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Vol.2 本気モードON!

ガラポンとは

八角形の箱を回転させ、当たり玉を引く福引き抽選器の通称。
一等の金色の玉を一発で当てることもあれば、末等の白い玉を引き続ける場合もある。
引手を一喜一憂させるが、手を回し続けなければ決して玉は出ることがない単純な仕組み。

「不妊治療を行えば妊娠・出産は叶う」とは、どの口が?

この口です。

どうかしていた自分に、自ら制裁を下す時がやってきました。
20代の頃からよく知っている(つもりでいた)、女友達との再会の機がそれです。

同世代トークの中心は、思いがけない転機について。人生が忙しい40代ともなると、そのふり幅も大きくなります。
私より1歳年上で42歳の彼女が迎えた大きな転機、それは妊娠でした。
無事に安定期を迎えた今、実に清々しい表情をしています。

この先、私たち夫婦の不妊治療においてのキーパーソンになる彼女のことは、以下K嬢と記していきます。

驚きと喜びで高揚し、矢継ぎ早に質問する私に、K嬢は真摯に答えてくれました。
私は初めて知ることになります。

ここに至るまでに、彼女が3度の自然妊娠と3度の流産を経験したことを。
体外受精に臨み4度目の妊娠が叶うも、またも流産という悲しい結果に。
原因を追究するために、多忙な仕事の合間をぬって転院と精密検査を重ねる日々。

流れを大きく変えたのは、名医との出逢いだったといいます。
その医師のもと、体外受精によって妊娠。
加えて、奇跡的に出会えた新薬によって妊娠が持続し、やっとここまでこれたのだと。

「妊娠と出産は神の領域」。

現実的なK嬢の口から『神の領域』という言葉が出たことに、身につまされました。
さらに、私が最後の砦のように考えていた40代からの体外受精においては「努力が報われる分野ではない」と捉えているのでした。

当事者の言葉は、強く、深く刺さります。

あと数か月で41歳になる私が今から不妊治療をスタートして、トライ&エラーを重ねていったらどういうことになるのか。
取り返しがつかなくなる気しか。猛烈な危機感に襲われました。

ですが、あの時感じた危機感こそが、治療へと挑む原動力になったのです。
と同時に、母になった自分を見てみたいという気持ちも芽生えてきました。

不妊治療に本気で向かおうとする時に、持つべきはK嬢のように冷静な経験者。
逆に、持たざるべきは分かち合う仲間かと私は思うのです。

本音を言えば、治療中にさいなまされる、あの何ともいえない感情を共有し合いたい。
なれど、努力が報われる分野ではないからこそ、仲間の誰かが治療を断念することも。
互いに気をつかい合い、寂しい気持ちになることがあったからです。

そもそも、不妊治療は希望に向かうためのステップ。
にも関わらず、常に切なさがつきまとう分野だったと振り返るのです。

プロフィール
鄭美和

鄭美和(てい みわ)

フリーライター

1973年生まれ。女性誌、男性誌、音楽専門誌、ライフスタイル誌、CDのライナーノーツなどで文筆活動を展開中。
2017年、43歳の時に第一子を出産。本コラム「私のガラポン不妊治療」では、40歳から開始して約2年間に及んだ不妊治療を振り返る。

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