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Vol.4 甘さゼロの現場から

ガラポンとは

八角形の箱を回転させ、当たり玉を引く福引き抽選器の通称。
一等の金色の玉を一発で当てることもあれば、末等の白い玉を引き続ける場合もある。
引手を一喜一憂させるが、手を回し続けなければ決して玉は出ることがない単純な仕組み。

ここは生殖医療科

業績で名高いほぼ365日開院の病院へ移り、治療を体外受精に一本化してからの日々は、甘さ知らずでした。 日本全国から、さらには通訳を付けた諸外国からの来院者もいる待合室の人口密度の高さたるや。

ここにいる、年齢も背景も異なる女性たちの目的はただひとつ『妊娠』です。

電光掲示板に診察券番号が表示されるまでの長い時間を待ち、黙々と診察台に上がり、さっと診療を受ける。 それぞれの工程でシビアな結果を見せつけられても、傷ついている場合ではありません。

あっという間にやってくる、次の生理サイクルに向けて立て直さなければ。 追い込まれるような無機質なルーティン。

ですが、このストイックな環境こそが、惑いやすい自分には合っていたのでした。 悩む隙が無かったからです。

一方で、『身体を操作している感』は体感としてありました。 複数の卵子を育てるために排卵誘発の内服薬と注射を行っていくのですが、幸い投薬の副作用に関してはクリア。

眠気や倦怠感は、今に始まったことではないからです(苦笑)。 注射も、そのために来院しなくて済むセルフ方式(安心です)が推奨。

身体への負荷が重いと私が痛感したのは採卵の工程です。

当時の自分メモには「採卵なめんな!」という走り書きが。 こちらの病院では麻酔が導入されていましたし、人によって異なる痛みのコントロールは医師との相談で改善されることも。

ただ一度、真夏に採卵をした帰り道、貧血でふらつき、路上で転倒した痛い経緯あり。 必死な時ほど、あっけなく落ち込みます。

想定外の怪我などすると、「だから自分はダメなんだ」と暗~いループに陥ることも。 心まで転ばないために、採卵前後は身体が疲れないように仕事の予定を組み直しました。

得も言われぬ緊張の局面も連続します。 採卵のオペに挑んでも、卵子が採れることも、さらにはその卵子が採精した精子と受精することも奇跡の域。

採卵翌日は、病院へ受精確認の電話をかけます。

深呼吸してから受話器を握りしめ、受精の鍵を握る培養士の方々へ心の中で一礼。 「どうかひとつでも」と毎回祈っていました。 運良く、受精卵を子宮に戻す胚移植に進めたとして、着床判定が出るのは2週間後。

早く知りたいけれど知るのが怖い。

市販の検査薬でフライング検査をしてしまったことも度々。 淡い期待と濃い不安。 いよいよ言い渡される診察日は『ガクブル』状態でした。

次から次へと試されることよ……。

自分が当事者になってみたところ、はだかる山にさえぎられて視界は不明瞭。 現場からは以上です。

プロフィール
鄭美和

鄭美和(てい みわ)

フリーライター

1973年生まれ。女性誌、男性誌、音楽専門誌、ライフスタイル誌、CDのライナーノーツなどで文筆活動を展開中。
2017年、43歳の時に第一子を出産。本コラム「私のガラポン不妊治療」では、40歳から開始して約2年間に及んだ不妊治療を振り返る。

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