2023年の火災保険参考純率改定 全国平均13%引き上げ、水災料率が5区分へ
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
火災保険などの料率を算出している損害保険料率算出機構が、住宅総合保険の参考純率と水災補償の料率の見直しを発表しました。
公表された改定内容をもとに、2024年度以降にも各保険会社が契約者向けの火災保険の料率を見直すとみられます。
火災保険料率の改定と水災料率について解説します。
ニュースのポイント
- 住宅総合保険の参考純率が全国平均13%引き上げ
- 水災の保険料率が5区分へ細分化
- 保険料が最も高い地域は、最も安い地域の約1.2倍に
火災保険の参考純率が全国平均13%引き上げ
一般に火災保険と呼ばれる「住宅総合保険」の参考純率が、全国平均で13%引き上げられます。
引き上げには、近年相次いだ大雨や台風などの自然災害により火災保険金の支払が増加傾向にあることや、築年数が古い住宅の割合が増加し、住宅の損壊や電気・給排水設備の老朽化による火災、水漏れのリスクが高まっていること、加えて、資材費や労務費などの上昇により建物の建設工事や修理の費用が高騰していることが影響しているようです。
料率改定により、建物構造別に改定率が最も高い地域の住宅総合保険の参考純率は下記の通り引き上げられます。
保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円で築10年以上の場合
M構造 (鉄筋コンクリート造等耐火構造の共同住宅) |
宮崎県 +23.9% |
---|---|
T構造 (鉄骨造等の準耐火構造など) |
群馬県 +23.2% |
H構造 (木造など) |
群馬県 +18.1% |
水災の保険料率がリスクに応じ5区分へ
今回の見直しでは上記の参考準率改定とは別に、火災保険のうち河川の氾濫や集中豪雨、土砂災害などによる損害を補償する水災補償部分について、これまで全国一律だった料率が、地域ごとの水災リスクに応じて5区分に細分化されます。
最も高い地域の保険料は、最も安い地域の約1.2倍に
水災リスクは洪水ハザードマップや水害統計、地形データなどをもとに市区町村別に、5区分で定められます。
その結果、住宅総合保険の参考純率改定と水災料率の改定を合わせた改定率が最も高い地域と低い地域では、改定率が下記の通りになります。
保険金額が建物2,000万円、家財1,000万円で、築10年以上の場合
都道 府県 | 水災等地別 改定率 (1等地~5等地) | ||
---|---|---|---|
M 構造 | 最大 | 宮崎県 | +20.4%~+29.9% |
最小 | 香川県 | +3.7%~+21.3% | |
T 構造 | 最大 | 群馬県 | +16.9%~+33.6% |
最小 | 山形県 | +3.7%~+18.4% | |
H 構造 | 最大 | 群馬県 | +12.3%~+27.7% |
最小 | 東京都 | ▲1.3%~+19.0% |
保険料が最も高い地域は、最も安い地域に比べて、保険料全体(火災、風災、雪災、水災等の補償合計)で約1.2倍の保険料になります。
見直されるのは保険金支払に充てられる純保険料率部分
火災保険料は、事故発生時に保険会社が支払う保険金に充てられる「純保険料率」部分と、保険会社が保険事業を行うために必要な経費などに充てられる「付加保険料」をもとに構成されており、同機構ではこのうち純保険料率部分の参考数値を算出しています。
契約者が加入する火災保険の保険料は、この参考数値をもとに各保険会社が定めた保険料率によって決まります。
ですから、今回の改定がそのまま各契約者の火災保険の改定率とはならない場合があります。
損害保険各社は来年度以降にも、今回の改定を受けた保険料見直しを行うとみられます。
水災料率とは
火災保険のうち、河川の氾濫や集中豪雨、土砂災害などによる住宅の損害を補償する水災補償部分の保険料率。これまでは全国一律でしたが、洪水や土砂崩れなど水災による損害が全国的に増加し、地域間の水災リスクの違いをふまえた保険料負担とし、公平性を高める観点などから、水災料率の体系が見直しされることとなりました。
出典:損害保険料率算出機構「火災保険参考純率 改定のご案内」
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー