積立型保険の予定利率 大手各社が引き上げ
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
長期金利の上昇局面を受け、大手生命保険会社で貯蓄性のある保険の予定利率の引き上げが相次いでいます。
予定利率を引き上げることで払い込む保険料が安くなり、貯蓄性が高まる可能性があります。
予定利率の仕組みと合わせて解説します。
ニュースのポイント
- 大手生命保険各社が、貯蓄性保険の予定利率を引き上げ
- 予定利率が引き上げられると、払い込む保険料が安くなる可能性
- 影響があるのは学資保険、個人年金保険、一時払い終身保険が中心
金利上昇で一部の生命保険の予定利率が引き上げ
2023年後半から、日銀が金融緩和策を見直し、長期金利が上昇傾向にあることを受けて、大手生命保険会社が一部の生命保険の予定利率を相次いで引き上げています。
引き上げ対象は個人年金、学資保険、一時払い終身
予定利率が引き上げられているのは、貯蓄性のある保険が中心です。
一時払い終身保険の例
保険料を一時払いし、保障が生涯にわたって続く一時払い終身保険では、引き上げにより改定後の予定利率が1.0%となるものが出てきています。
5年ごと利差配当付き終身保険 一時払契約
現行:0.90%
出典:住友生命保険「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2023年10月30日)
改定後:1.00%
一時払終身保険
現行:0.6%
出典:日本生命保険「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2023年12月12日)
改定後:1.00%
改定幅:+0.40%
個人年金保険の例
老後の資産形成として、払い込んだ保険料の一部を積み立てる個人年金保険でも、予定利率を引き上げる例があります。
5年ごと利差配当付生存保障重視型個人年金保険(14)
年金支払開始までの期間 30年以上現行:0.65%
改定後:0.80%※ただし、年金開始後の予定利率は 0.65%で据置となります。
出典:住友生命「平準払個人年金保険の保険料率の改定について」(2023年9月8日)
学資保険の例
子どもの教育資金準備として、払い込んだ保険料の一部を積み立てる学資保険でも、保険料率を見直し、払い込んだ保険料に対する満期時の受取総額が多くなる例が出てきています。
予定利率が引き上げられると保険料が安くなる
生命保険の予定利率は、保険会社が契約者に約束する運用利回りで、保険料は見込んだ収益分を割り引いて計算されています。予定利率が高いほど保険料は安くなります。
一例として、60歳女性が日本生命保険の一時払終身保険に保険金額500万円で契約した場合、改定により保険料は約458万円から約412万円へ10%低くなりました。
一時払終身保険
【保険料例】
契約年齢60歳/性別:女性/保険金額500万円現行:4,582,650円
出典:日本生命「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2023年12月12日)
改定後:4,122,550円
増減率:△10.0%
増減額:△460,100円
予定利率とは
予定利率は、予定死亡率、予定事業費率とともに、生命保険の保険料を計算する3つの予定率のひとつです。保険料は、契約時に予定された予定率をもとに計算されます。
予定利率は、生命保険会社が契約者から受け取った保険料の一部を資産運用にあて、見込まれる運用利回りを契約者に約束したものです。
見込まれた収益の分、保険料が割り引かれています。
出典:住友生命保険「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2023年10月30日)
出典:日本生命保険「一時払終身保険の保険料率の改定について」(2023年12月12日)
出典:住友生命「平準払個人年金保険の保険料率の改定について」(2023年9月8日)
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー