ワンちゃんやネコちゃんなど大切なペットが病気やケガをしたとき、動物病院でかかった医療費の負担を軽減してくれるペット保険。私たち人間のように公的な保険証がないワンちゃんやネコちゃんたちの体調管理をしてあげるうえで便利なものですが、保険を利用できる条件やしくみは人間向けの保険と異なる部分があります。
そこで、いざというときに保険を使えなかった!とならないように、ペット保険で注意したいポイントを知っておきましょう。
1.補償が始まるタイミングは申込みと同時ではない
保険は契約をするとすぐに補償されると思いがちですが、ペット保険は必ずしも申し込みと同時に補償が始まるわけではありません。
始期日前の病気やけがは保険の対象外
ペット保険に契約するときには、まず申込書を提出します。
保険会社所定の審査期間を経て保険の「始期」を迎えると補償が始まります。審査期間は保険会社や保険料の払込方法などによって異なりますが、おおむね1カ月程度かかるペット保険が多いようです。
保険の始期を迎えるまでは、ペット保険の補償は始まっていません。ですから、申込手続きをした後であっても、保険会社にて補償が開始されていないタイミングでワンちゃんやネコちゃんが病気やケガをしても、保険はおりません。
待機期間中に発症した病気は保険の対象外
さらに、ペット保険のなかには「待機期間」を設けているものがあります。
これは保険の始期から一定期間は保険金がおりない期間のことで、初めてペット保険に契約するとき(初年度)に設定されます。
待機期間は30日間と設定されるペット保険が多いようです。ペット保険によっては、がんについては待機期間を120日と設定しているものもあります。この期間中に発症した病気は、保険の対象になりません。待機期間が終了した後でも、その前に発症した病気が続いていて動物病院で診察や入院をした場合には保険がおりません。
こうした待機期間が設けられているのは、契約する時点で健康なワンちゃんやネコちゃんがペット保険に契約できることを原則としているためです。契約前から病気にかかっていて潜伏期間中に保険に契約するケースなどでは、保険金を支払う保険会社側のリスクが高いため、こうしたリスクを考慮して設定されているようです。
ただし、待機期間中に補償されないのは病気のみです。保険の始期日以降なら、ケガをした場合には待機期間中であっても保険の対象になります。
2.補償されない病気や治療がある
ペット保険は動物病院で費用がかかったときに保険がおりるものですが、病院にかかった用件によっては保険の対象にならないものがあります。
おもに、病気やケガに該当しないもの、予防にかかわるもの、先天性の異常にかかわるときには、動物病院にかかっても保険がおりません。
病気やケガではないもの
病気やケガの治療でかかった費用を補償するのが原則であるため、病気・ケガにあたらないときにはペット保険はおりません。
フィラリア・ノミ・ダニの駆除
たとえば多くのワンちゃんやネコちゃんが悩まされるフィラリアやノミ、ダニなど。
動物病院ではこれらの駆虫薬を処方してもらう、薬剤を投与してもらうことがありますが、その費用はペット保険の対象にはならないことがほとんどです。
妊娠・出産にかかわる処置
また、妊娠や出産にかかわる処置を受けたとき。異常がない妊娠や出産のほか、早産や流産をしたとき、帝王切開をしたときも原則として対象外です。
人間の医療保険では早産や帝王切開など妊娠・出産の異常による治療は給付の対象になりますが、ペット保険ではこの取り扱いが違います。あるいは、去勢や避妊手術に費用がかかったときも、保険の対象にはなりません。
爪切り、歯石取り、耳掃除
ワンちゃんやネコちゃんは、爪切りや歯石取り、耳掃除などのために動物病院に行くことがありますが、これもペット保険では費用が補償されません。これらの処置に関連して医薬品のシャンプー剤やイヤークリーナーを購入した場合も、原則として同様です。
マイクロチップの埋めこみ
ほかに、迷子対策のために近年奨められているマイクロチップ。動物病院で埋め込みますが、その費用もペット保険の対象外です(一部の自治体では費用の補助があります)。
予防の処置や予防接種で防げる病気
病気の予防や健康増進にかかわるものも、ペット保険の対象外です。
予防接種ワクチン
ワンちゃんやネコちゃんも、人間と同じように予防接種を受けることがあります。病気にかかる前に接種するもので治療ではないため、これもペット保険からの補償はされません。
予防接種をすれば防げる病気の治療
さらに、ワンちゃんやネコちゃんには狂犬病など犬やネコに特有の感染症・病気があります。
これらはワクチンを予防接種すれば予防できるとされています。そのため、予防接種を受けていなかったためにそれらの病気にかかってしまった場合には、治療のために動物病院を受診してもペット保険の対象外になることが多いようです。
健康食品やサプリメントなど
わが子の健康に気を遣う飼い主さんは、犬やネコ向けのアロマセラピーや温泉療法、健康食品やサプリメントなどを利用することがあるかもしれません。これらも、獣医師が治療のために処方する場合を除いて保険の対象外です。
先天性の病気
ペット保険は保険期間中にかかった病気やケガが対象です。契約前にかかっていた病気は、保険の契約後に発症しても原則として補償されません。これは、生まれつきの異常に対しても同じように取り扱われます。
一部のワンちゃんやネコちゃんには生まれつきの先天性異常がみられることがありますが、保険期間が始まる前に診断されていたら、その病気が原因で動物病院に通院や入院をしたときに保険の対象にならないことが多いようです。
これら、保険の対象外になる内容については、各ペット保険会社がウェブサイトやパンフレットなどで公表していることが多いです。契約前に一度確認しておくとよいのではないでしょうか。
3.保険がおりる回数・金額に限度があるものも
入院・通院・手術をしたときにペット保険から保険金を受け取れる回数や金額は、保険会社により上限が設けられていることがあります。
手術の上限回数・金額
手術について上限がある場合には、1年間に保険金がおりるのは2回まで、合計20万円までなどの制限が設けられています。
一部の保険会社では、同じ病気を理由とした手術については保険金を受け取れるのが年1回までなどとしていることもあります。
入院・通院の上限回数・金額
また、入院や通院にも回数や金額に上限を設定しているペット保険が多いです。上限がある場合、回数は年間20日前後、金額は1回につき1万円~3万円前後に設定されるプランが標準的です。
実際に入院や通院をしてペット保険から保険金を受け取ったのちに保険契約の更新時期を迎えると、通算回数がリセットされ、翌年度からは改めて通院回数をカウントします。ただ、回数がリセットされない保険会社もあり、前年に通院したときと同じ病気が理由で通院するときには、前年からの回数を通算するケースもあるようです。
なかには、回数には上限がなく補償限度額までの範囲なら何回でも保険がおりるものもあります。
いずれのタイプでも、もし同じ病気で何度も通院や手術をしたり、治療が長期間にわたったりすると、かかる費用のすべてをペット保険でカバーできないことがあるかもしれません。
4.病気にかかるとペット保険の加入に制限がある
ペット保険は健康なワンちゃんネコちゃんが加入するのが原則です。契約するときには告知が必要で、契約前の一定期間中の通院歴や持病、先天性異常の有無などを保険会社に申告します。
ここで告知した内容によってはペット保険に加入できない、契約に条件が付くことがあります。希望のペット保険を広い選択肢から選ぶなら、できるだけ健康なうちに検討しておくのがよいのではないでしょうか。
ペット保険の乗り換え時も告知が必要
多くのペット保険では、一度契約するとその後は終身にわたり更新できます。契約中に病気やケガをして保険金を受け取っても、同じ保険なら続けることができるのです(ただし、病気の状況などによっては更新できないケースもあります)。
しかし、それまで契約していたペット保険を解約して別のペット保険に乗り換えるときには、新たな契約のために再度告知が必要です。このときに持病があったり入通院歴があったりすると、希望のペット保険に契約できない可能性があります。
ですから、初めてペット保険を選ぶときには、その後ずっと続けるかを考慮して選ぶと安心です。わが子が歳を重ねたときにも補償の内容が十分か、更新後の保険料がいくらになるかなども踏まえて検討するとよいですね。
ペット保険のしくみを知って、わが子に合った備えを
このように、ペット保険は私たち人間の医療保険とは異なるしくみや条件があります。補償の範囲や条件などのしくみを理解して、いざわが子が病気やケガをしたときに費用がカバーされるように準備してあげたいですね。
今みんなが選んでいる保険は?
もっと詳しく商品一覧で比較
-
監修者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
気になった記事をシェアしよう!