

座り⼼地が違うってホント︖スポーツシートに換える必要はある︖
山田 弘樹
モータージャーナリスト、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 >プロフィールを見る

記事の目次
運転姿勢をサポート!シートで乗り心地は変わる
ご主人の気持ち、プロのクルマ好きである私もよくわかります(笑)。
チャイルドシートの選び方で何度も述べているのですが、シートは体を支える大切な部品です。これが体にピッタリと合っていることで、カーブでクルマが傾いたときや、緊急ブレーキをかけたときなどに、お子さんの体が転がることなく、安全を保つことができるのです。その際は、当然シートベルトをきちんと装着していることが重要です。
そしてこれは、大人だって同じなのです。
特に運転席のシートをしっかりとしたスポーツタイプに交換すると、運転中も姿勢が乱れず、安定して走ることができます。だから多くの場合こうしたシートは「スポーツシート」と呼ばれているんですね。
シートへのこだわり、それはクルマへの愛と男のロマン!
でも奥さんは「そんなに飛ばさないんだから、普通のシートでいいじゃない!」と思うことでしょう。
最近のクルマのシートはよくできていて、ふっかりとした乗り心地でも体をきちんとサポートしてくれます。
ご自宅のクルマにはレザーシートが付いているようですから、便利な電動調整のシートを外してまで高いシートに買い換えるのは、不思議でならないに違いありません。
では、なぜご主人はシートを交換したがるのか?
その理由をひとことで言うと…「男のロマン」に他ならない気がします(笑)。
クルマ好きの気持ちを代弁すれば、より本格的な部品へと交換することで、愛車が立派になって行く気がするのです。
そもそも、スポーツシートは普通のシートと何が違う?
別にサーキットのような場所で走るのではないのに、スポーツシートを付けたいと思うのにも、きちんとした理由があります。
こうしたシートは体をしっかりサポートするためにクッションが硬めに作られているものが多く、長距離移動でも腰が痛くなりにくいのです。
またリクライニング機構がダイヤル式になっているタイプでは、通常のレバー式よりも細かく角度を調整することができます。このダイヤル式は調整時も背もたれがフリーにならないため、少し走ってリラックスしたら、少し角度を寝かせるなど、運転中でも安全に操作・調整ができます。
クルマのシートには有名ブランドも!
日本ではBRIDE(ブリッド)、イタリアではSPARCO(スパルコ)やOMP(オー・エム・ピー)。各自動車メーカーのワークス・ブランドからも沢山シートが発売されていますが、最も有名なのはやはりドイツのRECARO(レカロ)でしょう。
1906年という早い時期から馬車製造会社としてその歴史をスタートさせ、その後は自動車車体製造会社へと転身。そして1963年にシート専業メーカーとなったレカロ社は、今でも様々な自動車メーカーにシートを供給しています。
またヨーロッパでは飛行機や電車のシートにも多く採用されているので、車内で「RECARO」の文字を見たことがあるかもしれません。
そういう意味では、ご自宅のクルマのシートが、まずはレカロ製かどうかを確認することろから始めるべきかもしれないですね(笑)。それくらい、レカロは実績のあるシートメーカーです。

実は私の愛車も、レカロ社シートを標準で装着しています。
さらに私はスポーツ性を優先するため、同じレカロ社製のリクライニングしない「バケットシート」に付け替えています。相談者さんからすると、これは「まったく意味がわからない!」行為かもしれません(笑)。
レカロが素晴らしいのは、今では当たり前となったエルゴノミクス(人間工学)に基づく開発を、とても早い段階から行っていたこと。カーブで体を支えるサイドサポートの張り出しだけでなく、背骨が自然な形になるシートバック形状や、腰に負担が掛かりにくいクッションを採用していることでしょう。
ドイツはクルマ社会ですし、ドライバーも日本人より大きな体をしていますから、長距離移動に対するケアは必要だったのでしょう。
また私の仕事環境でも、長距離運転を頻繁に行うカメラマンなどは、レカロを愛用している人が多いです。
一度座って、一緒に座り心地を試してみては
そういう意味で言うと、もし相談者さんが長距離移動をあまり行わないのであれば、乗り心地を優先したシートでも十分なはずです。ただダンナさんの気持ちが理解してあげられるならば、シート交換を検討してあげてください。
実際にその座り心地や質感を確かめられる店舗も今は多いので、一緒にシートを確認してみるのも良いと思いますよ!
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執筆者プロフィール
モータージャーナリスト
日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、A.J.A.J.(日本自動車ジャーナリスト協会)会員自動車雑誌「Tipo」の副編集長を経験。数々のレースにも参戦。2018年「スーパー耐久富士スーパーテック24時間」ではドライバーとして2位獲得。執筆活動、レースレポート、ドライビングスクール等の講師、メーカー主催イベントの講演など行う。