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Vol.5 ガラポンを回せ!

ガラポンとは

八角形の箱を回転させ、当たり玉を引く福引き抽選器の通称。
一等の金色の玉を一発で当てることもあれば、末等の白い玉を引き続ける場合もある。
引手を一喜一憂させるが、手を回し続けなければ決して玉は出ることがない単純な仕組み。

医師との出逢いによって人生は変わります

「最終判断は先生にお任せします」と言い切れる医師と出逢えたことは、実に幸運でした。 スーパードクターからとって、以下S先生と記します。

夫婦ともに検査結果が良くなかった私たちは、S先生のもと、体外受精の中でも顕微授精という手法に賭けることになりました。 精子の濃度や運動率が低い場合に有効なアプローチです。

初診での緊張感は今も鮮明。

カルテから顔を上げず、厳しい表情で、私の年齢の記載箇所をボールペンでなぞるS先生。 ここで萎縮しては絶対に後悔する。

私たちは、意を決して伝えてみたのです。 「S先生の治療で母になったKさんの友人です。我等も是非診て頂きたいのです」 始めて顔を上げたS先生の表情が、ふっと和らぎました。

流産を繰り返した彼女のことは、印象深いケースだったといいます。 「Kさんの様に悲しい思いを何度もした人の成功体験こそが、僕ら医師にとってのモチベーションなんだよね」 無事に出産した彼女から届いた、子どもの写真と手紙を大切にしているといいます。

この先生に付いていきたい。 自分も母となれた暁は、S先生にお礼状を贈りたいと強く思いました。

患者に非現実的な期待は抱かせず、虎視眈々と時を狙い撃つ。 漫然と同じ治療は行わず、新しいアプローチで勝負に出る。

業績に裏付くS先生の治療スタイルの凄さは、今になってこそわかるのですが、渦中にいた時は説明が後手に回る印象も。 ですが、こちらの聞きかじり(ネット情報鵜呑み)での質問なんざ、容赦なく斬られます。 「それ、今知ってどうすんの?」(どうもしない) 心中では『スーパーツンデレドクター』と呼ばせて頂いていた次第です。

私の泣き所は、連続する着床不全でした。 あと一歩で妊娠に到達するはずなのに裏切られる。 着床率を上げるために、受精卵を2個移植する回も多くあります。 憂鬱な採卵を繰り返してやっとできた、それは大切な受精卵のストックがハイスピードで流れゆくやるせなさ。

あれは、「ラッキーセブンの回で勝ちに行く」と強気で臨んだ7回目の胚移植も着床不全に終わった時のこと。 なけなしの自信も失い、「どうしていいかわかりません」とS先生に告げたことがありました。 答えはこうでした。

「福引き器があるでしょ。あれをさ、当たり玉が出るまで決して諦めない。ずっと手を回し続けるイメージが大切なんだよ」

それはガラポン、手動のガラポン。 アナログなたとえが四十路の自分には妙にリアリティがあり、腑に落ちたのでした。

あと少しだけ粘ってみるか。

余談ですが、以来、通院途中にある宝くじ売り場でよくバラ買いをするようになりました。 運試しです。 或る日は、10万円がポンと当たったことも。

ガラポンも宝くじも、引かない事には当たりも外れもない。 何も始まらないのです。

プロフィール
鄭美和

鄭美和(てい みわ)

フリーライター

1973年生まれ。女性誌、男性誌、音楽専門誌、ライフスタイル誌、CDのライナーノーツなどで文筆活動を展開中。
2017年、43歳の時に第一子を出産。本コラム「私のガラポン不妊治療」では、40歳から開始して約2年間に及んだ不妊治療を振り返る。

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