地震保険に加入している場合には、年末調整や確定申告で税の一部が軽減されることがあります。
それが、所得税の「地震保険料控除」というしくみです。地震保険料控除のしくみや対象になる保険を解説します。
地震保険料控除とは?
地震保険料控除は、地震保険の保険料を払い込んだ場合に、その年の所得から一定額を控除して、所得税や住民税の計算上で軽減を受けられる税制上のしくみです。
その年に払い込んだ地震保険などの保険料額に応じて、課税の対象になる所得の一部を「控除」することにより、税の負担が軽減されます。
地震保険料控除でどれくらい控除される?
地震保険料控除で受けられる控除額は、その年に払った保険料の金額に応じて決まります。
原則、所得税では最大5万円、住民税では最大2.5万円を、税の計算上で年間の所得から控除することができます。
地震保険には保険期間が2年以上の契約もありますが、その場合には、「一時払保険料÷保険期間(年)」が毎年の控除対象保険料になります。
地震保険料控除(所得税の場合)
年間の地震保険料の合計 |
控除額 |
50,000円以下 |
支払金額の全額 |
50,000円超 |
一律50,000円 |
※2006年以前に契約した一部の損害保険がある場合には、控除額が異なる場合があります。
加入中の火災保険は対象になる?
地震保険は火災保険とセットで加入するのが基本です。
ご自身が契約している保険が、地震保険料控除の対象になるかどうかを確認してみましょう。
通常、持家、賃貸では以下のようになっています。
持家の火災保険の場合
持家の場合、基本的には建物と家財それぞれに対して火災保険を契約し、それぞれに地震保険をセットします。
建物、家財の両方に地震保険をセット※していれば、どちらも地震保険料控除の対象になります。
火災保険のみで地震保険をセットしていない場合や、火災保険の地震火災費用保険金などの費用保険金は対象外です。
※基本的に火災保険には地震保険がセットされていますが、希望により加入時に地震保険を外すこともできます。
賃貸の火災保険
賃貸住宅に入居している場合には、火災保険をかけるのは家財のみです。
家財に地震保険をかけている場合、地震保険料控除の対象になります。
契約しているのが火災保険(家財保険)のみで、地震保険をセットしていない場合は地震保険料控除の対象外です。
地震保険以外の損害保険で保険料控除はできる?
地震保険料控除を受けられる保険は、基本的に地震保険のみです。
火災保険には特約で「地震火災費用保険金」など、地震に対する費用保険金の補償をつけられるものがありますが、これは地震保険料控除の対象外です。
例外として、損害保険のうち地震保険以外で対象になるのは、2006年以前に加入した積立型の保険で、所定の要件を満たすものが中心です。
これらの保険料は「旧長期損害保険料」といって、地震保険料控除の対象になります。
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
下記の通り、支払った保険料に応じて控除できます。
地震保険料控除(旧長期損害保険料)
|
年間の 支払保険料の合計 |
控除額 |
旧長期 損害 保険料 |
10,000円以下 |
支払金額の全額 |
10,000円超 20,000円以下 |
支払金額×1/2 +5,000円 |
20,000円超 |
15,000円 |
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
また、地震保険料と旧長期損害保険料の両方を支払った場合には、合計で5万円までを所得から控除できます。
なお、自動車保険やバイク保険などは、地震保険料控除の対象外です。
地震保険料控除の対象になる損害保険
対象に なる 保険 |
地震 保険料 |
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旧長期 損害 保険料 |
- 積立型傷害保険
- 年金払積立傷害保険
- 積立型火災保険 など
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対象に ならない保険 |
- 地震保険がセット
されていない 火災保険
- 自動車保険
- バイク保険
- 自転車保険
- ペット保険 など
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年末調整には控除証明書が必要
地震保険料控除を適用するには、年末調整や確定申告による申告が必要です。
会社員などの場合は、基本的に年末調整で申告できます。
勤務先の年末調整で「給与所得者の保険料控除申告書」を提出する際に、地震保険料控除の欄に、支払った保険料の金額や契約先の保険会社名などを記入します。
また、契約先の保険会社からは「地震保険料控除証明書」が送られてきますので、年末調整の書類や確定申告書に添付して申告します。
地震保険に加入したら所得控除の手続きを
地震保険料控除を活用すると、課税対象となる所得額を軽減することができるため、税の負担が抑えられます。
控除を適用するには、基本的に申告が必要です。
地震保険に契約した年には、忘れずに申告するようにしましょう。
※この記事は2024年12月時点の税制、法令に基づいて執筆しています。記載された情報は随時見直しておりますが、最新ではないことがあります。
※一般の方に理解しやすいよう、税制等に関する表記を一部簡略化している箇所があります。正式名称や個別のケースに関わる厳密な数値については、専門機関等でご確認ください。
出典:国税庁「No.1145 地震保険料控除」
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執筆者プロフィール
加藤 梨里(かとう りり)
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザー
マネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。
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