけを負担すればよいようにするしくみです※4

現地の病院でいったん医療費を全額自己負担で支払い、帰国後に加入している健康保険や国民健康保険に申請することで一部が戻ってきます。
戻ってくるのは、現地で受けた治療をもし日本で受けた場合にかかる医療費の概算をもとに、そのうち自己負担分(1~3割)を差し引いた分です。

たとえば海外で受診して現地で100ドル支払ったとき、同じ診療をもし日本で受けたら医療費は1万円だと判断されると、うち自己負担額(3割負担分)3,000円を差し引いた7,000円分が戻ってくるわけです。

ただし、日本で保険で保険がきかない治療を受けた場合には海外療養費の対象になりません。
また、日本で治療を受けた場合の治療費がベースになります。現地での治療費がベースではないため、日本より医療費が高額な場合、現地で負担した金額をすべてカバーできるとは限りません。

医療費だけではない、ケガや病気でかかる費用

ケガや病気になると、まずは治療が必要です。しかし、治療費以外でも思わぬ費用がかかることがあります。

家族が駆けつける費用

海外旅行中に大きな病気や、けがをしたとき、日本から家族に駆けつけてもらう費用です。
自分の医療費は海外療養費で一部カバーできるかもしれませんが、家族が飛行機で現地に来るための交通費は海外療養費の対象にはなりません。
急な病気やケガで家族に急きょ渡航してもらえば早期割引がきかず、高額な航空券の費用を負担することになる可能性もあります。

また、遠方の海外では、数日の滞在になることも考えられホテルなどの宿泊費もかかります。

事故での捜索費用

海外旅行では、ハイキングやトレッキング、シュノーケリング、スキューバダイビング、ジェットスキーなどに挑戦することもあるかもしれません。

アクティビティでは事故によるケガが心配ですが、救助や捜索が必要な場所でケガをしてしまった場合、捜索費用もかかります。捜索にかかる日数や人員などにより費用は異なりますが、山中や海上などアクセスしにくいところでヘリコプターなどで捜索をしたら、莫大なコストがかかるケースもあります。

海外旅行での病気やケガでは、こうした思わぬ出費が発生するリスクも想定しておきたいものです。

海外旅行保険で、旅行中の思わぬ病気やケガの出費に備えられる

このように、海外では医療事情が日本と異なります。また日本での日常生活では経験しないスポーツやアクティビティをすることで起きるアクシデントにより、想定外の医療費がかかることがあります。
これらの費用に備える方法のひとつとして、海外旅行保険は有効です。病気やケガでかかる費用に備えられるほか、多くの海外旅行保険は日本から駆けつける家族の交通費なども補償の対象にしています。

また、慣れない土地でのアクシデントでは、動揺して冷静に対応するのが難しくなってしまうことがあるかもしれません。

海外旅行保険には、現地の病院に保険会社が直接医療費を払うキャッシュレス診療や、診察中の通訳サポートのサービスがついているものもあります。これらのサービスも、旅の安心につながるのではないでしょうか。

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※1 出典:外務省「世界の医療事情 北京(中国)」
※2 出典:ジェイアイ傷害火災保険株式会社「海外での医療事情」
※3 出典:外務省「世界の医療事情 アメリカ合衆国(ワシントンD.C.周辺)」
※4 出典:協会けんぽ「海外で急な病気にかかって治療を受けたとき」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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