賃貸住宅に入居するときには、賃貸向けの火災保険に加入することがほとんどです。では、賃貸向けの火災保険でどのようなリスクに備えることができるのでしょうか。
補償内容や保険金額の決め方について解説します。
賃貸の火災保険とは?
賃貸用の火災保険は、賃貸住宅に住んでいる人に必要な補償を組み合わせた火災保険です。
持家に住む場合と違い、賃貸住まいでは建物の火災保険は必要ありませんが、万一の火災などで室内にある自分の家財が被害を受けたときや、借りている部屋で事故を起こして賠償責任を負ったときなどへの備えは重要です。
賃貸の火災保険の補償内容は?
賃貸向けの火災保険には、おもに次の補償内容が含まれています。
家財補償
借りている家や部屋の中にある自分の持ち物(家財)への補償が、家財の補償です。賃貸住宅に入居中に火災や落雷、台風、洪水、水漏れなどで、家具や家電、衣類や日用品などの家財が壊れたりなくなったりしたときに、損害額が保険金として支払われます。
家財保険の「家財」に含まれるのは、ソファやテーブル、冷蔵庫やテレビ、パソコン、寝具、日用品、衣類、バッグやアクセサリー、貴金属などです。災害によってこれらが使えなくなったときに、同等のものを再度購入するために必要な金額「再調達価額(新価)」を基準に、保険金を受け取れる家財保険が主流です。
「携行品損害特約」というオプションを付加することで、外出中に家財を外に持ち出している間のアクシデントでも補償を受けられる火災保険もあります。
借家人賠償責任補償
借りている人が起こした事故で部屋に損害を与えて、大家さんに対して賠償責任を負ったときの補償が、借家人賠償責任補償です。
入居中にタバコの不始末でぼや・火災を起こして室内の壁紙が燃えてしまった、洗濯機のホースが不注意により外れて水漏れを起こし、床や畳が濡れて使えなくなってしまったようなときには、大家さんから法律上の損害賠償を請求されることがあります。
また、部屋を賃貸契約で借りた人には、故意や過失によって生じた傷や汚れは元に戻す原状回復の義務があります。
修繕や張り替えなどにかかる費用は借主が負担しなければなりません。借家人賠償責任補償では、このようなときにかかる費用が、契約している保険金額を上限に支払われます。
賃貸住宅を借りる契約をするときには、借家人賠償責任補償のついた火災保険に加入するように、大家さんや管理会社から求められることがよくあります。
個人賠償責任補償
大家さん以外の第三者に対して賠償責任を負ったときの補償が、個人賠償責任補償です。
火災や水漏れを起こして隣家や階下に被害を与えてしまった、ベランダからものを落として駐車場に止まっていた他人の車に傷をつけてしまったなど、契約中の家や部屋で起こした事故のほか、買い物中に店の商品を壊してしまった、自転車に乗っているときに歩行者にぶつかってケガをさせてしまったなど自宅外での事故も対象で、日常生活全般でのアクシデントが補償されます。
個人賠償責任補償は、自動車保険や傷害保険のオプションとして付いていることもありますが、賃貸用の火災保険のプランに含まれていたり、任意でオプション付加できることもあります。部屋を借りる賃貸契約では、借家人賠償責任補償とともに個人賠償責任補償の加入も求められることがあります。
修理費用
賃貸借契約を交わすときには、入居中に起きた事故で自宅の修理が必要になったときに、貸主と借主のどちらが修理費用を負担するか、室内の箇所や備品それぞれについて契約書上で個別に決めておくのが一般的です。
このうち、借主が負担することとする箇所について、修理費用がかかったときに保険金が支払われるのが、修理費用の補償です。
上述の借家人賠償責任補償は、大家さんから損害賠償請求を受けたときや部屋の原状回復をするための費用が補償されるのに対して、修理費用の補償では、法律上の損害賠償責任はないものの、ドアや窓ガラスなど室内の設備を借主の負担で修理したときや、借りている部屋に住むために必要な応急措置をするために、借主が費用負担したときが対象になっています。
火災や破裂などのほか、落雷や飛来物、盗難での被害で修繕費用を負担したときなども対象になることがあります。
そのほか、旅行や出張などで持ち出し中の家財を補償するもの、事故で賃貸住宅に住めなくなった時の宿泊費用や、洗面台や便器、浴槽を壊してしまったときの交換費用を補償するものなどがセットされている賃貸住宅用の火災保険もあります。
住まいのトラブルに対応できるサービスがついたものも
火災保険のなかには、賃貸住宅に居住しているときのさまざまなトラブルに対応できるサービスが、契約者向けサービスとして利用できるものもあります。
サービスの内容は各社異なりますが、カギをなくして家の中に入れないときの鍵開け、トイレが詰まったり水漏れしたときの応急処置、窓やドアガラスが破損したときの片付けや清掃などのサービスがあるようです。
所定の時間内までは、保険の付帯サービスとして無料で利用できるのが一般的です。
今みんなが選んでいる保険は?
賃貸の火災保険の補償額の決め方は?
賃貸向けの火災保険の保険金額は、いくらくらいで契約するのがいいでしょうか。保険金額の決め方や考え方は、補償内容に応じて異なります。補償内容別に、保険金額の検討方法をお話しします。
家財の補償の金額
家財への補償は、自分や家族の持ち物の数や金額に応じて検討します。家族構成や年齢などに応じて、一部の保険会社が目安を示していますので、それを参考に設定してもいいでしょう。
借家人賠償補償の金額
賃貸向けの火災保険では、借家人賠償補償部分については保険金額を自分で設定するのではなく、1,000万円や2,000万円などの一定額があらかじめ設定されているプランが一般的です。
部屋を借りるときの賃貸借契約によっては、大家さんや管理会社が保険金額を指定することもあるようですので、それを満たす保険金額のプランを選ぶといいですね。入居前に、賃貸借契約書などを確認してみましょう。
また、個人賠償責任補償や修理費用補償の保険金額は、契約プラン別に所定額がセットされるところが多いようです。
賃貸契約と合わせて火災保険も検討を
賃貸契約をするときには、同時に火災保険に契約することが一般的です。部屋を仲介する不動産会社に紹介してもらえることもあります。
入居前に、賃貸向けの火災保険を検討するとともに、いざというときにどのように活用できるか、補償内容についても知っておくと安心です。
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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