ブレーキの鳴きが恥ずかしい!キーっという音は整備不良?
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
ブレーキの鳴きは欧州車の1つの特長
「ブレーキの効きは悪くない」という状況から察するに、質問者の方は欧州車に乗っているかな? なんて予想しましたが、どうでしょう?
というのも高速道路の最高速度が日本よりも30km/h以上高いヨーロッパでは(ドイツの場合は速度無制限区間のあるアウトバーンも存在します)、ブレーキの“鳴き”よりもまず確実にクルマを「止める」ことを第一としている場合が多いのです。
ブレーキが鳴るのはなぜ?
ではなぜ、ブレーキが“鳴く”のでしょう?
それはブレーキパッドが、ブレーキローターをこするからなんですね。
そして多くの場合ブレーキから音が出るときは、ブレーキを強く踏んでいるときではなくて、軽く踏んでいるときではないでしょうか?
アナログのレコードプレーヤーを思い出して頂くとわかりやすいのですが、そのときブレーキパッドは針で、ローターはレコード盤のような関係になっています。ミクロで見るとブレーキローターはレコード盤のようにギザギザしており、そこにパッドを押しつけることによって、クルマは制動力を得ているのです。
だから踏力が緩んだときなどは、“キ~”という高周波が出るんですね。そして現代ではほとんどのメーカーがこうした状況でも人の可聴域に入らないように、素材同士の摩擦や当たり方を工夫しています。しかしエンジン出力が高い高性能モデルなどの場合は、前述した通りまず鳴きよりも、安全を優先する場合があります。
ブレーキパットの減りを知らせる場合も
またブレーキパッドが減ってくると、これを知らせるために金属の薄板(パッドウェアインジケーターといいます)をローターに当てて、鳴いて知らせる手法もあります。
これが高級車になるとブレーキパッドの中にセンサーを組み込んでいるため、音はしません。
ブレーキが鳴るのはある意味正常
ともあれブレーキパッドがきちんと取り付けられていて、偏減りもしていなければ、ブレーキが鳴くのはある意味正常なことだと言えます。ですから車検はもちろん、定期点検でブレーキの状態を正常に保つことはとても大切なのです。
それでも気になる場合はブレーキパッドの材質を変更することも考えられますが、メーカーがテストを繰り返して装着する純正ブレーキパッドは、日常から高速走行まで一番スイートスポットが広く取られていると私は思います。
欧州車などは国産車に比べて「ホイールにブレーキダストが沢山付く」とよく言われますが、これこそがパッドとローターを摩擦させた証拠です。環境問題を考えてこうしたダストの排出を抑える技術も進んできていますが、まずはきちんとクルマを“止める”ことが大前提なのです。
回生ブレーキの性能向上に期待
そしてこうした「音問題」や「ダスト問題」は、将来的には回生ブレーキによって解決されるのではないかと私は思います。
回生ブレーキとはピュアEVやハイブリッド車に多く用いられるシステムで、減速時にモーターの回転抵抗を利用して車速を落とすしくみになっています。
これまで自動車は、ローターをパッドで挟んで摩擦することによって、速度を熱エネルギーへと変換してクルマを止めていました。しかしその熱エネルギーは再利用されることなく大気へと放出されていたのです。
これを発電機を回す力に再利用する回生ブレーキは、まだフィーリング的に油圧ブレーキに劣る部分もありますが、今は通常のブレーキシステムと併用することで、徐々にその性能を高めてきています。そして、これからの主流になって行くと思います。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。