全国の自治体では、自転車保険(自転車損害賠償保険など)の加入義務化が進んでいます。お住まいの地域が自転車保険を義務化したら、強制的に自転車保険に入らなければならないのでしょうか?
自転車保険の義務化とは何か、義務化されている地域や罰則などについて解説します。
自転車保険は強制加入?
自転車保険には、自動車の自賠責保険のような全国一律の強制加入制度はありません。ただし、各都道府県や自治体が定める条例により、自転車保険への加入を義務または努力義務としている地域が大半を占めています。
2026年6月時点で、義務化・努力義務化のいずれも導入していないのはわずか3県にとどまります。
自転車保険の義務化とは
自転車保険の義務化とは、自転車に乗る人や自転車のレンタル・販売業者などに対して、自転車保険への加入やその情報提供などを義務づけるものです。各都道府県や政令市が定める条例「自転車の安全利用に関する条例」によって定められています。
自転車保険義務化の対象になるのは、その地域で自転車を利用する人やその保護者、学校、自転車を販売する事業者やレンタル事業者です。それぞれ、次のように自転車の利用に関する義務が課されます。
自転車に乗る人の義務
義務化されている地域内で自転車に乗る人には、自転車保険に加入する義務があります。
自転車で通学や通勤をする人、子どもの送り迎えをする人、サイクリングをする人など、義務化されている地域内を自転車で走行する人はすべて対象です。
また、自転車に乗るときには条例で定められたルールを守って、安全に運転することも義務づけられています。未成年の子どもが乗るときには、その保護者に、子どもを保険に加入させる義務があります。
加入を義務づけられている保険は、万が一自転車事故を起こして加害者となり、相手にけがをさせて賠償しなければならなくなったときに、賠償金に相当する保険金がおりる賠償責任保険です。
会社など事業者の義務
業務で自転車を利用する会社や事業所にも、自転車保険に加入する義務があります。
地域によっては、自転車通勤をする従業員が自転車保険に加入しているかを確認したり、加入していない人に保険や自転車の安全運転に関する情報提供をするよう、努力義務として呼びかけているところもあります。
自転車レンタル業者の義務
自転車をレンタルする業者にも、自転車保険の加入が義務づけられている地域があります。
時間貸しや月額制のレンタルやシェアサイクルを行っている業者が、一括で自転車保険に加入します。自転車を借りる人のけがや、利用者が第三者にけがをさせたときの賠償責任が補償されるもので、一般的にはレンタルの利用料に保険料が含まれています。
地域によっては、自転車を借りる人に安全運転や保険に関する情報提供を努力義務として求めているところもあります。
自転車販売店の義務
自転車屋さんなど自転車を販売する小売業者への義務を設けている地域もあります。
自転車を買う人に、自転車保険に加入しているかを確認したり、未加入の人には情報提供することなどを、努力義務としている地域が多いようです。
自転車保険への加入が義務化された理由とは?
多くの都道府県で自転車保険の加入が義務化されている背景には、自転車事故による被害の深刻さがあります。事故の発生状況と、実際に生じた高額賠償の事例から、義務化が進められた理由を確認してみましょう。
自転車関与事故の発生件数
警視庁の統計によると、2025年(令和7年)中に東京都内で発生した自転車関与事故は13,845件で、交通事故全体に占める自転車の関与率は45.9%に達しています。つまり、都内で起きた交通事故のほぼ2件に1件は自転車が関与している計算です。
出典:警視庁「自転車の統計データ」
2020年から2023年にかけて関与事故件数・関与率ともに増加が続き、2024年以降はやや横ばいとなっています。ただし、関与率は依然として高い水準にあります。
また、2025年中の自転車事故15,109件のうち、自転車側が第1当事者(より過失の重い当事者)となったケースは7,642件と、約半数を占めています。
こうしたデータが示すとおり、自転車事故は誰にとっても身近なリスクの一つです。自分自身が加害者になる可能性も十分にあるため、自転車保険に加入し、万が一に備えておく必要があります。
自転車事故でも数千万円の賠償責任が発生する
自転車は免許なしで誰でも乗れる手軽な乗り物ですが、事故を起こした場合には自動車事故と同様に、加害者に重い賠償責任が生じます。過去の裁判では、以下のような高額賠償を命じる判決が出ています。
出典:日本損害保険協会「自転車事故の実態と備え」
こうした事例からわかるように、自転車事故の賠償額は数千万円規模に及ぶことがあり、子どもが加害者となった場合でも保護者に賠償責任が発生します。
万が一の事故に備え、自転車保険で賠償資金を確保しておくことは、自分や家族を守るうえで欠かせません。
自転車保険の義務化されている地域はどこ?
現在、多くの都道府県や自治体で自転車保険の加入が義務化されています。
義務化・努力義務化のある都道府県
出典:au損害保険株式会社「自転車保険の加入義務化ってなに?」
義務化・努力義務化の都道府県一覧
自転車保険の加入については、地域によって「義務」または「努力義務」とされています。
「義務」は、その地域内で自転車を運転する人に対して自転車保険に加入しなければならない、つまり加入を義務としています。これに対して「努力義務」としている地域では、自転車保険に加入するよう「努めなければならない」など、「義務」に比べて強制の度合いが弱いという違いがあります。
義務化の都道府県一覧
2026年6月時点で、自転車の利用者に対して自転車保険への加入を義務または努力義務としている都道府県は以下のとおりです。
なお、2026年6月時点で島根県・長崎県・沖縄県の3県は、義務化・努力義務化のいずれも導入していません。その背景には、県民に保険料の負担が生じること、自転車の保有率や自転車事故の発生率が他の都道府県と比べて低いことなどがあげられています。ただし、義務化していないからといって自転車保険が不要というわけではありません。これらの県でも自転車事故への備えの重要性は認識されており、自転車保険や安全利用に関する普及啓発活動は行われています。
義務化されている地域で自転車保険に入らないと罰則はある?
自転車保険は強制ではありませんが、義務化されている地域で自転車保険に入っていないと、どうなるのでしょうか?
自転車保険に入らなくても罰則はない?
2026年6月現在は罰則規定を設けている都道府県・自治体はありません。したがって、自転車保険が義務化されている地域で自転車保険に加入していなくても、罰せられることはありません。
しかし、義務化に罰則がないからといって自転車保険に入らなくてよいわけではありません。
自転車保険が義務化された背景には、自転車での事故によって大きなけがをしたり、他の人にけがをさせて高額な賠償責任を負ってしまったりする事例が全国で相次いだことがあります。
万が一未加入で事故を起こしてしまうと、高額な賠償費用が全額自己負担になります。罰則があるなしに関わらず、入っていない場合、もしもの自転車事故時にどうなるかを考えておきたいものです。
自転車保険以外でも義務化に対応できる場合も
一方で、自転車保険が義務化されている地域でも、必ず自転車保険に新たに加入しなければならないわけではありません。自転車に乗っているときの事故で相手への賠償ができる保険なら、自転車保険以外でも義務化に対応できるのです。
おもな具体例には、自動車保険や火災保険などに特約で付帯できる個人賠償責任保険(補償)、日常生活賠償責任保険(補償)があります。義務化されている都道府県や自治体で自転車保険に入っていない場合には、これらの契約内容を確認してみましょう。
【2026年最新】自転車の安全利用に関する制度改正
自転車保険加入の義務化が全国で進むなか、自転車の安全利用に関わる制度も大きく変わりつつあります。ここでは、近年施行された2つの重要な制度改正を押さえておきましょう。
ヘルメット着用の努力義務化(2023年4月〜)
2023年4月の道路交通法改正により、すべての自転車利用者にヘルメットの着用が努力義務となりました。改正前は13歳未満の子どもに対する保護者の努力義務にとどまっていましたが、現在は年齢を問わず、自転車に乗るすべての人が対象です。
警視庁の調査によると、自転車事故の死亡者のうち約6割以上が頭部に致命傷を負っています。ヘルメットを着用していない場合の致死率は、着用している場合と比べて大幅に高いとされており、万が一の事故に備えるうえで、保険への加入とあわせてヘルメットの着用も習慣づけておきたいところです。
自転車への青切符制度の導入(2026年4月〜)
2026年4月1日から、自転車にも交通反則通告制度(青切符)が導入されました。これまで自転車の交通違反は刑事手続き(赤切符)で対応されていましたが、新制度では比較的軽微な違反にも反則金が科されるようになっています。
対象は16歳以上の自転車利用者です。信号無視や一時不停止、ながらスマホ、傘差し運転など約113種類の違反行為が青切符の対象です。反則金の額は違反内容によって異なりますが、例えば信号無視で6,000円、ながらスマホ(保持)で12,000円が目安とされています。
青切符制度の導入により、自転車も交通ルールを厳格に守ることが求められる時代になりました。しかし、事故のリスクをゼロにすることはできません。万が一加害者になった場合の経済的な備えとして、自転車保険の重要性はこれまで以上に高まっています。
自転車保険の義務化を知って、保険の見直しや検討を
自転車保険が義務化・努力義務化されている地域で自転車に乗る際には、自分が加害者になったときの相手への賠償に備える保険が必要です。
入っていなくても罰則はありませんが、もしもの事故に備えて、自転車保険を検討したり、既に加入している自動車保険などを確認しておくと安心ですね。
出典:警視庁「自転車用ヘルメットの着用」
出典:政府広報オンライン「2026年4月から自転車の交通違反に「青切符」を導入!何が変わる?」
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監修者プロフィール
荒木 和音(あらき かずね)
金融分野専門ライター
ファイナンシャル・プランニング技能士2級
保険代理店にて個人・法人向けの営業およびリスクコンサルティングなどに計10年以上従事したのち、金融ライターとして独立。大手証券会社・保険会社・大手金融メディアでの記事執筆・監修などを手がける。
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