災害時には、まずは自分と家族の身を守ることが一番ですが、家族の一員であるペットの安全も大切です。でも、ペットをどのように避難させるか、日ごろからしっかり考えている人は意外と少ないかもしれません。
そこでここでは、災害時のペットの避難方法をご紹介します。
ペットの防災対策をしている人は約半数
アイペット損害保険株式会社の調査※1によると、災害に備えてペットに対策をしている人は約半数。しかし、犬の飼い主で60.9%、猫の飼い主で35.8%と、ペットの種類によっても差があるようです。
具体的には、「“おすわり”や“待て”などの基本的なしつけができている」(犬62%、猫6.5%)、「普段からクレートやケージに入ることに慣れさせている(犬42%、猫48.6%)」など、日頃のしつけに関わることが多くみられます。
ほかに、「ペット用の防災グッズを揃えている(犬31.6%、猫41.6%)」という回答も見られます。備えている防災グッズには、フード・飲料水が最も多く、トイレ用品、リード、ケージやクレートなどが挙がっています。
犬の避難生活で最も不安なのは他人とのトラブル
一方で、いざ避難生活をすることを考えると、飼い主の方は不安も大きいようです。犬では「他人や他のペットとのトラブル(犬61.9%、猫56.5%)」、猫では「慣れない場所でのトイレ(犬48.4%、猫59.5%)」が最も多い回答ですが、ほかにも「ペットの食料の備蓄量(犬50.3%、猫54.3%)」、「体調不良(犬46.9%、猫52.8%)」も約半数の飼い主が挙げています。
避難生活では人間もペット達もいつもとは生活環境が変わり、戸惑うことも多いはず。日頃からしつけや健康管理をしっかりしておくことで、人間もペットも、いざというときにかかるストレスを軽減できるかもしれません。
また避難所に入ると、周囲とのかかわりにも配慮する必要が出てきますから、ルールやマナーをあらかじめ知っておくと安心ですね。
ペットの避難は「同行避難」が原則
では、災害時にペットと避難するときはどのようにすればよいのでしょうか。環境省は「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」※2で、ペットと飼い主が一緒に避難する「同行避難」を原則としています。ただし、まずは飼い主の安全が優先です。大切なペットを守るのは飼い主ですから、自分の安全を確保したうえで、ペットと一緒に避難しましょう。
避難所にペットを同伴できるか確認を
「同行避難」はペットと一緒に避難すること全体を指しますが、必ずしも避難所にペットと一緒に入るとは限りません。避難所は居住地区により指定されていますが、自治体によってはペットを同伴できない避難所があります。また、避難所によってペットを屋内まで連れていけるところ、屋外につなぐところなど細かな対応が異なることもあります。
いざ避難所に行ったものの、ペットはお断りということにならないように、ご自身の地域の避難所でペットを同伴できるのか事前に確認をしておきましょう。管轄の自治体に問い合わせるとよいでしょう。
日ごろからペットの避難経路の確認を
同行避難をするときには、犬はリードをつけ、首輪が緩んでいないか確認しましょう。小型犬はリードをつけたうえでキャリーバッグやケージに入れてもよいです。猫はキャリーバッグやケージに入れ、扉をしっかり閉めましょう。
また、いつものお散歩などで、自宅から避難所までの避難経路を実際に歩いておきましょう。所要時間がどれくらいか、経路の中に川や用水路、ブロック塀など倒壊の危険があるものがないかを把握しておくと良いでしょう。これは、飼い主の身を守るうえでも重要です。
ペットとの避難生活の過ごし方
避難所には、お年寄りから赤ん坊までたくさんの方が集まります。共同生活をするわけですから、ルールを守ってお互いが気持ちよく過ごせるようにしたいものです。
また、ペットが好きな人も嫌いな人もいます。また、アレルギーを持っている方がいるかもしれません。災害によるショックや、住み慣れた家とは異なる環境での生活で、人もペットも過渡なストレスを感じやすい状態にもなります。ルールを守るのはもちろん、周囲の人への配慮も大切です。
避難所でのマナーが大切
ペットのお世話は、飼い主が責任もってするのは避難所でも同じです。フンや体毛の始末、においの対策など衛生的な環境を保つのは大前提です。フンは自治体のルールに沿った処理をする、毛はこまめなブラッシングをしてガムテープなどで周辺の掃除をすると良いでしょう。
また、避難生活ではペットにもストレスがかかり、噛む、吠えるなど普段では考えられないような行動に出る可能性があります。避難所のルールに沿って、必要に応じてキャリーバッグやゲージに入れる、ペットの不安を取り除いてあげられるように十分にケアしてあげるなどが効果的でしょう。
ペットが避難所に入れないときはどうする?
災害時に設置される避難所のなかには、ペットが入れないところもあります。または、吠えてしまって周囲に迷惑をかけるので避難所にいられないケースもあります。そんなときには、車の中やテントで避難生活を送る、ペットだけ家に残して飼い主は避難所で生活する場合もあります。一時的に知人や保護施設に預けることも一つの手段です。
ペットだけ家に残す場合は、ペットが逃げ出さないようにしっかりつなぐか、ケージなどに入れておきましょう。また、自治体の動物担当部署にその旨を届けておきましょう。
避難生活ではペットの健康管理が大切
避難生活ではストレスを感じやすいため、ペットも体調を崩したり病気になったりしやすくなります。元気かどうか、便の状態や普段の様子との違いをチェックしましょう。いつもより多めにスキンシップを取ると、ペットの不安感を取り除くことができますし、体の変調のチェックもできます。
避難所内には多くのペットが一緒にいますので、感染症の危険もあります。ほかのペットと過度な接触はせず、清潔を保つようにしましょう。
車中避難をすると、狭い空間のため運動不足になりがちです。車外に出て運動をするなど、意識的に体を動かすことが重要です。暑い季節は熱中症の危険もありますので、十分に換気をしてこまめに水分補給してあげましょう。
避難生活で病気になったらペット保険はおりる?
ペット保険は、地震または噴火、これらによる津波、風水害等の自然災害によって被った傷病は保障の対象外とされています。たとえば、地震が発生して家具が倒れたりガラスが飛び散ったりしてケガをしても、保険はおりません。
ただし、避難生活中に体調を崩してしまい、動物病院にかかった場合には基本的に保障されます。健康管理に気をつけたいものですが、万が一具合が悪くなってしまったときには、ペット保険が活用できるかもしれません。
災害に備えて事前の準備を
災害はいつ発生するかわかりません。その時に慌てないよう日頃から準備をしておくことが大切です。ではどんな準備が必要でしょうか。おもに、しつけや健康管理、迷子対策、避難生活用の備蓄品の準備が挙げられます。
しつけ | 「待て」「お座り」「おいで」などができるようにしつけをする ゲージやキャリーバックに慣らしておく 人や動物にならせておく トイレのしつけ 吠えないようにしつけをする |
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健康管理 | 狂犬病やワクチンの接種 フィラリア等寄生虫の予防 不妊・去勢手術 |
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迷子防止 | マイクロチップの挿入と飼い主登録 首輪に迷子札をつけておく |
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備蓄品 | ペット用の災害持ち出し袋を準備する |
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出典:環境省パンフレット「ペットも守ろう!防災対策」より一部抜粋
持ち出し袋には、薬、ペット―フード、水、食器、リード、トイレシート、お散歩セットなど、普段の生活に欠かせないものと、飼い主の情報やワクチン接種状況、写真などペットの情報がわかるものがあると安心です。フードと水は5日分以上あるとよいでしょう。さらに、普段使っているタオルやおもちゃがあるとペットの気持ちも落ち着くでしょう。
「備えあれば憂いなし」という言葉がありますが、人と同じようにペットの安全対策を考えてほしいと思います。ペットの安全を守れるのは飼い主だけだということを忘れないでください。日ごろから家族で情報収集と災害時の対応を話し合っておきましょう。
※1 出典:アイペット損害保険会社「ペットのための防災対策に関する調査」
※2 出典:環境省「災害時におけるペットの救護対策ガイドライン」
参考:環境省パンフレット「人とペットの災害対策ガイドライン」
参考:環境省パンフレット「備えよう!いつもいっしょにいたいから」
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執筆者プロフィール
伊藤 魅和(いとう みわ)
FP office ITO代表
CFP(R)認定者、住宅ローンアドバイザー、相続アドバイザー、2級DCプランナー
資産運用を中心に住宅ローン・家計の見直しなどの講師・相談・執筆を行う。日本FP協会東京支部幹事、2016年くらしとお金の相談室相談員、2017年FP広報センタースタッフ、日本証券業協会金融・証券インストラクター、金銭基礎教育プログラムMoney Connection 認定講師、WAFP関東会員。
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監修者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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