子どもの車酔いは防げる?【前編】車酔いの原因とは
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
乗り物酔いは防げる、と思い込もう!
全く乗り物酔いしない子もいますが、一般的に小学校に入る年齢あたりから乗り物酔いをする子が増えてくると言われています。
お子さんもこれに当てはまりますね。クルマ酔いはツライですから、周囲の大人から、あれがいい・これが効くらしい、と言われて最初は色々試してみるものの、うまくいかないことが続くと「やっぱり気持ち悪い!何をやっても無理なんだ‼︎」と逆効果になることもあります(私がそうでした)。変に自己暗示にかかり、乗り込んだ瞬間に気持ち悪くなる子もいます。
ちなみにP&G ジャパン(プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン)の調査※1によると、91%もの子供が、クルマに乗りこんだだけで酔ってしまった経験があるそうです。車内の独特なニオイなどで、過去の嫌な記憶が蘇ってしまうようですね。
これから、社会見学や修学旅行といった学校行事を不安なく迎えるためにも、「乗り物酔いは防げる」という自己肯定感をいまのうちに持てるかどうかが、ひとつのカギだと思います。
子供はどこに座らせる?
酔いにくい席を選ぶことも、そのひとつですよね。揺れや振動が伝わりやすい席は気分も悪くなりやすいですが、コンパクトカー、セダン、ミニバンなど色々なタイプの車種があって乗り心地も様々なので、どの席がそれに当てはまるかを断定するのは難しいです。ただ一般的に“酔いにくい席”と言われるところがあります。
それは「助手席」です。
視界が開けていることによって、クルマの進む方向が見えやすいので、次の動きを予測しやすいのがその理由。私はインストラクターをするとき、助手席の同乗者に、「次に進む方向を予測して、先を見定めていると酔わないですよ」とひとこと添えています。もっというと一番酔わないのは、運転席です。
これはクルマ酔いのメカニズムと関係するので、後ほどご説明しますね。
ただ、質問者のお子さんはジュニアシートを後部座席で使われているとのこと。
そうなるとジュニアシートを助手席に付け替えること自体が、法律的にはOKなものの、推奨はされていません。理由は、万が一の事故でエアバッグが作動した場合、その衝撃でお子さんが怪我をする可能性があるためです。
このときご自身のクルマに助手席のエアバッグを解除する機能があればよいのですが、安全に対するポリシーの違いから、エアバッグのオフ機能を積極的に取り入れていないメーカーもあります。エアバッグのオフ機能がない場合、助手席のシートを一番後ろ側に引いてシートを装着する方法も考えられますが、やはりリスクは残ります。
というわけでまずは、ご自身のクルマがどうなっているかを確認しましょう。
私にもクルマ酔いしたツライ経験が・・・
私の子供の頃は、クルマは高級なものでした。もちろんいまでも高級品であることに変わりないのですが、その価値はもっと高かった。
そうなると子供は、いつも後部座席に座らされました。乗り物酔いをする私は「前に座りたい!」というのですが、助手席はいつも父か母(どちらかが運転します)、そして兄や姉たちに取られてしまうのです(笑)。
そして旅行が始まります。私は文句を言いながらも、後ろの座席に座ります。
そして子供ですから、現地に着くまでオモチャで遊ぶ。ときには本やマンガを読む。……おわかりですね(笑)。そうすると、必ずといってよいほどクルマ酔いします。「気持ち悪い……」と言った頃にはときすでに遅し。
そして再び、しかられるわけです。
ですから大人になったら、絶対に自分でクルマを運転する!と思いました。だからこの仕事に就いたのでしょうか?(笑)。
乗り物酔いは“情報のズレ”が原因
では、乗りもの酔いを防ぐには、具体的にどうすればいいのでしょう?
私の場合は「ほかの要因を取り除く」やり方で対策します。そのために、まずは、乗り物酔いのメカニズムを知っておきましょう。
そもそも乗り物酔いは、“情報のズレ”が原因と言われています。クルマに乗っている時のランダムな揺れや過度な加減速は、耳の中の三半規管などを通じてキャッチされ、脳に「身体の平衡バランスが崩れているよ!」という情報が送られます。
脳は「それじゃあ、バランスを取らなきゃ」と思うのですが、体は固定されて動いていないのに、見ている景色はすごいスピードで流れて小刻みに揺れている。こうなると各器官から入ってくる情報がズレているため脳が混乱し、心臓や胃、腸の動きなどをコントロールする自律神経の働きが乱れてしまうといいます。
その結果、気持ち悪くなったり、頭が痛くなるんですね。
助手席が酔いにくいのは、一歩先の動きが予測しやすい事で、こうした情報のズレを防げるからなのでしょう。ですから同乗者に不快な思いをさせないためにも、予測のしやすい運転をすることは、とても大切です。
三半規管や脳の発達で自然と克服されることも
と考えると、幼児期を過ぎると酔う子が増えるのは、未熟だった三半規管や脳の働きが順調に発達している証とも取れますね。さらに年齢を重ねると、乗り物に乗る経験が積み重なり三半規管も鍛えられていくので、自然と克服する方も増えてきます。
とはいえ、子供に「ガマンして慣れろ!」というのも酷な話なので、次回は身体がこうしたギャップを起こさない方法について考えてみましょう。
※出典1:プロクター・アンド・ギャンブル・ジャパン「車酔いしやすい子どもとパパ・ママ徹底調査」(2015年2月発表)
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。