海外旅行中のアクシデントに備える海外旅行保険は、自分で加入するほかに、クレジットカードに付帯している保険を活用する方法もあります。
では、一般的な海外旅行保険と、クレジットカード付帯の保険は何が違うのでしょうか?
補償やサービスについて比較してみましょう。
クレジットカード付帯の海外旅行保険とは
クレジットカードに付帯されている海外旅行保険は、カード会員向けのサービスのひとつです。
基本的に、旅行に出発するタイミングで改めて保険への契約手続きをしなくても、カードを持っている人が補償の対象になるしくみになっています。
ただし、補償を受けるためには利用条件があります。クレジットカード付帯の海外旅行保険は、利用条件の違いに応じて、おもに「自動付帯」と「利用付帯」の2種類にわかれます。
自動付帯のカード
自動付帯は、カードの会員であれば自動的に保険の補償対象となるサービスです。
旅行先にカードを持っていくか、旅行中にカード払いをするかどうかなどにかかわらず、旅行中にアクシデントに見舞われた際には所定の補償を受けることができます。
利用付帯のカード
利用付帯は、航空券やパッケージツアーの購入、旅行に出発してから出国前までの公共交通機関などで、支払いにそのクレジットカードを利用した場合に、保険の補償対象となるサービスです。
出国後に初めてカードを利用したときには、公共交通機関の利用であればその時点から補償対象となる場合もあります。
カード会社によって補償対象となる利用要件が異なる場合がありますので、詳細は保有しているカードの会社に確認しましょう。
クレジットカード付帯の保険の補償内容
クレジットカード付帯の保険には、海外旅行中のアクシデントに備える複数の補償がセットされているのが一般的です。
カードによって細かな違いはありますが、旅行中の死亡や後遺障害、病気やケガ、賠償、携行品損害は多くのカードの付帯保険に含まれているようです。
それぞれの補償内容は以下の通りです。
また、以下の補償に加え、ゴールドカードなど年会費が比較的高いカードではさらに充実した補償をそなえていることがあります。
クレジットカード付帯の海外旅行保険の補償内容
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補償内容 |
傷害死亡
・後遺障害 |
旅行中に偶然な事故によってケガをしたことが原因で、事故から180日以内に死
亡した場合、 または後遺障害を負った場合に保険金が支払われる |
治療費用 |
旅行中に病気やケガをして病院で治療を受けたときに、窓口で支払った診察費や
検査代、 手術費や入院費、治療のための通訳の費用などが支払われる |
賠償責任 |
旅行中に滞在先のホテルの備品を壊してしまった、人にぶつかってしまったなど 偶然な事故によって他の人にケガをさせたり、他の人のものを壊したりして賠償
責任を負ったときに保険金が支払われる |
携行品損害 |
旅先に持って行った自分の身の回り品が偶然な事故によって旅行先で壊れたり、 盗まれたり、火災で燃えてしまったときなどに、保険金が支払われる |
※一般的な概要です。詳細は保険会社にご確認ください。
クレジットカード付帯と一般の海外旅行保険の違い
クレジットカードに付帯されている海外旅行保険は、基本的には店頭や空港などで加入する海外旅行保険とほぼ同じ補償をそなえています。
また近年は年会費が無料でも、海外旅行保険の付帯サービスを売りにしたクレジットカードが多く、一概には比較できませんが、一般的には店頭などで自分で契約する海外旅行保険で、より補償やサービスが充実している傾向があります。
おもに、次の5点で違いがあるようです。
補償される項目
死亡・後遺傷害になったときや病気・ケガをしたときの補償はほとんどのクレジットカード付帯保険に含まれていますが、賠償責任や携行品損害の補償はついていないクレジットカードがあります。
一方で、自分で契約する海外旅行保険には、上記に加えて空港で預かり荷物が遅延したとき(寄託手荷物遅延等費用)、テロなどによって到着が遅れたとき(テロ対応費用)、旅行中に緊急的に歯科治療を受けたとき(緊急歯科治療費用)、賠償責任を負うなどのトラブルに巻き込まれて弁護士による法的な手続きや法律相談を利用したとき(弁護士費用)などへの補償をつけられるものが多いようです。
補償額の上限
クレジットカード付帯でも、自分で契約するものでも、ほとんどの海外旅行保険の補償では、万が一トラブルに見舞われたときに受け取る保険金に上限があります。
ただ、上限金額は自分で契約する海外旅行保険で高めの傾向があります。
たとえばケガや病気になったときの補償は、カード付帯の保険では上限数十万円~数百万円ほどのものが一般的です。これに対して自分で契約する海外旅行保険では、上限1,000万円以上のほか、無制限のものもあります。
また、賠償責任を負ったときの補償は、カード付帯の保険では上限2,000万円~3,000万円程度(1事故あたり)のものが多いのに対して、自分で契約する海外旅行保険では上限1億円ほどが中心です。
なお、自動付帯で海外旅行保険がつくクレジットカードのなかには、旅行のためにカードを使った場合と使わなかった場合で保険金額の上限が異なるものもあります。
免責金額
旅行中の思わぬアクシデントで、海外旅行保険を使うときの自己負担が違うこともあります。
クレジットカードに付帯されている保険では携行品損害の補償で一部自己負担が生じることが多いのに対して、自分で契約する海外旅行保険では免責金額が設定されておらず、損害額の全額が保険からおりるものが多い傾向があります。
補償をカスタマイズできるかどうか
これらの補償項目や保険金額の上限を、自分で自由に設定できるかどうかも大きな違いです。
一部、オプションで補償を追加できるケースを除き、ほとんどのクレジットカード付帯保険は補償項目と上限の保険金額があらかじめ決まっており、自分で変更はできません。
これに対して自分で契約する海外旅行保険は、基本的なパッケージはあるものの、補償項目を追加したり外したり、補償の上限額を自由に設定できることが多いです。
ネットで契約する海外旅行保険などでは、基本的な補償も含めてすべて自由に設計できるものもあります。
補償の対象者
クレジットカード付帯の保険では基本的にカード会員本人が補償の対象になります。
カードによっては、カード会員の子どもも年齢などの要件を満たすと自動的に補償対象に含まれるものや、家族カードを持っていれば家族も補償対象になるものがあります。
これに対して自分で契約する海外旅行保険は、自分のみを対象にするプランと家族や友人同士など複数の人をセットで補償するプランから選んで契約します。
また旅行に行く子どもの代わりに親が契約するケースのように、契約者以外の人を保険の対象にすることもできます。
利用できるサービスに違いがあることも
保険の補償以外に、保険に付帯しているサービスに違いがみられることもあります。
病院受診時のサービス
多くの海外旅行保険には、旅行中に病気やケガをしたときに現地の病院を案内してもらえたり、救急車を手配してもらえたりするサービスや、提携の病院なら窓口で医療費を現金払いせずにすむキャッシュレス医療のサービスがついています。
自分で契約する海外旅行保険なら、ほぼすべての商品で対応しています。
クレジットカードに付帯の海外旅行保険にも、一部ではこれらの医療サービスがついていますが、ついていないカードもあります。
トラブル時の相談サービス
自分で契約する海外旅行保険の多くでは、病気やケガ、航空機に関わるトラブルだけでなく、パスポートやクレジットカードを失くしてしまった、盗まれてしまったなどのトラブルへのサポートも対応してもらえます。
現地でトラブルに遭ったときに言葉がわからずに困ったときに、電話で通訳をしてもらうサービスや、入院したときに日本に滞在している家族に状況を報告してもらえるサービスのある保険もあります。
細かなサービスの範囲はカードや商品によって異なりますが、一般的にはカード付帯よりも自分で契約する海外旅行保険で充実している傾向があるようです。
旅行のサポートサービス
さらに、自分で契約する海外旅行保険のなかにはトラブルに限らず、海外旅行を楽しむために便利なサービスが充実している保険もあります。
たとえば航空機の時刻表情報やホテルの案内をしてもらう、さらに予約や手配を代行してもらえるサービスを設けている保険会社があります。
なかには、電話だけでなくスマートフォンのアプリを使って現地のさまざまな情報やサービスの利用ができるサービスもあります。
カード付帯で基本的な備えを、海外旅行保険でさらに旅の安心を
このように、クレジットカード付帯の海外旅行保険には旅行中のさまざまなリスクに備える補償がついています。
カードの種類によって補償の範囲や利用条件が異なりますので、一度お手持ちのカードの保険の内容を確認してみるとよいですね。
一般的には、自分で海外旅行保険に契約すると充実した補償を確保しやすい傾向があります。
クレジットカードをお持ちの方は、カード付帯の保険の上乗せとして、必要な補償を選んで海外旅行保険に契約してもよいのではないでしょうか。
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監修者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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