
ひとり親家庭への支援があることは、広く知られています。ところが、似た境遇でお互いに苦労しているシングルマザー同士で会話をしていて、「受け取っている児童扶養手当の金額が彼女とわが家とは違うらしい。」とか「児童育成手当って、東京都だけなの!?」と気がついたことはありませんか?
実は、ひとくちに「ひとり親家庭」といっても、住んでいる地域や境遇、経済的な状況により、受けられる支援の内容には違いがあるのです。そこで今回は、ひとり親家庭支援のしくみについて説明していきます。
記事の目次
ひとり親家庭支援のしくみ
ひとり親家庭の支援は「母子及び父子並びに寡婦福祉法」により定められています。この法律はかつて「母子及び寡婦福祉法」という名称でしたが、2014年に母子家庭父子家庭ともに支援が受けられるように、法改正されました。
ひとり親家庭支援には、おもに以下の3つがあります。いずれも、支援を受けるには市町村の窓口に申請します。ここで受給の可否が審査されます。
- 国による制度(代表的なものは児童扶養手当)
- 都道府県独自の給付制度(東京都の児童育成手当、愛知県の遺児手当)
- 市町村独自の制度(ひとり親家庭医療費助成制度など)
ただ、支援の財源は国・都道府県・市町村と違っているため、自治体によっては、申請先の窓口が児童扶養手当は「福祉課」、医療費助成は「住民課」というように違うこともあります。

支援が受けられる「ひとり親家庭」とは?
ひとり親家庭の支援対象になるのは、下記のいずれかに該当し、かつ18歳以下(障害児の場合は20歳未満)の子どもを育て(扶養)ており、一定の所得に満たない父、母、養育者です。
ひとり親家庭の支援対象
- 父母が離婚
- 父か母が死亡、もしくは生死不明
- 父か母に重度の障害がある
- 父か母が1年以上拘禁されている
- 父か母に1年以上遺棄されている
- 父か母が裁判所からDV保護命令を受けた
- 婚姻によらずに生まれた
なお、「扶養」とは、子供の生活費の面倒を見て、保護者としてきちんと保護監督し、子供の将来に関しても親としてプランを描いている状態のことです。
この中でいずれにも該当しない場合には、市町村窓口に相談をしてみてください。
例えば、離婚は成立していないが、子供を連れて別居中で、配偶者からの生活費がもらえず、生活に困窮しているようなときです。自分では該当しないと思っていても、市町村による聞き取りや、調査・確認の上で支援の対象となることもあります。支援を受けられる可能性を広げるために、まずは一度相談してみるとよいですね。
同一生計のパートナーがいる場合は対象外
ひとり親だけで、十分な扶養が受けられない場合は支援の対象となりますが、扶養をしてくれるもう1人の親(父か母の事実上の配偶者と同一生計)がいる場合は、対象外となります。
「父か母の事実上の配偶者と同一生計」といっても、具体的にはどんな状態なのでしょうか?その定義は、次にあたります。
児童と同居の父または母が異性と、
- 事実婚、あるいは内縁関係である
- 同一の住所に住民登録がある
- 同一の住所に住民登録はなくても、実際に居住していたり、頻繁に訪問をしていたりする
具体的には、たとえば交際中の異性から、家賃や住宅ローンなどの住居費を支払ってもらい、水光熱費も負担してもらっているという場合には支援の対象外になります。
人によっては、一戸建てのシェアハウスに住んでいることもあるでしょう。その場合には、全く他人の異性と同一住所で住民登録され、(2)の「同一住所に住民登録」があるとみなされてしまうことがあります。
同じ住所に住んでいても、生計は全く違う他人であることをきちんと説明しないと、ひとり親家庭として扱ってもらえない恐れがありますので、注意しましょう。
支援の内容は所得によって変わる
ひとり親家庭支援を受けられるかどうかのもう一つの判断基準に、所得制限があります。受ける支援制度によって、申請者のみの所得で判断される場合と、世帯全体の所得を合わせて判断される場合があります。
都道府県から受ける「児童育成手当」などは、申請者本人の所得だけですが、国から受ける「児童扶養手当」や、市町村によっては「ひとり親家庭医療費助成制度」は世帯全体の所得が判断基準になります。
国 | 都道府県 | 市町村 | |
---|---|---|---|
主な支援 | 児童扶養手当 | 児童育成手当(東京都) | ひとり親家庭医療費助成制度 |
所得制限 | あり | あり | ありが多いが、市町村による |
所得制限の対象 | 同居同一生計の世帯の所得 | 申請書の所得 | 同居同一生計の世帯の所得が多いが、 申請者の所得のみのとろもある。 |
所得制限の影響 | 世帯の所得によっては 一部支給や支給停止となる |
児童扶養手当が所得制限で 該当しない場合でも受給できる |
所得制限で該当しない場合は、 児童は乳幼児医療費助成制度や 義務教育就学児医療費助成制度で対応する |
世帯全体の所得の場合、同居の家族の収入も対象になる
世帯全体の所得とは、ここでは同居同一生計の世帯所得を指します。
たとえば、離婚した娘が子供を連れて両親の住む実家に戻ってきた場合です。娘親子と、同居している祖父母(娘にとっての両親)が生活費を出し合っているなど、生計を共にしていれば「同一生計」とみなされます。
そして、娘親子の所得と同居の祖父母の年金収入等による所得は合算して判断されます。
したがって、児童扶養手当は「同居同一生計の世帯所得」が判断基準になりますから、似たようなシングルマザー同士であっても、親と子だけで暮らしている場合と実家で両親と同一生計で暮らしている場合とでは、手当を受けられるかどうか、あるいはその金額に違いが出てきます。
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執筆者プロフィール
かな・えるFP相談室代表
CFP(R)認定者、宅地建物取引士大学卒業後、地方銀行に6年半勤務。CFP資格を取得後、地元八王子市を中心にセミナー講師、執筆、相談業務、講演会企画運営を行う。2019年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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監修者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。