クルーズコントロール、ほとんど使わないけどこれって必要?これからどうなる?
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る
記事の目次
未来の自動運転に向け、クルーズコントロールは進化している!
オートクルーズ、またの名を「クルーズコントロール」ですね。
これはドライバーが任意に設定した速度を、クルマ側が一定に保ってくれる装置で、初めて導入したのはアメリカのクライスラー社だといいます。
クルーズコントロールの利点はまず、スピードの出し過ぎを抑制できること。高速道路の速度制限以内に合わせておけば、気づかぬ間にアクセルを踏みすぎることもなくなりますから、スピード違反の取り締まりに対してもひとつの安心材料になりますね。
アクセル操作がないため速度を体感しにくいことも
質問者さんが「遅く感じた」理由は、自分の足でアクセルを踏んでいないからでしょう。人間は普段走っているときも無意識のうちに、他車との間隔を右足で調整しています。
しかしクルーズコントロールではこのアクセル操作感がなくなり、かつ速度も一定になるため、速度を体感として得にくいのだと思います。電車に乗っているようなものと言えばよいでしょうか。
日本の道路はクルーズコントロールに不向き?
また一般的なクルーズコントロールは、ブレーキを踏むことで解除されます。そしてこの特性が、日本の道路では使いにくい場合が多いのです。
なぜなら道幅が狭く、適度に混んでいて、カーブが多いと、どうしてもブレーキを踏まなくてはならないからです。よって日本でクルーズコントロールは、普及しにくい側面がありました。付いていることが高級車の証という時代が、長かったように思います。
対して北米では、これが重宝されます。
果てしなくまっすぐに続く、道幅の広いハイウェイ。空いている道路を飛ばすでもなく淡々と走る。こうした環境でクルーズコントロールはドライバーの疲れを軽減し、なおかつ一定速で走ることによって、燃費も平均化することが可能となるのです。トラックやバスといった、大型車には有効な装置ですよね。
ですから質問のお答えとしては、質問者さんのようにクルーズコントロールを魅力的に感じない人がいても不思議ではありません。
かくいう自分も、これを使って走ったことは、あまりありません。
クルーズコントロールがアダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)に進化!
ただ近年は、このクルーズコントロールが「アダプティブ・クルーズ・コントロール(ACC)」へと進化して、その可能性を大きく広げました。
レーダーやカメラ、各種センサーをクルマに搭載することで、他車との距離感を保ちながら、一定速度で走れるようになったのです。
こうすることでドライバーは緊急回避以外でのブレーキを踏む頻度が減り、クルーズコントロールが解除されにくくなりました。また最近ではブレーキを踏んでもACCが途切れず、減速後に距離感を保ちながら速度を回復してくれるなど、その制御はより緻密なものになってきています。
クルマが道路状況に合わせて動く「ハンドル支援」機能も
その最たる例が「ハンドル支援」でしょう。
道路状況をモニタリングしたり、前車を追従したり、車線を読み込んだり。さらにはナビのマップと連動するなどして、道路状況に合わせクルマ側がハンドルを切って行く。
日産スカイラインの「オートパイロット2.0」やBMW3シリーズの「ハンズ・オフ・アシスト」では、ある一定条件下で両手を離して自動運転させることまでもが可能となっています。自動運転の未来に対するアプローチですね。
ただ現状では、まったくのクルマ任せな運転は許されていませんし、私も推奨しません。ドライバーは常に周りの状況とクルマの運行に対して、責任を持つことが何より大切だと思います。
ですから自動運転ではなく、ハンドル“支援”なのですね。
ACCのアシストを使って運転を快適に
そしてこのハンドル支援を伴うACCは、運転に自信のない方をアシストしてくれます。
また、ついうっかりよそ見やボーッとしたときに、クルマを車線内に留めようとしてくれます。
そして渋滞時には、前車との車間距離を保ちながら、低速走行をしてくれます。
ノロノロ運転では注意散漫になることも多いですが、私もACCを使いながら、同時に気持ちをリフレッシュさせて渋滞を乗りきることは多いです。
話を戻せば、日本のような道路環境においては、クルーズコントロールから発展したアダプティブ・クルーズ・コントロールの方が、役立つと思います。
ACCに関するご質問は多いので、私もその都度情報を更新させながら、お答えして行きたいと思います。
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。