台風後は火災保険で自宅を修理できるとの勧誘増加 国民生活センターが注意を呼びかけ
加藤 梨里
ファイナンシャルプランナー、CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー >プロフィールを見る
火災保険を使えば、壊れた住宅を自己負担なく修理できると謳って勧誘する修理サービスをめぐるトラブルが増加しているそうです。
国民生活センターによると、特に秋の台風シーズンには毎年増加する傾向が見られることから、消費者に注意を呼びかけています。
トラブルの内容や火災保険の正しい対応方法について、FPが解説します。
ニュースのポイント
- 台風シーズンには、保険金を使って住宅を修理できると勧誘するサービスに関するトラブルが毎年増加
- 実際には保険金がおりない、高額な手数料がかかる事例も
- トラブル件数は24倍に増加 迷ったら相談を
9月、10月の台風シーズンにはトラブルが増加
10月1日、国民生活センターは、火災保険の保険金が使えるという住宅の修理サービスに関するトラブルが、例年9月から10月の台風シーズンに増えるとして、注意を呼びかけました。
住宅修繕を行う業者が、火災保険を使うことで修繕費用の自己負担を抑えられると謳い、修理サービスの契約を勧誘するものですが、実際には火災保険がおりない、修理をキャンセルすると高額なキャンセル料を請求されるなどのトラブルに発展するケースが多発しています。
台風、豪雨、大雪、地震などの自然災害の後にはトラブルが増えるおそれがあるといいます。
「保険金が使える」と勧誘されるが、高額な自己負担がかかることも
トラブルの事例で多いのは、台風などの自然災害で壊れた屋根や雨どい、雨戸、外壁などの修理契約です。
修繕業者から「火災保険の保険金で修理できる」と勧誘されて依頼したものの、工事がずさんだったり、保険金の請求をすると、かかった費用よりも少ない保険金しか受け取れないケースが報告されています。
なかには、修理を依頼するまで3時間もの長時間にわたって勧誘したり、工事をキャンセルすると診断料や違約金などの手数料を請求された事例もあります。保険金が支払われても、3割~5割の手数料がかかるケースもあるようです。
加えて、本来は保険金の対象にはならない経年劣化の損傷についても、自然災害に乗じて保険金請求をするよう勧めたり、請求手続きのサポートをしたりするケースもあるとのことです。
勧誘されてもすぐに契約せず、不安なときは相談を
こうした住宅修理サービスのトラブルによる相談は、2019年度だけで約2,700件寄せられているといいます。その数は2010年度の約24倍と、約10年で急増しています。
このうち84%は自宅への訪問による勧誘で、相談者の半数以上が70歳以上、60歳代を含めると4分の3が高齢者です。
国民生活センターでは、火災保険金を前提に被害診断をする、保険金請求の代行をするなどの勧誘を受けたら、すぐに契約せず、契約先の保険会社や保険代理店に相談するよう呼びかけています。
また、不安に思ったときやトラブルに発展した場合には、消費生活センターや住宅リフォームに関する電話相談窓口に相談することもできます。
火災保険の保険金請求とは?
台風や豪雨などの自然災害で住宅が被害を受けたときには、契約している火災保険から保険金がおりることがあります。保険会社などの事故受付窓口に連絡すると、必要書類が送られます。損害の状況や修理内容の調査後、支払われる保険金額が決まります。保険会社の担当者が現地を訪問する場合もあります。
保険金の請求手続き、修理の手配ともに、自分でするのが基本です。また、自然災害ではなく経年劣化による損傷は保険金の対象外です。
うその理由で保険金を受け取ると、のちに保険会社から保険金の返還を請求される、契約を解除される可能性があるうえ、保険金詐欺に該当するおそれもあります。
この保険ニュースの解説者
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー