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更新:(公開:2019年9月30日)

がんの自由診療とは?治療の種類と費用、がん保険の活用法をまとめて解説

執筆者

加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る

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医療技術の進歩によって、がんの治療方法や技術は年々新しいものが登場しています。しかし、最新の治療法は公的医療保険が適用されない「自由診療」が多く、治療費は全額が自己負担になってしまいます。

がんの自由診療の種類や費用、自由診療に備えられる保険の必要性について、FPが解説します。

自由診療とは?

自由診療は、まだ国の承認がおりていない薬や治療法を用いた診療のことです。
新しい治療や技術であるため、有効性や安全性などについて国内で十分な検証が完了しておらず、保険適用として広く利用されるに至っていないものです。
未承認の治療は公的な健康保険がきかず、費用は全額が自己負担になります。

がん治療のなかでは、一部の抗がん剤や重粒子線治療などが自由診療になっています。
海外では有効性が証明されたものの日本国内では承認されていないものや、一部のがんには保険適用されているものの、部位の異なるがん治療では自由診療扱いになるものなどがあります。

先進医療と自由診療の違いとは?

全額が自己負担になる治療というと、「先進医療」も知られています。先進医療もまだ保険適用されていない高度な医療技術や治療法ですが、特定の病気や医療機関で用いる場合に限って、自由診療の一部が「先進医療」に指定されています。

先進医療は自由診療と同様に全額が自己負担になるものの、標準的な保険診療との併用が認められています。先進医療と並行して公的な保険がきく診察や治療を受けたら、その分の医療費は自己負担3割ですみます。

これに対して、自由診療は公的な保険診療と併用できません。
自由診療と同時に、本来は公的な保険がきく診療・治療を受けると、すべての医療費が自費になります。

がんの自由診療の種類と費用

自由診療扱いになるがん治療は、化学療法(抗がん剤治療)や放射線治療などの一部で用いられています。
いずれも新しく開発されてからの経過期間や海外での承認状況などによって薬剤費・技術費が変動することがありますが、国内で保険適用されるまでは全額が自己負担になります。

がん治療で行われる自由診療の一例には、以下があります。

自由診療の種類一覧
  • 化学療法(抗がん剤治療)
  • 重粒子線・陽子線治療
  • 免疫療法
  • 乳房再建術

化学療法(抗がん剤治療)

手術・放射線治療と並んでがん治療で用いられるのが化学療法です。がん細胞の増殖を抑え、転移や再発を防ぐ薬、抗がん剤を使用します。

抗がん剤には、分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬など、それぞれ多数の種類がありますが、まずは保険診療の対象になる薬剤が使われるのが一般的です。

効果が芳しくない場合や、何度か続けて投与するうちに効果が薄れていく場合に、薬剤の種類を変えることがあります。その際に、自由診療の薬剤を選ぶこともあります。

医療費は薬剤の種類のほか、投与する量、期間などによって異なります。1回の投薬で数百円程度のものもあれば、10万円以上かかるものもあります。

抗がん剤治療を行うときには、自分のがんに効果を期待できる薬を探すための遺伝子検査を行うことがあります。一部の遺伝子検査は保険適用されますが、最新の技術である遺伝子パネル検査は、自由診療として行われることがあります。

重粒子線治療・陽子線治療

がんの放射線治療のうち、重粒子線や陽子線をがんの病巣に対して集中的に照射する治療方法です。一般的に用いられるX線に比べて、がんの病巣以外の正常な部位へのダメージを抑えて照射できる治療です。

重粒子線治療・陽子線治療ともに、口腔がんや前立腺がんなど、がんの部位によっては保険診療扱いになります。
保険診療にならない部位への治療に用いる場合は、先進医療または自由診療扱いです。医療費は部位やがんの進行度、照射時間によって異なりますが、高額なケースでは数百万円の自己負担を要することがあります。

免疫療法

身体が本来持っている免疫の力を回復させて、がん細胞を排除する治療法です。さまざまなしくみと種類があり、費用もさまざまです。
そのうち十分な効果が検証されているものは保険診療扱いです。化学療法のひとつである免疫チェックポイント阻害薬にも、保険適用されるものがあります。

一方でまだ十分な有効性が検証されていない免疫療法は、先進医療や自由診療、臨床試験や治験として受けることになります。この場合は、全額が自己負担です。

乳房再建術

乳がんの手術で乳房を切除した後に、外見を取り戻すため再建する乳房再建術は、多くの手術が保険診療として認められていますが、一部の手術内容・方法は自由診療扱いです。数十万円の負担がかかることもあるようです。

自由診療に備えるためにがん保険は必要?

がん治療の効果を高め、再発を防ぐために、自分に合った治療法を選びたいと願うと、自由診療も選択肢として考えることがあるかもしれません。
そんなときに備えて、がん保険の必要性はどのように考えればよいでしょうか。

一時金でさまざまな治療に備えられる

がん保険の多くには、がん(上皮内がん・悪性新生物)と診断されたときに一時金を受け取れる「診断給付金」の保障がついています。
数十万円や100万円などまとまった金額を受け取れるプランが多いため、がんになったときの手術や入院に限らず、その後の継続的な治療で自由診療を選んだ際の費用に充てることができます。

実費型でかかった治療費に備えられる

がん保険の一部には「実損填補型(実費型)」と呼ばれるものがあります。治療にかかった実費が給付されます。
実損填補型のがん保険のなかには、保険診療に限らず、所定の上限額までは先進医療や自由診療の費用も保障されるものもあります。

また、一般的ながん保険にも、オプションで先進医療や患者申出療養への特約をつけられるものがあります。患者申出療養は、患者さんが主治医と相談して利用する制度で、承認されると自由診療を利用することもできます。

その際にかかった医療費の実費が給付されるのが、がん保険の患者申出療養特約です。これらへの保障は実費払いになっていて、1,000万円や2,000万円といった上限額までは、実際にかかった医療費と同額が給付されます。

治療に応じて給付金がもらえるものも

所定の治療を受けたときに、給付金を受け取れるがん保険もあります。がんの治療には抗がん剤やホルモン治療など、継続的・定期的に受けるものがあります。

「抗がん剤治療給付金」「ホルモン剤治療給付金」などの保障がついたがん保険では、これらを受けたときに、月に10万円や20万円などあらかじめ定めた金額が給付されます。
自由診療の抗がん剤やホルモン剤の場合には、給付金額が上乗せされるがん保険もあります。

がん保険の活用で、治療の選択肢を広げることも

がん治療は日進月歩で、治療の選択肢はどんどん広がっています。
がんの治療は入院や手術だけでなく、その後に行う放射線治療や抗がん剤、ホルモン剤の治療を含めると、長期間にわたってさまざまな治療を選んでいくことになります。

その都度、医療費の心配なく自分に合った治療を選ぶうえで、がん保険が支えになるかもしれません。

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参考:厚生労働省「先進医療の概要について」

  • 監修者プロフィール

    ファイナンシャルプランナー 加藤 梨里

    加藤 梨里(かとう りり)

    マネーステップオフィス株式会社代表取締役
    CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
    マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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