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更新:(公開:2017年1月13日)

認知症になってしまったら?かかる費用と活用できる生命保険3つをFPが解説

執筆者

加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る

認知症にかかったら︖かかるお⾦と備え⽅をFPが解説
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認知症になると、治療や⽣活のサポートなどで費⽤の負担がかかります。診察・検査費⽤、薬物治療での薬代、介護サービス費⽤でどれくらいかかるのか、またこれらの費⽤に備える保険について解説します。

認知症になってかかる費用は大きく3つ

親や配偶者が認知症になったら、あるいは⾃分が認知症になったら、⽣活には家族のサポートが必要になることでしょう。⾷事やお⾵呂などの介助を⾝内でするだけでなく、専⾨のサービスや施設を利⽤すると⾦銭的な負担もかかります。

どんな費⽤がかかるのかをみてみましょう。

入通院を含む「治療費用」

まずかかるのが、治療費です。認知症にはアルツハイマー病によるもののほか、脳梗塞や脳出⾎などによる脳⾎管性認知症、パーキンソン病の特徴を持つレビー⼩体型認知症、前頭側頭型認知症などの種類があります。いずれも根治は難しいとされ、薬などで症状を抑える治療が中⼼のようです。

治療費は他の病気と同じように、保険がきくものは⾃⼰負担が抑えられます。69歳までは3割、70歳〜74歳は2割、75歳以上は1割を⾃⼰負担します(70歳以上で現役並みの所得があると3割です)。

ただ、1割や2割でも⾼額になったときには、1カ⽉間に負担する⾦額には上限があります。⾼額療養費制度といって、1カ⽉に所定の上限額を超えた⾃⼰負担額は、払い戻しを受けることができます。

細かな治療の内容は認知症の種類や症状などによって個⼈差があるようですが、厚⽣労働省の「患者調査」※1によると、アルツハイマー病の患者数は外来治療を受けている⼈も多いものの、⼊院している⼈も少なくなく、その期間は平均で約250⽇に及びます。またアルツハイマー病以外の認知症では外来よりも⼊院治療を受けている⼈が多く、⼊院期間の平均は約350⽇と、1年近いことがわかります。

認知症の治療中には、診療費に加えて⼊院にもお⾦がかかりそうです。

在宅や施設で受ける「介護サービス費用」

認知症にかかると、⾝体の⾃由がきかない、判断能⼒が落ちて⽇常⽣活を⾃分で営むのが難しくなることがあります。介護を要する場合も多く、介護サービスの費⽤もかかります。

介護サービスには、在宅で受ける訪問看護や訪問介護、⼊浴の介助、リハビリ、施設に通って利⽤する介護やリハビリ、施設に⼊居して介護を受けながら⽣活するなど、さまざまな形があります。どのようなサービスをどのように利⽤するかは、⽣活上の⾃⽴度や希望などに応じて作成されるケアプランで決まります。

具体的な利⽤料は個々のサービスによって異なりますが、65歳以上では公的な介護保険制度によって、原則として⾃⼰負担1割で利⽤できます。また、⾞いすや歩⾏器、つえ、⼿すりなどの福祉⽤具をレンタルする場合も、公的介護保険制度の対象になるものがあります。

在宅で受ける居宅サービスの費⽤は、1割負担で利⽤できる上限額(利⽤限度額)があります。限度額は要介護度に応じて、要⽀援1では⽉に50,030円から、要介護5では360,650円までに設定されています。限度額を超えてサービスを利⽤すると、全額が⾃⼰負担になります。ただし、「⾼額介護サービス費」といって、1カ⽉の⾃⼰負担額が所定額を超えると、超えた分が戻ってくるしくみもあります。

施設に入居するときの「入居費用」

⽼⼈ホームなどの施設に⼊居する場合には、⼊居費⽤もかかります。居住費、⾷費は、⼊居している間定期的にかかり、施設によっては⽇常⽣活費が別途かかります。施設の種類や要介護度などによって幅がありますが、特別養護⽼⼈ホームなどの介護⽼⼈福祉施設では⽉額10万円前後が⽬安のようです。

これとは別に、⼊居している施設で受ける介護サービスにも費⽤がかかりますが、これは公的介護保険制度の対象になります。⾃⼰負担は基本的には1割です。

⼊居するにあたって、まとまった初期費⽤がかかる施設もあります。こちらも施設の種類によって⼤幅な違いがあり、⼊居時に数⼗万円、数百万円かかるところもあります。

認知症との⽣活でかかるお⾦はこのように、症状や要介護度、⽣活スタイルなどによって個⼈差があります。病気と⻑く付き合っていく可能性もあるので、お⾦の負担が膨らむケースもあります。こうしたお⾦のことも含めて、地域の包括⽀援センターなどでは、本⼈や家族の相談にのってもらえます。経済的な相談や助成制度の紹介をしてもらえることもあります。

認知症でかかる費用に備える生命保険3つ

元気なうちに、将来にかかるかもしれない認知症に備えておきたいときには、⺠間の保険を検討することもできます。おもに、認知症保険、介護保険、医療保険は、認知症になったときや治療を受けるときなどに対応できそうです。

認知症保険

認知症に特化した保険で、認知症と診断されたら⼀時⾦がおりる保障が付いているのが⼀般的です。医療保険とは異なり、治療のために⼊院することは要件になっていないものが多いため、通院で治療を受けるときの医療費や、離れて暮らす認知症の家族を⾒守るホームセキュリティなどのサービス、⾃宅のバリアフリー⼯事など、認知症と付き合いながらの暮らしでかかる費⽤にもあてられそうです。

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介護保険

保険会社所定の要介護状態と認定された場合に、給付⾦を受け取れるものが⼀般的です。認知症は介護が必要な状態になることが多いため、⺠間の介護保険から給付を受ければ、認知症と付き合いながらの暮らしの経済的な⽀えになるかもしれません。

給付⾦の受け取り⽅には、まとまった⾦額を受け取れる「⼀時⾦タイプ」と、毎年決まった⾦額を受け取れる「年⾦タイプ」の2種類があります。⾃宅のバリアフリー⼯事や施設の⼊居費⽤などまとまった費⽤には⼀時⾦タイプ、⽇常的に利⽤する介護サービスの⾃⼰負担分や⾒守りサービスの利⽤料などには年⾦タイプで受け取ると活⽤しやすいのではないでしょうか。

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医療保険

認知症の治療のために⼊院をする場合には、医療保険が活⽤できるかもしれません。⼀般的な医療保険の「⼊院給付⾦」は、「⼊院1⽇あたり1万円」のように、⼊院⽇数に応じて受け取るしくみです。

また⼀部の医療保険には、認知症によって要介護状態になったときに⼀時⾦を受け取れる特約をつけられるものがあります。認知症以外の病気や、病気・ケガでの⼊院に備えながら、認知症にも対応したいときに活⽤できそうです。

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認知症の負担について理解を深めて、備えを意識

健康に暮らしていると、認知症になったときにどんな⽣活になるのか、いくらお⾦がかかるのかをイメージするのは難しいですよね。少しずつ進⾏していく病気の特性上、治療や⽣活の変化が少しずつ出てくるケースもあるでしょう。すると、備えを検討するきっかけをつかみにくいかもしれません。認知症でかかるお⾦や備え⽅について知って、もしものときに早めに対応できるようにしておきたいですね。

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※1 出典:厚⽣労働省「患者調査」

参考︓厚⽣労働省「みんなのメンタルヘルス
参考︓厚⽣労働省「介護事業所・⽣活関連情報検索」
参考︓厚⽣労働省「認知症に関する相談先」

  • 執筆者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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