全国の自治体では、自転車保険の加入義務化が進んでいます。お住まいの地域が自転車保険を義務化したら、強制的に自転車保険に入らなければならないのでしょうか?
自転車保険の義務化とは何か、義務化されている地域や罰則などについて解説します。
自転車保険は強制加入?
自転車を購入したり、自転車を持っていると自転車保険は強制的に加入しなければならないのでしょうか。
自動車(クルマ)にかける自賠責保険と違って、自転車保険は強制保険ではありません。あくまでも任意保険ですので、強制的に必ずかけるものではありません。
ただし、自転車保険の加入が条例で義務化されている地域があり、地域内で自転車を利用する際には自転車保険に加入する必要があります。
自転車保険の義務化とは
自転車保険の義務化とは、自転車に乗る人や自転車のレンタル・販売業者などに対して、自転車保険への加入やその情報提供などを義務づけるものです。各都道府県や政令市が定める条例「自転車の安全利用に関する条例」によって定められています。
自転車保険義務化の対象になるのは、その地域で自転車を利用する人やその保護者、学校、自転車を販売する事業者やレンタル事業者です。それぞれ、次のように自転車の利用に関する義務が課されます。
自転車に乗る人の義務
義務化されている地域内で自転車に乗る人には、自転車保険に加入する義務があります。
自転車で通学や通勤をする人、子どもの送り迎えをする人、サイクリングをする人など、義務化されている地域内を自転車で走行する人はすべて対象です。
また、自転車に乗るときには条例で定められたルールを守って、安全に運転することも義務づけられています。未成年の子どもが乗るときには、その保護者に、子どもを保険に加入させる義務があります。
加入を義務づけられている保険は、万が一自転車事故を起こして加害者になって、ケガをさせた相手に賠償をしなければならなくなったときに、賠償金に相当する保険金がおりる賠償責任保険です。
会社など事業者の義務
業務で自転車を利用する会社や事業所にも、自転車保険に加入する義務があります。
地域によっては、自転車通勤をする従業員が自転車保険に加入しているかを確認したり、加入していない人に保険や自転車の安全運転に関する情報提供をするよう、努力義務として呼びかけているところもあります。
自転車レンタル業者の義務
自転車をレンタルする業者にも、自転車保険の加入が義務づけられている地域があります。
時間貸しや月額制のレンタルやシェアサイクルを行っている業者が、一括で自転車保険に加入します。自転車を借りる人のケガや、利用者が第三者にケガをさせたときの賠償責任が補償されるもので、一般的にはレンタルの利用料に保険料が含まれています。
地域によっては、自転車を借りる人に安全運転や保険に関する情報提供を努力義務として求めているところもあります。
自転車販売店の義務
自転車屋さんなど自転車を販売する小売業者への義務を設けている地域もあります。
自転車を買う人に、自転車保険に加入しているかを確認したり、入っていない人には情報提供することなどを、努力義務としている地域が多いようです。
自転車保険の義務化の地域はどこ?
現在、多くの都道府県や自治体で自転車保険の加入が義務化されています。
義務化・努力義務化のある都道府県(2024年4月時点)
出典:au損害保険株式会社「自転車保険の加入義務化ってなに?」
義務化・努力義務化の都道府県一覧
自転車保険の加入については、地域によって「義務」または「努力義務」とされています。
「義務」は、その地域内で自転車を運転する人に対して自転車保険に加入しなければならない、つまり加入を義務としています。これに対して「努力義務」としている地域では、自転車保険に加入するよう「努めなければならない」など、「義務」に比べて強制の度合いが弱いという違いがあります。
義務化の都道府県一覧
義務化地域で自転車保険に入らないと罰則はある?
自転車保険は強制ではありませんが、義務化されている地域で自転車保険に入っていないと、どうなるのでしょうか?
義務化・努力義務化で自転車保険に入らないといけない?
2024年2月現在は罰則規定を設けている都道府県・自治体はありません。したがって、自転車保険が義務化されている地域で自転車保険に加入していなくても、罰せられることはありません。
しかし、義務化に罰則がないからといって自転車保険に入らなくてよいわけではありません。
自転車保険が義務化された背景には、自転車での事故によって大きなケガをしたり、他の人にケガをさせて高額な賠償責任を負ってしまったりする事例が全国で相次いだことがあります。
万が一未加入で事故を起こしてしまうと、高額な賠償費用が全額自己負担になります。罰則があるなしにかかわらず、入っていない場合、もしもの自転車事故時にどうなるかを考えておきたいものです。
自転車保険以外でも義務化に対応できることも
一方で、自転車保険が義務化されている地域でも、必ず自転車保険に新たに加入しなければならないわけではありません。自転車に乗っているときの事故で相手への賠償ができる保険なら、自転車保険以外でも義務化に対応できるのです。
おもな具体例には、自動車保険や火災保険などに特約で付帯できる個人賠償責任保険(補償)、日常生活賠償責任保険(補償)があります。義務化されている都道府県や自治体で自転車保険に入っていない場合には、これらの契約内容を確認してみましょう。
自転車保険の義務化を知って、保険の見直しや検討を
自転車保険が義務化・努力義務化されている地域で自転車に乗る際には、自分が加害者になったときの相手への賠償に備える保険が必要です。
入っていなくても罰則はありませんが、もしもの事故に備えて、自転車保険を検討したり、すでに加入している自動車保険などを確認しておくと安心ですね。
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監修者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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