更新:公開:2020年10月5日

認知症保険とは?公的制度と合わせた保険の活用法をFPが解説

監修者:
加藤 梨里|ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、健康経営エキスパートアドバイザー

認知症保険とは?公的制度と合わせた保険の活用法をFPが解説

高齢化の進む日本で心配な病気のひとつが「認知症」です。介護が必要となる可能性もあるため、もしもの時に必要なお金に備えておくことが大切です。そんなときに備える方法に、「認知症保険」があります。

認知症保険のしくみと、どんなときに活用できるかを知っておきましょう。

認知症保険とは?

認知症保険とは、アルツハイマー型認知症などの器質性認知症と診断されたときや、軽度認知障害(MCI)と診断されたときなどに給付金を受け取れる保険です。

認知症と診断された場合、その治療費に加えて日常生活を支えるサービスの利用費など、さまざまな出費が必要になることがあります。認知症と付き合いながら暮らすうえでの幅広い費用に備えられるのが、認知症保険の役割です。

認知症保険では、生まれて初めて医師から保険会社所定の認知症であると診断確定された場合に、100万円などのまとまった一時金を受け取れるものが一般的です。

介護や骨折など保障が広くなったものも

また、最近では認知症の前段階の軽度認知障害(MCI)と診断確定された場合に一時金を受け取れる保険や、認知症の有無にかかわらず生存していれば定期的に給付金を受け取れる保障が付いているものも販売されています。

認知症保険の中には、骨折の治療を受けたときに、1回につき5万円などの給付金を受け取れる保障がついたものもあります。また、保険会社所定の要介護状態と認定された場合に一時金や年金を受け取れるタイプもあります。

多くの認知症は介護を要する状態を伴います。厚生労働省の「国民生活基礎調査」※1によると、介護が必要となった主な原因で最も多いのが認知症です。介護が必要になると、自宅のバリアフリー化や介護サービスなど、認知症の治療費以外にも活用できそうです。

認知症保険と公的制度との違いは?

では、認知症になった場合に利用できる公的な補助制度は、民間の認知症保険とはどんな違いがあるのでしょうか。

公的医療制度との違い

認知症の治療にかかる費用の負担を軽減できるのが、公的な医療制度です。認知症では、おもに医師による診察、脳の検査や認知機能テスト、症状の進行を抑えるための投薬などに医療費がかかります。

これらのうち、公的医療保険の対象となる治療であれば、自己負担は1割(75歳以上の場合。70歳~74歳は2割。ただしいずれも現役並み所得者は3割)に抑えられます。

また、同じ月に医療費の自己負担額が一定の上限額以上になった場合には高額療養費制度で支払った医療費の払い戻しがあります。たとえば70歳以上で年金などの収入が約370万円~770万円の場合は入院につき月57,600円、外来は月18,000円までが上限で、これを超えると還付されるのです※。
※入院は世帯ごと、外来は個人ごとの医療費で計算します。また、連続して1カ月の上限を超えると4カ月目以降の上限額が引き下げられるなどの措置もあります。

加えて、自己負担した医療費は所得税の医療費控除の対象にもなります。確定申告をすれば、払った医療費の一部が税の還付という形でさらに戻ってくる場合もあります。

一方で民間の認知症保険は、かかった医療費を軽減するのではなく、認知症と診断されるなど、要件を満たすと給付金を受け取るしくみです。年齢や年収、かかった費用にかかわらずお金を受け取れるのが、公的医療制度とのおもな違いです。

公的介護保険との違い

認知症に限らず、要介護または要支援認定を受けて介護サービスを利用したときには、公的な介護保険によって費用の負担が軽減されます。対象となる介護サービスを受けた場合、利用者負担は原則1割(一定以上の所得がある場合は2~3割)です。

また、医療費と同じように、1カ月に負担額が一定の上限額以上になった場合には「高額介護サービス費」といって、上限を超えた分が払い戻されます。加えて、一部の在宅サービスで支払った費用は、所得税の医療費控除の対象になります。

つまり公的な介護保険制度も、自己負担が軽減されるしくみです。基本的にはお金を受け取れる制度ではありません。また、要介護度によって公的な保険の対象になる範囲や、受けられるサービスの上限額は異なります。加えて、介護全般を対象にしており、認知症に特化した保障というわけではありません。

これに対して民間の認知症保険は、基本的に認知症に絞った保障です。一部を除き、細かな要介護度の違いにかかわらず、認知症と診断されたら給付金を受け取れるのが特徴です。

認知症保険はどう活用できる?

このように、認知症になった場合には公的な制度で費用の負担を軽減できます。ここに民間の認知症保険を合わせることで、認知症と付き合いながらの生活にマッチした保障やサービスを充実させることができるでしょう。

認知症の治療費用に備えられる

認知症保険は、入院を要件とすることが多い医療保険とは異なり、基本的に認知症の診断が確定すると受け取れるのが特徴です。実際、認知症の治療で入院を要するのは、精神症状や異常行動を伴う場合などに限られ、手術をすることもまれのようです。ですから、医療保険だけでは認知症の治療や闘病生活での費用には十分対応できない可能性もあります。

入院や手術時に保険がおりる民間の医療保険には入っているけれど、認知症のときに十分に活用できるか心配、認知症への備えを手厚くしたいときには、認知症保険がよりニーズに合うかもしれません。

認知症予防サポートを利用できる

認知症保険の中には、契約者向けに保険会社が独自に、認知症に関連したサービスを提供しているものがあります。たとえば認知機能の低下を知らせて早期の受診を促すアプリや、生活習慣や運動指導など認知機能低下予防に役立つサポートサービスの優待利用を用意しているところがあります。

認知症のひとつであるアルツハイマー型認知症では、軽度認知障害(MCI)の段階で早期発見できれば、進行や発症を遅らせる対策もしやすいといわれています。認知症保険への加入が、健康なうちから認知症の予防を心がけるきっかけになるかもしれません。また、軽度認知障害(MCI)と診断された時に給付金を受け取れる保険であれば、軽度認知障害(MCI)改善のための通院などに給付金を活用できそうです。

認知症でかかる負担への備えに認知症保険の活用を

認知症で必要になる費用には、公的な制度と認知症保険を活用して備えることができます。公的な制度では認知症の予防に特化した備えは用意されていませんが、認知症保険の軽度認知障害(MCI)に関する保障や予防サポートを上手に併用することで、自身や家族の負担を軽くできるかもしれません。

親御さんが認知症となった場合や、自身が将来認知症となった場合のために、あらかじめご家族でどんな準備をしておくか、検討しておけると安心ですね。

※1 出典:厚生労働省「国民生活基礎調査」
参考:厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」
参考:国税庁 タックスアンサー「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
参考:国税庁 タックスアンサー「No.1127 医療費控除の対象となる介護保険制度下での居宅サービス等の対価」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。

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