新型コロナウイルス感染症にかかったときには、治療や療養が必要になります。そのようなとき、加入している生命保険の対象になるのでしょうか?また、他の病気と保障される内容が違うのでしょうか?
保険の種類別に、新型コロナにかかったときの取扱いを解説します。
記事の目次
新型コロナは生命保険の対象になるのが基本
生命保険は、亡くなったときや病気で入院をしたときに保障の対象になります。この基本は新型コロナの場合も同じで、万が一新型コロナに感染して死亡してしまったときには死亡保険金の対象になりますし、新型コロナで入院をしたら、ほかの病気と同じように給付を受け取れます。
また、新型コロナの場合には保険金や給付金の取扱いについて、ほかの病気とは異なる対応を受けられることもあります。保険の種類別に確認してみましょう。
死亡保険は災害割増の対象にもなる
亡くなった時に保険金がおりる死亡保険に加入している場合、新型コロナで亡くなったら死亡保険金が支払われます。
また、新型コロナは感染症のため、生命保険での災害にあたるのが一般的です。この場合、契約している保険に「災害割増特約」という特約がついていると、通常の死亡保険金とは別に災害死亡保険金も受け取れます。
生命保険の災害割増特約は、交通事故や飛行機事故、火災や自然災害など不慮の事故に加えて、所定の感染症が原因で死亡・高度障害状態になった場合にも保障されます。現在、多くの保険会社では新型コロナウイルス感染症も災害割増特約の給付対象としています。
医療保険は入院給付金の対象になる
病気やけがで入院や手術をしたときに給付金がおりる医療保険や、生命保険の医療特約では、新型コロナの場合も原則通りに保険がおりる保険会社が多いです。
新型コロナの治療は、重症の場合などには入院し、国が定めた基準を満たすまで退院できません。2022年9月現在、退院基準は発症日から10日間経過、かつ症状が軽快してから72時間などとされており、少なくとも10日以上は入院することになります。
ですから、新型コロナで入院をしたら、契約している医療保険から入院給付金を受け取れるケースが多いと考えられます。たとえば「入院1日につき1万円」のような契約内容であれば入院日数に応じた金額を受け取れますし、契約内容によっては入院をしたら日数にかかわらず所定の一時金を受け取れるものもあります。
入院給付金は治療のために入院したことを給付の要件としているため、多くの保険会社ではPCR検査の結果は問いません。検査結果が陰性か陽性かに関わらず、入院治療を受ければ保険が給付されます。
なお、新型コロナウイルスでは手術で治療をするケースは多くないようですから、生命保険や医療保険から手術給付金を受け取ることは考えにくいのではないでしょうか。
65歳以上や妊娠中の人などは自宅療養でも給付されることがある
生命保険や医療保険の入院保障は、病院に入院したときに対象になるのが原則です。ただし新型コロナについては例外的に、一部の対象者についてはホテル療養や自宅療養でも入院給付金の対象になることがあります。
2022年9月26日以降、次に該当する人はホテルなどの宿泊施設、自宅で療養をした場合も、医師や保健所の指示で療養した期間は入院と同様の取扱いになるところが多いようです。
医師・保健所の証明書や厚生労働省の健康管理システム「My HER-SYS」の画面などがあれば、その証明書に記載された期間が入院給付金の対象になります。
※2022年9月25日までに診断された人は上記以外も給付の対象になることがあります。
オンライン診療で通院給付金を受け取れることも
さらに、新型コロナのまん延防止のために、一部の病院では電話やオンラインを通した診察を受けられるようになっています。オンライン診療や電話診療をうけ、かつ他の給付要件を満たすときには、一般的な通院をしたとみなして、「通院給付金」を受け取れる保険会社もあるようです。
就業不能保険は入院や在宅療養で仕事を休むと給付される
病気やけがで働けなくなったときに給付金を受け取れる保険に、「就業不能保険」があります。治療のために入院をしたり、医師の指示によって在宅で療養をしたときに保険がおります。
新型コロナに感染した場合も、入院やホテル療養・自宅療養のために仕事ができない期間が続くと保障される可能性があります。ただし、多くの就業不能保険には「支払対象外期間」といって、仕事ができない期間が60日間や180日間など所定の期間を超えることが要件とされています。
その場合、新型コロナで働けなくなっても2ヶ月から3ヶ月間は保険の対象外になりますが、入院や療養がそれ以上の長期にわたると、就業不能保険を受け取れる可能性があると考えられます。
なお、勤務先の指示で休業しているときや自宅待機を命ぜられている場合は、就業不能保険の対象にはならないのが基本です。新型コロナの治療や保健所に指示された療養期間が終了した後に、勤務先の判断で自宅待機をするケースがあるようですが、その期間については就業不能保険の給付金を受け取れないケースが多いと考えられます。
傷害保険の対象になることもある
ケガをしたときに補償をうけられる「傷害保険」でも、新型コロナに対応できることがあります。自動車保険や火災保険を取り扱っている損害保険会社のものを含め、おもにケガを対象にした保険では基本的には病気に対応できませんが、オプションで感染症への補償をつけている場合には補償されます。「傷害総合保険」「普通傷害保険」などに付加できるオプションで、「特定感染症危険支払特約」「特定感染症補償特約」などの名称で販売されています。子ども向けの傷害保険や、海外旅行傷害保険に付加されていることもあります。
これらの傷害保険に加入中に新型コロナに感染し、所定の期間中に入院・通院をしたときや亡くなったときに、保険金を受け取れる場合があります。また、感染が原因で後遺障害が残ったときには、障害の状態に応じた保険金を受け取れるものもあります。
ただし、旅行保険では、感染や発病の時期を旅行行程中や終了後所定の期間中に限定しているものがあります。
新型コロナでの入院時には、ご自身の保険の内容確認を
もしも新型コロナに感染したとき、現在のところは治療にかかる医療費は公費負担のため、個人の自己負担はほとんどかからないしくみになっています。しかし突然の入院や療養生活を強いられると、その間の生活では予想外の出費もあるかもしれません。そんなときに、加入している保険から給付を受けられると、経済的にも心理的にも心強いでしょう。
しかしながら新型コロナに対する保険の給付は他の病気と異なったり、法律の改定などに伴って随時見直されます。最新の情報を確認することが大切です。
あらかじめ、ご自身がどこの保険会社でどんな保険に入っているか、また、給付を受けるための窓口の連絡先などを確認しておくと安心ではないでしょうか。
※本記事は2022年9月26日現在の情報を元に執筆しています。内容は随時更新しておりますが、必ずしも最新ではないことがあります。また、個別の状況により費用の負担や給付の受取りについて取り扱いが異なることがあります。個別具体的なケースにつきましては、契約先の窓口などにご確認ください。
参考:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症 陽性だった場合の療養解除について」
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執筆者プロフィール
マネーステップオフィス株式会社代表取締役
CFP(R)認定者、金融知力インストラクター、健康経営エキスパートアドバイザーマネーに関する相談、セミナー講師や雑誌取材、執筆を中心に活動。保険、ライフプラン、節約、資産運用などを専門としている。2014年度、日本FP協会でくらしとお金の相談窓口であるFP広報センターにて相談員を務める。