万が一、亡くなったときに保険金がおりる生命保険のなかには、「災害割増特約」というオプションがついているものがあります。不慮の事故が原因の場合には保険金が上乗せされるものです。
そこで、生命保険の災害割増特約について知っておきましょう。
記事の目次
生命保険の災害割増特約とは?
生命保険の特約のひとつに、「災害割増特約」というものがあります。これは、亡くなった原因が災害だった場合に「災害死亡保険金」がおりるものです。
通常の死亡保険金とは別におりるため、受け取る保険金額が上乗せされることになります。
たとえば、通常の死亡保険金額が1,000万円、災害割増特約の保険金額が1,000万円の保険に契約していた場合、災害によって死亡したときには合わせて2,000万円の保険金がおります。
すべての生命保険についているわけではありませんが、死亡保険などにオプションとして付加されていることが多いものです。
災害割増特約は、災害によって死亡したときに保険金がおりる保障です。多くは、死亡のほか所定の高度障害状態になったときにも同額の保険金がおります。
災害割増特約で保険がおりるのはどんな時?
「災害」という名前がついていますが、その範囲は一般的な災害だけにとどまりません。多くの保険会社では「不慮の事故」といって、交通事故や飛行機事故なども災害に含みます。
これらが原因で、事故が起きた日から180日以内など所定の期間内に亡くなったり、高度障害状態になったりしたときに保険がおります。
給付対象になる不慮の事故
災害割増特約の対象になる「不慮の事故」の範囲は、各保険会社が定めています。一般的には次のものが含まれます。
災害割増特約の対象になる不慮の事故(おもな例)
なお、地震や噴火、津波については、一般的には災害にあたりますが、保険の災害割増特約では規模が大きいときには保障の対象外になることがあります。
給付対象になる感染症
災害割増特約では、不慮の事故のほか所定の感染症が原因で死亡、高度障害状態になったときにも保険の対象になります。
具体的な感染症の範囲は各保険会社が定めていますが、おもに次の感染症は対象としているところが多いようです。
災害割増特約の対象になる感染症(おもな例)
社会状況に合わせて対象の変更も
上記で挙げた災害割増特約の対象は、随時変わることがあります。
たとえば地震、津波、噴火については、被災した人があまりにも多いと保険会社が保険金を支払うことができず、保険金額が削減される、保険がおりないことがあるとされています。
しかし、保険会社は平時から、大きな災害で多額の保険金支払いをする事態を想定して保険の財源を管理しています。このため、最近では阪神淡路大震災や東日本震災のときには、災害割増特約の対象になる人には契約通りの保険金を支払った保険会社が多いです。
また、感染症については、新しい感染症が流行することがあります。2020年に発生・拡大した新型コロナウイルス感染症は、もともとは災害割増特約の対象に含まれていませんでしたが、流行の状況に合わせて一時的に対象とする保険会社がありました。
災害割増特約がついている保険は?
自分が契約している保険に災害割増特約がついているかどうかは、加入している保険証券や、保険会社から送られてくる契約内容のお知らせ書類で確認できます。
「災害割増特約」という特約名が記載されていることもありますし、「災害死亡給付金」「災害高度障害給付金」など、受け取れる給付金の名称が書かれていることもあります。
一般的には次の保険で、オプションとしてセットされているか、契約時に自分で付加することができます。
万が一に備える「死亡保険」
定期保険、終身保険など、もし亡くなったときに保険金がおりる保険には、災害割増特約を付加できることがあります。
養老保険のように、死亡時または満期時に保険金がおりるものでも、災害割増特約を付けられることがあります。
ケガに備える「傷害保険」
ケガをしたときに保険がおりる傷害保険にも、災害割増特約がつけられるものがあります。
傷害保険は自分で契約する保険だけでなく、会社や学校を通して契約する(団体保険)ことがありますが、その場合でもセットになっていたり、自分で選んでオプションをつけられることがあります。
教育資金や子どもの病気・ケガに備える「こども保険」
教育資金を貯めるために加入する学資保険の一部にも、災害割増特約をセットできることがあります。
貯蓄だけでなく、子どもの病気やケガの際に給付を受けられる保障をセットしている場合に対象になることが多いようです。
老後に備える「個人年金保険」
老後資金を貯蓄する個人年金保険にも、災害割増特約をセットできることがあります。
いずれの場合も、オプションを付加するためには追加で保険料がかかります。通常の死亡保険金に対するものに比べると低い傾向があり、保険金額1,000万円あたり月に数百円程度のことが多いようです。
保険金の請求時には、契約内容の再確認を
災害や感染症、思わぬアクシデントはいつ見舞われるかわかりません。もしもこれらによって亡くなったり、高度障害状態になってしまったりしたときには、受け取る保険金額が上乗せされるかもしれません。
保険金を受け取る際には原則として保険会社に連絡をして、必要書類を取り寄せ、死亡原因を記入したり医師の診断書を添付したりします。そのときに、契約内容を確認してみましょう。
基本的には災害割増の保険金は自分から申し出ることで受取りの手続きができますが、亡くなったときに関わる書類を提出すると、保険会社側がその内容に沿って受け取れる保険金を案内してくれることもあります。
通常の保険金だけ受取り、後で災害割増特約に加入していたことがわかった場合にも、時効の範囲内なら後から請求できます。契約している保険の内容を確認しておくと、いざというときにもれなく手続きできそうですね。
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執筆者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。