がん保険には、保障内容やその組み合わせにより、さまざまな種類があります。
保険会社や商品プランが多様なため、どの商品がいいのか、どのプランを選べばよいのかに迷うことがあるのではないでしょうか。
そこで、がん保険全体の保障のタイプや、ニーズに合った保障の選び方について解説します。
がん保険の保障はさまざま
多くのがん保険では、主要な保障があらかじめ商品プランに組み込まれている場合や、基本となる保障に加えて、希望に応じて特約を追加できるしくみになっています。
おもに、次のような保障があります。
診断給付金
がんと診断されたときに、50万円や100万円などの一時金を受け取れるのが「診断給付金」です。
入院や通院をしていなくても、がんと診断された時点でまとまった給付金を受け取れるため、治療費だけでなく、入院や療養にかかるさまざまな費用にも活用できます。
治療給付金
抗がん剤治療や放射線治療など、所定の治療を受けたときに、契約時に定めた月額が支払われる保障が「治療給付金」です。
治療を受けた月ごとに、月額5万円や10万円といった治療給付金を受け取れます。
入院の有無は問わないため、通院で治療を受けた場合にかかる費用にも対応できます。
入院・通院給付金
がんの治療で入院した場合、「入院1日につき1万円」など、入院した日数に応じて給付金を受け取れるのが「入院給付金」です。
商品によっては、10日以上など一定期間入院をして退院した際に、5万円や10万円などの一時金が支払われる「退院一時金」を追加できるがん保険もあります。
また、がん治療のための通院について、「1日につき5000円」など、通院日数に応じた「通院給付金」を付加できるがん保険もあります。
実額補償のがん保険
一部のがん保険には、がんの治療に実際にかかった費用を補償する「実額補償型」があります。
通常、入院や手術、通院など治療の方法に関係なく、自己負担した治療費が補償されます。
2025年現在販売されている商品では、入院の補償には保険金の上限がありません。
また、通院の補償は1,000万円や2,000万円などの限度額の範囲内で、実際にかかった費用が保険金として支払われます。
がん保険の選び方
では、がん保険はどのように選べばよいのでしょうか?
どのような備えが必要か、ニーズや考え方に応じたタイプを選ぶことが大切です。
まとまった一時金を受け取りたい
もし、がんと診断されたときにまとまったお金を受け取りたい場合は、「診断給付金」を付加できるがん保険が向いているでしょう。
がんと診断された時点で所定の一時金を受け取れるため、治療の初期段階で経済的な不安を和らげることができます。
また、入院、手術の有無や治療方法にかかわらず受け取れるため、治療費に限らずさまざまな使い道に自由にお金を充てたい場合にも活用しやすいでしょう。
商品によっては、1回目(前回)の診断から1年や2年が経過した後に、再発や転移などで再びがんと診断された場合や、入院や手術などのがん治療を受けた場合に、2回目以降の診断給付金を受け取れるものもあります。
一度目の治療が終わった後も、長期的にがんへの備えを確保し続けたいというニーズにも対応できるでしょう。
毎月の治療費に備える
がんの治療では、抗がん剤治療、ホルモン剤治療、放射線治療などを継続的に受けるケースがあります。
必ずしも入院や手術を伴うものではなく、治療期間が長期間にわたる場合もあります。
このような治療費の負担に備えたい場合は、「治療給付金」を付加できるがん保険が向いているでしょう。
商品や治療内容によっては、「1ヶ月に1回、通算120ヶ月」などの範囲で、給付金を複数回受け取ることができます。
また、手術や放射線治療などを中心に、回数の制限なく給付金を受け取れるがん保険もあり、治療費の負担に長期的に備えたい場合にも向いているでしょう。
入院・通院時の諸費用に備える
がんで入院した際の費用に備えたい場合は、「入院給付金」を付加できるがん保険が向いているでしょう。
多くのがん保険では、日数の制限なく入院給付金を受け取れるため、特に長期入院に備えたい場合に活用できます。
また、差額ベッド代や家族のお見舞いなど、日常生活にはない出費が入院中にかかる場合にも備えられます。
交通費や家族の付き添い費用など、通院に伴ってかかる諸費用には、「通院給付金」を付加できるがん保険で備えることもできます。
かかった自己負担に備える
がんの治療にかかる実際の費用に備えたい場合は、「実額補償型」のがん保険が向いているでしょう。
入院や手術、通院などで実際に支払った金額が補償されるため、自己負担額を抑えることができます。
自由診療・先進医療に備える
先進医療や患者申出療養、自由診療などを受けた場合は、公的医療保険が適用されず、治療費は全額自己負担となります。
がん治療で公的医療保険が適用されない治療法も選択肢に入れたい場合や、それらの費用に備えたい場合は、自由診療まで保障するがん保険や、先進医療特約を付加できるがん保険を選ぶとよいでしょう。
公的制度と合わせて保険の備えを選択
がん保険の保障を選ぶ際には、まずは加入している公的制度で受けられる保障内容を確認することが大切です。
公的医療保険の高額療養費制度では、年齢や所得に応じて1ヶ月の自己負担限度額が決まっており、その額を超えた医療費は後から払い戻されます。
がん治療で保険適用の治療法を中心に考える場合は、ご自身の自己負担限度額がいくらなのかを確認し、その負担額を抑えるための保障を検討しましょう。
長期入院に備えたいのか、通院での抗がん剤治療に備えたいのかなど、具体的なイメージを持つことで、必要ながん保険の保障を選びやすくなります。
自営業などで公的医療保険に傷病手当金がない場合、長期療養のために仕事を退職し、傷病手当金を受けられなくなる場合など、がん治療を理由とした収入減少が心配なときには、治療給付金など、長期間にわたって月額を受けられる保障を中心に選ぶのも一つの考えです。
また、自由診療や先進医療など、公的医療保険が適用されない治療に備えたい場合には、ほかの保障に優先してこれらの保障のあるがん保険を選ぶこともできます。
もしものがん治療に備えて保障の検討を
このように、がん保険には、がんの診断から治療の段階に応じたさまざまな保障があります。
もしものがんの時にかかる費用や、受けられる公的制度の内容を知り、そのうえで、ご自身にとって備えておきたい保障を中心に選びましょう。
※2025年7月現在の情報をもとに執筆しています。情報は更新されている場合がありますので、最新の情報や詳細は保険会社にご確認ください。
-
執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
気になった記事をシェアしよう!