賃貸の部屋に入居するときには、不動産会社から指定されるなどで家財保険を検討することがありますが、家財保険はなぜ必要なのでしょうか。
賃貸契約時には前家賃や仲介手数料などの初期費用、引っ越し費用などの出費が増える中で少しでも負担を減らしたい、手持ちの家財は最小限なので家財の補償は必要ない、と考える方もいるかもしれません。
ここでは、賃貸住まいでの家財保険の必要性について解説します。
賃貸で家財保険はなぜ必要?
賃貸向けの家財保険(火災保険)が必要とされる理由は、自分の家財の損害に備えるためだけではありません。オーナーさんへの賠償、さらには第三者への賠償といった、賃貸暮らしならではのリスクにも備えられるメリットもあります。
家財(テレビなど)の修理費用・買替費用に備えるため
家財保険の基本的な役割は、火災や台風、水漏れ、盗難、さらには日常の不測の事故(破損・汚損)によって家財が損害を受けたときに、その修理費用や買替費用を補償することです。
「一人暮らしで物も少ないから、家財の補償は必要ない」と考える方もいるかもしれません。しかし、実際に部屋の中にある物をすべて買い直すとなると、その総額は想像以上に大きくなることがあります。
例えば損保ジャパンが公表している「家財簡易評価表」によると、家財の再調達価額(同じ物を新たに買い揃えるのに必要な金額)の目安は以下のとおりです。
家財簡易評価表
家財の新価の目安
(2026年3月現在)
出典:損保ジャパン「賃貸住宅入居者火災保険『THE 家財の保険』補償プランの設計」
一人暮らしの場合、テレビ、パソコン、冷蔵庫、洗濯機、電子レンジなどの家電だけでも数十万円、衣類やベッド、日用品を加えれば100万〜300万円に達することもあります。もし火災や水害ですべてを失った場合、これらの修理費用や買替費用をすべて自費で賄わなければなりません。
家財保険に加入しておけば、こうした予期せぬ損害に対して保険金でカバーできます。
借りている部屋の修繕(借家人賠償責任)に備えるため
部屋を借りる人には原状回復の義務があり、通常の使用方法で生じた床のへこみや経年劣化などを除き、退去時には入居前の状態に戻す必要があります。
また、火災や水漏れなどを発生させて部屋に損害を与えてしまったときには、大家さんから損害賠償を請求されることもあります。
日本には「失火責任法」があるため、火事を起こしても重大な過失がなければ、隣家など第三者への損害賠償責任は発生しません。しかし、賃貸借契約にもとづく原状回復義務(債務不履行責任)は失火責任法では免除されないため、たとえ重大な過失がない火事であっても、オーナーさんに対しては部屋の修繕費用を賠償する必要があるのです。
賃貸向けの家財保険には「借家人賠償責任補償」という補償がセットされていて、そういった費用の負担を保険でカバーできるようになっています。
また、借りている人に損害賠償責任はないものの、部屋のドアや窓ガラスなど所定の箇所に修理が必要になったときに、借りている人が修繕費用を負担することがあります。
賃貸借契約をするときには、あらかじめ契約書上でオーナーさんと借主のどちらが費用を負担するかを取り決めておく場合もあります。
賃貸向けの家財保険では、そのような場合に借主が負担した修理費用が支払われる「修理費用補償」という補償を付けられます。
水漏れなど生活トラブルによる第三者への賠償(個人賠償責任)に備えるため
借りている部屋で水漏れを起こして、下の階の部屋まで水浸しになり相手の衣類や家電に損害を与えてしまったようなときには、オーナーさんのほか第三者に対して損害賠償責任を負うこともあります。
そのような場合に補償されるのが「個人賠償責任補償」で、賃貸向けの家財保険のプランにセットされていたり、オプションとして任意で付加したりすることができます。
個人賠償責任補償は借りている部屋で起きたアクシデントだけでなく、外で自転車に乗っていて歩行者にぶつかりけがをさせてしまったときや、お店の商品を誤って壊してしまったときなど、生活全般でのアクシデントにも対応できます。
賃貸契約時に家財保険が必要と言われることも
賃貸の部屋を借りる際に、家財保険への加入が賃貸契約の条件となっているケースは少なくありません。
賃貸借契約書に、加入の要否や補償内容(借家人賠償責任の保険金額の下限など)に関するルールが記載されていることもあります。指定された条件を満たしていない保険で契約すると、あとから再加入を求められることもありますので、契約前に確認しておきましょう。
家財保険では何が補償される?
保険金を請求する段階で「対象外だった」とならないよう、加入前に家財保険の補償範囲を確認しておきましょう。
家財保険の補償対象になる物・ならない物
家財保険では、日常生活で使用する動産が幅広く補償の対象に含まれます。
一方で、以下のような家財は基本的に補償対象外です。
このほか、故意に壊した家財や、経年劣化や自然故障による損害も補償対象外です。
申込時に申告が必要な家財
1点または1組の価額が30万円をこえる貴金属、宝石、美術品、骨董品、書画などは「明記物件」と呼ばれ、契約時に保険会社へ個別に申告が必要です。申告をせず保険証券に記載されない場合は、補償されない場合があるため注意しましょう。
家財保険の支払い例
実際に家財保険ではどのようなケースで保険金が支払われるのか確認してみましょう。
| 事故の種類 |
事例 |
| 火災(破裂・爆発などを含む) |
- キッチンのコンロから火が燃え移り、食器棚や家電が焼損した
- ストーブの転倒で衣類やカーテンに引火し、寝具や家具が焼けた
- ガス漏れによる爆発でリビングの家電・家具が破損した
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| 風災(台風など) |
- 台風で窓ガラスが割れ、雨が吹き込んでテレビやソファが使えなくなった
- 強風で飛んできた物がベランダの窓を突き破り、室内のパソコンが破損した
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| 水災 |
- 集中豪雨による床上浸水で、冷蔵庫や洗濯機が水没して故障した
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| 盗難 |
- 留守中に空き巣に入られ、ノートパソコンやバッグが盗まれた
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| 水漏れ |
- 上の階からの水漏れで、ベッドや衣類が水浸しになった
- 洗濯機のホースが外れて床が水浸しになり、収納していた衣類が損害を受けた
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| 破損・汚損 |
- 子どもがおもちゃを投げてテレビの液晶画面を壊した
- 掃除機を動かしていて棚にぶつかり、上に置いていたパソコンが落下して故障した
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補償範囲は商品によって異なります。特に「破損・汚損」の補償は、オプション(特約)として別途加入が必要なケースも少なくありません。小さい子どもがいる世帯など、日常のアクシデントにも備えたい場合は、加入時に補償範囲を確認しておきましょう。
家財保険は自分で選ぶこともできる
賃貸の火災保険は、部屋を仲介してくれた不動産会社に紹介してもらったり、仲介業者経由で加入手続きまで完了できることがありますが、基本的には借りる人が自分で選んで契約することができます。
自分で選ぶ場合には、インターネットや保険ショップなどで加入できます。ただし、物件のオーナーや管理会社、賃貸契約書の内容によっては、火災保険の補償内容などについて一部指定されるところもあるようですので、賃貸の契約書などを確認してみましょう。
入居当初にオーナーや不動産会社などから指定された火災保険に契約しても、特別な条件や指定がない限り、賃貸契約の更新時に自分で選んだ火災保険に乗り換えることもできます。
賃貸暮らしのトラブルに備えるために、家財保険の必要性を検討
家財保険に加入しておくと、賃貸住まいの間の火災や水漏れ、盗難などで、オーナーさんや隣家などへの賠償が必要になったときや、自分の生活を再建するために備えられます。
賃貸契約上での指定や、自分の持ち物などに合わせて、家財保険を検討してみましょう。
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執筆者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
家財保険に関するよくある質問
賃貸で家財保険に入らないとどうなりますか?
火災や水漏れを起こした場合、オーナーさんへの賠償費用や家財の買替費用がすべて自己負担になります。借家人賠償責任の賠償額は数百万円〜数千万円に及ぶこともあり、貯蓄だけでカバーするのは現実的ではないでしょう。なお、家財保険への加入は法律上の義務ではありませんが、加入を賃貸契約の条件としている物件も多いため、未加入の場合はそもそも契約が難しくなることもあります。
子どもがテレビを壊したら家財保険で補償されますか?
「破損・汚損(不測かつ突発的な事故)」の補償が含まれていれば、対象になる場合があります。保険金は修理費用または同等品の購入費用から免責金額(自己負担額)を差し引いた金額が支払われます。ただし、故意に壊した場合や経年劣化・自然故障は対象外です。
例えば子どもがテレビを破損し、修理費用または同等品の購入費用が8万円だとします。破損・汚損補償による免責金額が仮に1万円だとすると、これを差し引いた7万円が保険金として支払われることになります。
「破損・汚損」はオプション扱いのプランもあるため、契約内容を確認しておきましょう。
家財保険で地震の損害も補償されますか?
地震・噴火・津波による損害は、火災保険(家財保険)の補償対象外です。これらに備えるには、火災保険とセットで「地震保険」に別途加入する必要があります。賃貸でも家財を対象にした地震保険に加入できますので、お住まいの地域のリスクも踏まえて検討してみてください。
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