
「急にお金が必要になった。どうしよう…?」
そんな場合、加入している生命保険からお金を借りる方法があります。
「契約者貸付制度」というもので、契約している保険を担保に、保険会社からお金を貸してもらう方法です。
どのようにお金を借りられるのか、またどのように返すのかを知っておきましょう。
記事の目次
生命保険の「契約者貸付制度」でお金を借りられる
生命保険の「契約者貸付制度」とは、契約している生命保険の解約返戻金を担保に、生命保険会社からお金を借りる制度です。
借りられる金額は、一般的に解約返戻金の範囲内
借りられる金額は通常、契約している保険の「解約返戻金」の範囲内です。生命保険会社や生命保険の種類によって異なりますが、80%~90%程度になるのが一般的なようです。
「解約返戻金」とは、保険を解約したときに戻ってくるお金のことです。契約してから払い込んだ保険料の総額に対して、一部、または全額にあたり、保険の種類や契約年数などによって決まります。具体的な金額は、保険会社に問い合わせるとわかります。契約者向けのウェブサービスがある場合には、リアルタイムで貸付可能な金額を確認できるところもあります。
なお契約者貸付制度でお金を借りている間も、保険は有効です。借りていないときと同じように、もしもの際には保険がおります。
貸付制度があるのは積立型や貯蓄型の生命保険
契約者貸付制度は、契約している保険の「解約返戻金」を担保にするしくみです。したがって解約返戻金がある保険に入っている場合のみ利用できます。
解約返戻金がある保険とは、いわゆる「掛け捨て」ではない保険です。貯蓄型や積み立て型、戻りがある保険などと呼ばれているものです。たとえば、「終身保険」「養老保険」「積立保険」のほか、「個人年金保険」「学資保険」などでも利用できることがあります。ただしこれらの保険でも、契約から間もない時期だと解約返戻金がほとんどなく、利用できないこともあります。払い込んだ保険料がまだ少ないため、解約時に備えて保険会社に積み立てられたお金が少ないためです。
契約者貸付制度でお金を借りたら金利がかかる
契約者貸付制度とはお金を借りることですから、借りたお金を返済するときには金利がかかります。
借りているお金に対してどれくらいの金利がかかるかを表すのが「貸付利率」です。貸付利率は各保険会社が設定します。契約している保険の種類や契約時期に応じて、予定利率や、住宅ローンの金利水準にも用いられる市中金利(長期プライムレート)などをもとに決まるのが一般的です。2020年5月現在は、1%台から7%台と、契約によって幅があります。
かりに貸付金利が年3.75%の場合、契約者貸付制度で100万円を借りたら、1年後には3万7,500円の利子がかかります。返済時には元本100万円と合わせて103万7,500円を返すことになります。
実際に適用される貸付金利は、契約先の保険会社で確認できます。ウェブサイトで最新の貸付金利を公開しているところが多いです。おおまかには、予定利率が高い保険では貸付利率が高く、予定利率が低い保険では貸付利率が低い傾向があります。
なお「予定利率」とは、保険会社が生命保険の契約者に対して約束する保険金の運用利回りのことを指します。毎月の保険料は、この運用利回りを前提に設定されています。予定利率が高いと、それだけ将来の保険金支払いに運用益をあてられる分、月々に支払う保険料は少なく済むと見込まれ、保険料は割安になる傾向があります。
「契約者貸付制度」でお金を借りる方法・返す方法
実際に契約者貸付制度を利用するには、どのような手続きが必要なのでしょうか?借りるとき、返すときの方法も知っておきましょう。
お金を借りる方法
契約者貸付制度を利用するには、まずは契約している保険が対象になるかどうかを確認しましょう。上記にある積立型の保険で、解約返戻金があれば、利用できる可能性があります。保険会社のウェブサイトに対象になる保険の商品名が書いてあることもあります。
お金を借りる際には、保険の証券番号を手元に用意して、契約者本人が保険会社に連絡します。営業担当者のほか、コールセンターやウェブサービス上で貸付の受付をしているところが多いです。必要書類を取り寄せて記入、提出すると、通常1週間程度で、希望する預金口座にお金が振込まれます。災害時などには、緊急対応としてよりスピーディに入金してくれることもあります。
契約者貸付制度を利用する時の流れ

また、保険会社から契約者向けに発行されるカードがあれば、ATMでお金を引き出せることがあります。保険会社の店舗に置いてあるATMはもちろん、提携している銀行やコンビニのATMで、タッチパネル上の操作だけでお金を借りられます。保険会社によっては、スマートフォンのアプリで貸付の手続きをできるところもあります。
借りたお金の返済方法
契約者貸付制度で借りたお金は、所定の期日までに利子とともに返さなければなりません。期日を過ぎると保険は失効・解除し、いざというときに保険がおりなくなってしまいます。
貸付金を返すときも、契約先の保険会社の窓口のほか、銀行やATMでの振り込み、コンビニでの払い込み、インターネットバンキングなどから手続きできます。
借り入れた金額と利子をどんな頻度で返済するかは、保険会社所定の方法であれば自由に選べます。借りた元本と利息を一度に全額返済することもできますし、何度かに分けて返済することもできます。あるいは、毎月一定額ずつ口座振替で返済することもできます。返済方法の種類は保険会社によって異なることがありますから、利用する際には契約先に確認してみましょう。
契約者貸付制度を利用する際の注意点
保険に入っていればお金を借りることができるのは、もし家計が厳しくなったときに心強いものですが、注意点もあります。
まず、借りたお金は期日までに返済しなければなりません。期日を過ぎて返済しないと、保険が失効・解除してしまいます。ただし、災害時や新型コロナウイルス感染症など特定の感染症の影響で返済の手続きが難しいときには、その旨を申し出ることで猶予してもらえることがあります。
また、満期金やお祝い金など、お金を受け取る予定のある保険に入っていて、契約者貸付を利用した場合、貸付金を返していないと、満期金などから差し引かれてしまいます。亡くなった際におりる死亡保険金も同様です。
差し引かれるのは借りた元本だけでなく利息も含みます。加えて、利息は翌年の利息計算の際に借り入れ元本に繰り入れられますから、返済が遅くなるほど利息は膨らみます。できる限り返済しておきたいところです。
もしも事情があって返すのが難しいときには、早めに保険会社に相談するとよいですね。
生命保険は、日常生活のお金にも役立てられる
生命保険というと亡くなったときや病気になったときなどだけに使うものというイメージがあるかもしれませんが、日常生活のお金を補うために役立てることもできます。災害などで経済的に厳しいときにはさまざまな特例措置を取ってもらえることもあります。まずは契約している保険の内容を確認して、上手に活用したいですね。
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執筆者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。