海外旅行中のさまざまなリスクをカバーしてくれる海外旅行保険。
パッケージツアーとセットで契約したり、クレジットカードに付帯しているものを利用したり、複数の加入方法があります。またひとくちに海外旅行保険といっても、さまざまな補償がセットになっています。
海外旅行保険はどんな時に役立つのでしょうか。
海外旅行保険の補償内容
海外旅行保険とは、海外旅行の際に起こったトラブルに対応してくれる保険です。
旅行中に起こり得るさまざまなトラブルに合わせて幅広い補償が含まれており、おもに以下5つの海外旅行中のトラブルに対応できます。
旅行中のトラブルと海外旅行保険の補償内容
旅先でのけが・病気に備える補償
海外の医療機関では日本の健康保険証が使えないため、窓口ではいったん医療費の全額を支払うことになります。
帰国後に申請すれば、健康保険の「海外療養費制度」によって一部の払い戻しを受けられますが、払い戻し額は日本国内で同じ治療を受けた場合の費用を基準に計算されるため、医療費の高い国では、実際の支払額の1〜2割程度しか戻らないケースもあります。
このような旅行中のけがや病気で病院を受診したときに自己負担した治療費をカバーできるのが海外旅行保険の特徴です。一般的に「治療費用」または「治療・救援費用」といった補償名がついています。
海外旅行保険の「治療費用」では、旅行中のけがや病気で現地の病院を受診した際の治療費・入院費・薬代などが補償されます。さらに、けがによる死亡や後遺障害には「傷害死亡・後遺障害」、病気による死亡には「疾病死亡」の補償も用意されています。
ただし、歯科治療や妊娠・出産に関わる費用などは原則として対象外です。
家族の駆けつけ・捜索救助に備える補償
旅行先で入院が必要になったとき、家族が現地へ駆けつける際の往復航空券代や宿泊費を補償するのが「救援者費用」です。入院時だけでなく、登山中の遭難や行方不明時の捜索・救助にかかる費用も対象に含まれます。
補償が適用されるのは、一定日数以上の入院や、医師が家族の付き添いを必要と判断した場合など、保険会社が定める条件を満たしたケースです。家族が自主的に渡航しただけでは対象にならないことがあるため、注意しましょう。
他人の持ち物の破損・事故に備える補償
旅行中に他人にけがをさせたり、他人の持ち物を壊してしまい、法律上の損害賠償責任を負った場合に補償するのが「賠償責任補償」です。ホテルの備品を壊した、お店の商品を落として破損させた、バスルームの水漏れで階下の部屋に損害を与えたなど、日常的に起こりうるトラブルが幅広く対象になります。
ただし、故意による損害が発生した場合はもちろん、仕事中の事故や同居家族に対する賠償、レンタカー事故などは補償対象外となるケースが一般的です。
手荷物の盗難・破損・紛失に備える補償
旅行中にカメラやスマートフォンなどの持ち物が盗難・破損・火災の被害に遭った場合、修理費用や時価額が「携行品損害」として補償されます。
加えて、航空会社に預けた荷物が届かない「ロストバゲージ」に対応する「航空機寄託手荷物遅延等費用」もあります。荷物の到着が一定時間以上遅れた場合に、やむを得ず購入した衣類や日用品の費用が補償されるしくみです。
なお、携行品損害には1品あたり・旅行全体での支払上限が設けられており、現金・クレジットカード・コンタクトレンズなど対象外となる手荷物もあります。
遅延・欠航・ストライキに備える補償
悪天候やストライキなどで飛行機が遅延・欠航し、旅程にはない宿泊費や交通費がかかった場合に、かかった費用が「航空機遅延費用」として補償されます。
ただし、「出発予定時刻から○時間以上の遅延」など補償の発動条件が設けられているのが一般的です。また、多くの保険会社では基本プランに含まれておらず、オプション(特約)としてセットするしくみになっています。
海外旅行保険で利用できるサービス
トラブル時の補償のほかに、海外旅行保険では契約者向けのさまざまなサービスを利用することができます。
保険会社によって内容が異なりますが、主なサービスは4つあります。
医療機関の案内
旅行中にけがをしたとき、体調不良になったときに、保険会社の窓口に電話をすると現地の病院を案内してもらえます。24時間365日、日本語で対応してもらえるところが多いため、現地からでも時差を気にせず電話できます。
地域によっては、日本語が通じるスタッフがいる病院、日本人医師や女性医師のいる病院を案内してもらえることもあります。
キャッシュレス受診サービス
保険会社が現地の病院と提携している場合には、医療費を現金払いせずに受診できる「キャッシュレスサービス」を受けられることがあります。
かかった費用は現地の病院から保険会社に直接請求され、保険会社が病院に支払うため、窓口での負担なく受診できます。
トラブル時の相談サービス
病気やけが、航空機に関わるトラブルだけでなく、海外旅行中には小さなアクシデントに見舞われることもあります。
例えばパスポートやクレジットカードを失くしてしまった、盗まれてしまったときに、カード会社の連絡先を教えてもらう、再発行の手続き方法を教えてもらうなどに対応してもらえます。
あるいは、現地で何らかのトラブルに遭い、言葉がわからずに困ったときに、電話で通訳をしてもらうサービスのある保険会社もあります。
旅行のサポートサービス
トラブルに限らず、海外旅行を楽しむために便利なサービスが充実している保険もあります。
例えば航空機の時刻表情報やホテルの案内をしてもらう、さらに予約や手配を代行してもらえるサービスを設けている保険会社があります。
海外旅行保険のおすすめプラン(補償内容)
補償内容に過不足が生じないよう、渡航先や旅行スタイルに合わせて計画的に加入しましょう。
治療・救援費用は無制限がおすすめ
海外旅行保険のなかでも、優先して備えたいのが治療・救援費用です。保険金額を選べる場合は、「無制限」のプランを検討するとよいでしょう。
海外では、日本よりも医療費が高額になる国が少なくありません。例えばアメリカでは、盲腸の手術や入院だけで数百万円、ICUで治療を受けた場合には数千万円かかるケースもあります。
さらに、現地での治療が難しく、日本への医療搬送が必要になれば、アジア圏からでも搬送費だけで数百万円かかることがあります。そのため、治療・救援費用を1,000万円に設定していても、治療内容や搬送の有無によっては補償額が不足する可能性があります。
個人賠償責任補償は1億円以上に設定する
個人賠償責任補償の保険金額は、1億円以上を目安にするとよいでしょう。
例えば、ホテルで水を出したままにしてしまい、階下の客室まで浸水させた場合、建物や設備の修理費だけでなく、ホテルの休業による損害などを請求される可能性があります。
また、相手にけが・死亡させた場合は、治療費などを含めて賠償額が膨らむことも考えられます。個人賠償責任補償は、保険金額を増やしても保険料への影響がそれほど高くない商品もあるため、十分な補償額を設定しておくと安心です。
ただし、火災保険や自動車保険などですでに同様の補償が付いている場合もあります。加入前に補償内容を確認し、重複していないかチェックしておきましょう。
盗難リスクが気になる地域では携行品損害も検討する
スリや置き引きなどの被害が心配な地域へ渡航する場合は、携行品損害のセットを検討するとよいでしょう。
海外の観光地や繁華街では、スリや置き引きに遭う可能性があります。スマートフォンやカメラなどが入ったバッグごと盗まれれば、被害額が数万円から数十万円に及ぶこともあります。
持病があっても入れる海外旅行保険はある?
海外旅行保険に加入する際は保険会社に対して健康状態などを申告(告知)する必要があります。特にインターネットから申し込める商品の場合、持病があると加入を断られるケースが少なくありません。
しかし、持病があっても、商品によっては海外旅行保険に加入できる場合があります。
保険会社・商品によっては持病の悪化も補償される
持病がある場合は、持病の悪化による治療費も補償される商品を選ぶとよいでしょう。
例えば、「疾病に関する応急治療・救援費用補償特約」をセットすることで、旅行中に持病が急激に悪化し、応急治療を受けた場合の治療費などが補償されることがあります。
ただし、透析やインスリン注射など旅行中も継続することが予定されていた治療や、病気の治療・症状の緩和を目的とした渡航、出発前から渡航先での治療が決まっていた場合などは補償の対象外です。
持病があって海外旅行保険に入れない時の対処法
海外旅行保険に加入できない場合は、引受基準緩和型の医療保険や傷害保険で一部の補償(保障)に備える方法があります。
引受基準緩和型の医療保険は、通常の医療保険よりも健康状態に関する告知項目が少なく、持病がある人でも加入しやすい保険です。
傷害保険は、一般的に健康状態の告知がなく、海外旅行中の事故によるけがなどを補償できます。
ただし、引受基準緩和型の医療保険や傷害保険は、海外旅行保険とは保障(補償)の範囲や保険金の支払われ方が異なります。
それぞれの補償内容の違いを以下の表で確認してください。
海外旅行保険・引受基準緩和型医療保険・傷害保険の補償(保障)内容の違い
引受基準緩和型の医療保険や傷害保険でカバーできるのは、あくまで病気・けがに対する給付が中心です。飛行機トラブルへの補償や、旅行中に他人へ損害を与えた場合の賠償責任補償、手荷物の盗難・破損などは対象外となります。
また、医療保険の中には海外での入院・手術が給付対象となる商品もありますが、一般的には入院日数や手術の種類などに応じて所定の給付金が支払われます。加えて、請求手続きが複雑になることも少なくありません。
一方、海外旅行保険の場合は、海外で実際に負担した治療費を保険金額の範囲内で補償するケースが一般的です。
持病があり海外旅行保険への加入が難しい場合でも、渡航前に保険会社へ個別に相談し、加入できる商品がないかを確認することをおすすめします。
海外旅行保険の加入方法
海外旅行保険の申込方法はおもに5つあります。
インターネットからの申し込みは、店頭や空港の対面窓口で契約するよりも割安な保険料で加入できる傾向があり、時間や場所を選ばずに手続きができるメリットもあります。
なお、海外旅行保険は基本的に出発当日でも加入できますが、日本を出国したあとは加入できません。また、当日加入ではセットできない特約もあるため、旅行の日程が決まった時点で早めに手続きを進めておきましょう。
旅行の計画と合わせて海外旅行保険の検討も
海外旅行保険は旅行中のさまざまなトラブルに備えることができる保険です。
トラブルなく、帰宅まで旅行を楽しめるのが一番です。しかし、住み慣れない海外では予想しないハプニングや体調を崩してしまうこともあるかもしれません。
旅行日程の計画や準備も合わせて海外旅行保険も準備をしておくことでより旅行を楽しめるのではないでしょうか。
また、海外旅行保険は窓口だけでなくインターネットや空港で手軽に契約することもできるので、出発準備で忙しくて気が付けば出発前日や当日、というときでも便利です。旅先での万が一に備えて、安心して出発したいですね。
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執筆者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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